キャリアガイダンス vol.407
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考えることは、仕事や生活の営み全般に通じます。生徒には実験を通して、そんな生きるセンスをみがいてほしいのです」 田中先生は年間の授業で、生徒が自力で問題を解く演習の時間も必ず確保している。そこでの問題解説も、化学というよりは実社会に絡めた話が多くなる。 「この問題は化学式で考えるとややこしいけれど、置き換えるなら『連結器が両端にある列車と、片方だけの列車を、条件どおりにつなげ』という問題と一緒。要はただの一次方程式の問題。世の中の現象って本質的には似ているわけです。表面に惑わされず、本質を捉えれば、解く糸口が見えてきます。だから君達は今後も難題に挑戦してください。飢餓をなくしたい、とかね。それは達成できなくても、その道筋の中で生まれたものが、人生を豊かにし、世の中をよりよくします」1967年生まれ。戸山高校で指導教諭、SSH部主任、理科主任を務める。また、東京都理化教育研究会や次世代化学教育研究会の事務局長を担い、大学の教授と組んで「大人のための科学実験教室」を主催するなど、学校外でも理科教育の研究や、科学の普及活動を積極的に行っている。化学 SSH部主任田中義靖先生クリエイティブティーチャーに学ぶ!化学の講義・実験・演習・課題研究から、生徒が学べることは「化学のことだけではない」。そのことを生徒に発信し続けている先生が、化学の授業全体を通して実践しているキャリア教育をご紹介します。取材・文/松井大助撮影/村田わかな化学の実験や問題演習は仕事や生活の営みに通じる 戸山高校の化学実験室に、ゴーグルと白衣を身につけた2年生がぞろそろと入ってくる。3月上旬の今日は「化学基礎」最後の実験の授業だ。この1年間で生徒達は、約20回の実験を経験してきた。 授業を担当する田中先生は、生徒いわく、「普段はサバサバ、でも叱る時はバシッと叱る先生」。1回目の実験の時、ゴーグルをつけないで実験室に入った生徒達は「めっちゃ怒られた」。安全面を軽視したからだ。実験室の片付けが適当だと叱られた生徒もいる。次に使う人への配慮が足りないからだ。実験の準備・実践・記録・片付けは、出席番号順に並んだ4人の班で行うのだが、ぼんやり仲間を眺めている生徒には「何してんの?」と田中先生の鋭い声。複数の薬品を戸棚から取る時、生徒達が一ヶ所で混み合い、ほかが空いているのに気づいていないと「センスない!」と田中先生が指摘する。 安全の重視、周囲への配慮、役割分担や段取りをよく考えること。これらは研究職はむろん、ものづくりやデスクワークでも大切なことだ。だから田中先生は、「化学の実験は、化学を学ぶもの」としか当初は思っていない生徒達に「本質が見えていない」とも投げかけてきた。 「システムキッチンが人間の動きやすさを研究して開発されたように、『安全で無駄がない、周囲にも配慮した動作』を戸山高校(東京・都立)問題演習の授業では、センター試験や難関大学の入試問題も活用。ただ解くのではなく、よりよい解き方を探ることにも力を入れている。562015 MAY Vol.407

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