キャリアガイダンス vol.407
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■ 戸山高校(東京・都立)ない、学習内容にかかわる日常生活のトピックスを中心にしています」 生徒が学習内容を完璧に覚えたか、深く理解できたか、という点は、神経質に追わない。それよりも、広く浅くでよいので、教科書+αの広範囲の化学の知識(59ページの表の「知識」欄参照)を、生徒が「全部さわる」ことを重視する。 「仕事でも私生活でも、生きるうえでは学んだことを総合的に活用します。そのためにはまず、自分の中で総合化させられる『素材』が多いほうがいいと思うのです。幅広いことを見知っていると、『この理屈は実はこんな分野にも適応できるんだ』という気づきを得られます。深くても狭い視野になるより、浅くても広い視野をまず身につけてほしいです」授業で学んだことを総合的に活用する視点も 「化学基礎」で幅広い素材を学ぶ生徒達は、さまざまな機会を通して、学んだことを総合的に活用する視点も育む。 例年1学期には、田中先生が地理・家庭科の先生と組み、1年生全員へのリレー授業を実施。大豆や綿など1テーマについて各教科の視点から講義や実験が行われ、生徒が多角的なものの見方にふれる。 学年の講演会では、食品や機器の開発をしている社会人を招聘。商品開発が文系でも理系でもなく多様なジャンルの知を集結して進められることを学ぶ。 また、各学年に2クラスずつあるスーパーサイエンススクール(SSH)では、生徒が「自分で課題を見つけ、課題の解決を目指し、そのために大学や国内外の研究者とつながり、最終的に出した結論を、日本人にも外国人にもわかってもらえるように発表する」ことに挑戦する。幅広い知識の活用から、コネクションづくり、プレゼン能力まで、総合力が問われる活動だ。その中でSSHの生徒は、学校外への英語のプレゼンにも挑むが、田中先生は「私は英語が得意じゃないので、特にチェックはしない」という。 「教員は全部を自分で教えようとしなくていいと思うのです。それよりも、外部の指導できる人につないであげる。そして生徒が不完全な発表をして、外部の人に間違いを指摘され、恥をかきながら学べばいい。指導担当の私も恥ずかしいですが、そこで大人が余計な配慮をしたら、学びの機会が奪われます。生徒には『恥をかけ、ベソをかけ、汗をかけ』と伝えています。それができれば、雪だるまが転がるうちにどんどん大きくなるように、自分で学びながら成長していけます」教科書を学ぶ時間は圧縮、ただし広く浅く全部さわる 田中先生が実験や問題演習を手厚くできるのは、教科書の内容を学ぶ時間のほうを「圧縮」しているからだ。 4人いる化学の教員で話し合い、学期末までに終わらせる学習内容を決めて、タイトな授業日数で割りふる。授業のやり方は各自任せだが、学習の質を保てるよう、全員共有の穴埋めプリントを使う。 「プリントは藤田先生がつくってくださっていて、生徒はその穴埋めをすれば教科書の内容をだいたい押さえられます。だから私は、教科書を見てプリントをやればわかることは、わざわざ黒板に書きません。授業で話すことも、プリントには藤田先生作成の穴埋めプリント。化学は定期試験も統一しており、このプリントは試験までに学習する内容をそろえる役割も果たす。戸山高校の平成26年度SSH実施計画。生徒が国内外の人と連携・交流しながら、課題の発見や解決することを目指してきた。普通科/1888年創立生徒数(2014年度)1004人(男子527人・女子477人)進路状況(2014年度実績)大学72.2%・短大0.3%・浪人27.5%東京都新宿区戸山3-19-1 03-3202-4301 http://www.toyama-h.metro.tokyo.jp/「国際社会に貢献するトップリーダーの育成」をミッションに掲げる。社会で総合力を発揮できるよう、理系の生徒も文系の知識を身につけ、文系の生徒も理数の感覚を養えるような教育課程を編成。生徒は3年次に文理科目を選択するが、その文理選択ではクラス分けを行わず、クラス内に多様な進路志向の生徒がいる環境をつくっている。一方で、SSH校の指定を受け、各学年に2クラスのSSHクラスを置いている。■ INTERVIEW 化学の教員みんなで使う授業のプリントは、3年前にこの高校に赴任した時に、田中先生から作成を頼まれました。学校方針として、定期試験を統一し、そのために各教員の教え方もある程度そろえようとしていたからです。私自身は、以前にも板書中心ではなく、プリント中心の授業をしたことはあったんですね。ただ、今回はそれをほかの先生にも使っていただくので、より責任の重さを感じました。ですので、数冊の教科書や参考書を読み込み、プリント内容はあまり突飛な展開にせず、基本は教科書に沿うようにしました。最初の年は、各単元の授業に間に合うようにプリント作成していく自転車操業(笑)。2年目からはそれに修正を加えています。 普段の授業は、私もプリントと指定の教科書と図表だけで行っています。このやり方で深く教え込むのは難しいですが、そこは学習内容を終えたあとの問題演習で、生徒が問題を解きながら、知識や理解を深めていけるように促しています。生徒が基礎を学習できる穴埋めプリントを作成し化学の教員で共用化学 主任教諭藤田陽子先生572015 MAY Vol.407

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