キャリアガイダンス vol.407
57/64

授業で生徒につけたい力知識能力意欲・態度つけたい力浅くとも広範囲の化学の知識理解・ 「化学基礎」の授業だが、本来の学習内容に加えて、「化学」の科目の学習内容の約半分も、知識を関連づけながら先取りで学ぶ 例)「化学基礎」で酸化・還元反応や酸・塩基反応といった化学反応を学んでから、「化学」で扱う有機化合物や無機化合物も学習し、それらを素材にさらに化学反応について学ぶ安全で無駄がなく配慮ある動作・ 化学の実験を通して、安全に注意することや、段取りをよく考えること、周囲に配慮して動くことなどを、生徒が失敗もしながら学ぶ本質を見る力・ 実験では「その動作をする本質は何か(安全や人への配慮)」を生徒と確認。問題演習では「問われている本質は何か」を生徒に問う自ら動こうとする意欲・ SSHクラスを中心に、生徒が多様な人と向き合える「場」を用意。そうした場に飛び込めば、新たな発見や、人のつながりを得られることを、生徒が実感できるようにする手をあげる・議論しようとする姿勢・ 授業や講演で、話をふられたのに手をあげないのは相手に申し訳ない、という感覚を共有するその力が将来にどう生きる?大学入試に備えやすくなる・ 化学で受験する生徒は、先取りで学習内容を終わらせられるので、問題演習にも時間を割ける多角的な視点から創造や分析ができる・ 仕事や私生活で創造や課題解決をしたい時、文系でも化学のさまざまな理屈の適応を視野に入れられる。また、解熱剤の仕組みなど、身のまわりにある科学的な仕組みを捉えやすくなる仕事の進行や連携がスムーズになる・ 道具の扱いや作業の手順、役割分担などを自分でよく考えて、円滑に仕事を進めていける難題を解く糸口を発見できる・ エネルギーや食糧危機、セキュリティの問題など複雑な課題に対しても、自分にとって問題の本質は何か、共通項はないかなど、課題を整理しながら解決策の糸口をつかんでいけるやりたいことを発見し近づいていける・ 国内外の人との交流から自分なりの興味や課題を発見し、その分野でやりたいことを実現させるためのコネクションも自分で築いていける国際社会で存在感を発揮していける・ 異文化でわからない相手同士だからこそ、意見や態度を表明するのが前提となる国際社会で、日本人らしく多様な人と渡り合っていけるねると、「まわりを見て各自が判断する」とのこと。使い終わった薬品や器具はすぐ片付けるので、机の上は混沌としない。仕事や生活全般に通じるセンスが、たしかにみがかれている。 問題演習の授業でも、回を重ねるほど生徒のセンスは高まっていく。あるクラスでは、難解な問題を出したはずが、「2問目から解けば、それをヒントに1問目も解ける」ことに、生徒みんなが気づき、すんなり解かれたことがあった。田中先生は常々、「解き方は何種類もある、簡単でミスのない道を考えて共有しよう」と言ってきただけに、うれしかったという。 ややこしい問題に対して、生徒が見事な解き方を提案してくれたこともある。田中先生は驚き、同時に悔しくなり、次の授業までにより簡単な解き方を編み出し、「こうやるともっといいね」と返した。 「そんな生徒とのやり取りは楽しいです。教師とも対等に議論するセンスと意欲をもつ生徒に 「化学基礎」で1年間で約20回の実験をしてきた生徒達。最後の実験は、50分の授業で、薬品を混ぜたり熱したりした時の反応を立て続けに4パターン確認するという、盛りだくさんの内容だった。 実験の順序が記されたプリントを見ながら、生徒達は手馴れたようすで、試験管やビーカー、ガスバーナーを扱っていく。田中先生が補足説明する時も、全員が手を止めることはなく、班のうちの一人が耳を傾け、もう一人は必要な薬品を取りに行き、残りは使用した試験管を洗うなど、手分けしてテキパキと作業を進める。どうやって役割分担しているのか生徒に尋問題について議論するような時は、私は、生徒と教員は対等だと思っているので」 SSHのクラスでは、生徒達の世界が広がりつつある。ある女子生徒のグループは、校内の発表会で、パーマに関する研究や、ゴムをつくる研究を披露。するとある教育会社の人が目にとめ、同社主催のイベントでも発表しないかと誘ってくれた。そこで発表すると、大学教授が興味をもってくれたそうで、後日、生徒からメールを送ってつながった。自ら動けば、課題研究を前進させるチャンスが増えることを、生徒が実感しているところだ。 「今目指しているのは、講演などで『何かありますか?』と問われたら、手をあげないと気がすまないぐらいの感覚を、生徒の中に育むことです。それこそ何も浮かばなくても条件反射で手をあげるぐらい(笑)。以前に、総合商社の社長が大学で講演をしたら、北京大学では質問攻めにあい、東京大学では場が静まり返ったそうです。これではダメですよね。とはいえ、ただ積極的になれといっても効果は薄いので、私は逆に多くの日本人がもつ奥ゆかしさに訴えかけています。『話を聞いて何も返さないのは相手に申し訳ないことだ』と。SSHの生徒は手をあげるようになりましたね。日本の子ども達には、さまざまな人ともっとああだこうだと議論する経験が必要だと思っています。そのなかで揉まれて、いずれは国際社会で、多様な相手と議論しながら難題に挑んでいけるような人になってほしいです」生徒はこう変わるこのクラスはSSHクラスではなく、文系に進む生徒もいる。それでも、変化を目で確認する、容量を計って取り分ける、安全に臭いを嗅ぐ、火を扱う、器具を割れないように洗うなど、実験を通して洗練していくふるまいには、仕事全般や私生活に応用できるものが多い。SSHの生徒には、校外の講演やイベントに参加できる機会や、校内発表の機会が数多く与えられてきた。当初は反応が薄く、生徒を半ば強制参加させたこともあったそうだが、2月に校外での発表に参加したい生徒を募ると、定員の倍以上の希望者が集まった。592015 MAY Vol.407

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です