キャリアガイダンスVol.417 別冊
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2Vol.417 別冊付録進路指導に役立つ最新情報取材・文/伊藤 敬太郎現代社会が抱える課題は複雑化が進む一方。私たちはその解決策としてテクノロジーに期待しがちだが、高度化したテクノロジーはそれ自体が新たな課題を生み出すというジレンマもはらんでいる。そこで改めて注目されるのが哲学をはじめとする人文科学系の学問であり、ものごとの本質をとらえる哲学的思考だ。これからの社会を支える若者にとって、哲学や哲学的思考を学ぶことがどのような意義をもつのか? 哲学者の小川仁志氏に話を聞いた。哲学的思考を現代的課題へのアプローチにどう活かすか?複雑化が進む今こそ本質を考えることが求められている『そもそも何が問題なのか』を考えることが必要な時代になっている 日本が経済的な成長を続けていた時代は、社会課題は比較的シンプルで、ある程度まではテクノロジーの進化によって解決することが可能だった。 しかし、成熟社会を迎えた現代の課題はより複雑になっている。もちろん、テクノロジーもその解決策としては重要な要素だが、例えば、スマートフォンやSNSの普及によるコミュニケーションの変化、人工知能(AI)の急速な進化によって予見される未知の事態など、テクノロジーの進化そのものが、新たな課題を生み出しているという現実もある。 山口大学国際総合科学部准教授で『世界のエリートが学んでいる教養としての哲学』などの著書がある哲学者の小川仁志氏は、このような時代だからこそ、哲学が、そして哲学的思考が、あらゆる人にとって必要になっていると言う。 「世の中が複雑になりすぎ、今はさまざまな課題に関して、枝葉末節にとらわれた技術的な議論ばかりが繰り返されている状況です。そのため、『そもそも何が問題なのか』ということを多くの人が見失ってしまっています。求められているのは本質に立ち返って考えること。それが哲学なのです」 ただし、リアルな社会課題の解決に哲学がどのように関係するのか、ピンと来ない読者も多いかもしれない。特に日本では、哲学という学問が誤解されている面があるからだ。 高校生には、哲学者と主要な思想・著書を覚えるだけの暗記科目という印象をもたれやすい。また、一般の人も含めて、「哲学=人生論、人生訓」ととらえられていることも多い。しかし、小川氏は、それらはまったく哲学の本質を見誤った認識だと指摘する。 では、ここで「哲学とはそもそもどういう学問なのか」を整理しておきたい。小川氏は哲学を「根源的・批判的にものごとの本質を探究し、それを論理的に言葉で説明すること」だと定義する。重要なのは覚えることでも従うことでもなく、“自分の頭で考える”ことなのだ。 図1に示したように、小川氏の定義によれば、ここには、高校教育においてキーワードになっている「探究」も、学問はもちろんビジネスの領域でも注目されている「クリティカルシンキング(批判的な思考)」も含まれる。「論理的に説明する力」も、今まさに高校生が養うべき力とされている。 このように、哲学は、「確かな学力」「生きる力」につながる重要な要素を包摂した学問なのである。 さらに別の切り口から、小川氏は哲学の構造と学び方を次のように解説する。 「哲学は、土台となる1階と、応用のための2階とに分けるとよりとらえやすくなります。1階は、『ものごとの本質に向き合う態度』のことです。まずは、ものを考えるとはどういうことかを身をもって学ぶことが非常に大切。ここを養わずに、ただ考えるだけでは、図1 「哲学」とはどういう学問なのか?探究論理的に説明するクリティカルシンキング哲学ものごとの本質

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