キャリアガイダンスVol.418
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「意欲買います。京都大学」。これは同大学が2016年度に始めた「特色入試」の高校生向けポスターのキャッチフレーズだ。特色入試とは、各学部学科が実施する学力型AO・推薦方式の入試の総称。冒頭のフレーズは、学力だけではなく意欲や志も重視した選考であることを示している。同大学の北野正雄副学長は言う。 「入試に意欲という言葉は結びつきづらいかもしれません。成績や点数を問われることはあっても、意欲を問われることはあまりない。そこが高校生に響いたようです」 なぜ、そうしたメッセージを発する必要があったのか。 「学部学科の内容や自分の適性を考えず、偏差値だけを指標に受験先を選んだことで、入学後『こんなことをしたいわけではなかった』と悩む学生が目立つようになりました。入試のための勉強になり、高校で本来学ぶべきことを学んでいないケースもあります。こうしたミスマッチを解消することが最大の目的でした」 出願や推薦の要件が非常に厳しい学部学科もあるが、必ずしも成績優秀者を選択的に合格させたいわけではないという。従来の方式では、どうしても似たタイプの学生が集まりやすいため、入口を変えることで多様性を確保したいという思いもある。 特色入試では、学部学科ごとに求める人物像を掲げ、それに応じて選抜方法を工夫している。 「例えば理学部では、数理科学の分野に優れた才能をもつ人を求めています。能力測定考査で4時間に及ぶ高度な数学の問題を課しているのも、集中して深く考えられる能力があるかを見極めるためです」 求める人物像は学部学科でさまざまだが、共通するのは意欲や志の強さがあること。研究型の大学を標榜する京都大学としては、研究に面白さを見出せる人に来てほしいと言う。 「研究の面白さは、誰もしたこと、見たこと、考えたこともないフロンティアを目指すところ。自分あるいは仲間にしかわからない世界を切り開いていける点です。我々としては、一緒に楽しめる仲間が欲しいのです」 判断材料となる提出書類は、調査書や推薦書の他、高校での顕著な活動歴を記載した「学業活動報告書」、大学で何を学び卒業後どうしたいのかについて描く「学びの設計書」などだが詳細は学部学科によって異なる。 そのうえで、基礎学力とともに個々の学部学科にとって望ましい能力を測るため、大学入試センター試験の成績に加え、能力測定考査、論文試験、面接試験、口頭試問等も組み合わせて実施。AO・推薦入試とはいえ基本的な学力が担保されていることが前提だ。 「専門を突き詰めるためには幅広の基礎学力が必要です。そして、その支えとなるのが意欲や志です。それらを両にらみしないといけません」 その点、一般入試との相乗効果にも期待をしている。 「ペーパーテストに冷たい印象をもたれる方もいますが、本当にいい問題は、解きながら理解が深まるような構造をしており、対話すら成立しています。試研究の面白さを追求できる資質・能力を評価京都大学入学者選抜改革のステップ図1入学後、大学での学びにミスマッチを感じる学生が増加。研究型総合大学として、高い学びの意欲をもつ若者を求め、選抜型からマッチング型への転換が課題に。2012年ころより一般入試との相乗効果を狙う独自の入試方式を検討。高校での学修成果、個々の学部教育に適した能力ならびに志を総合的に評価するよう、各学部学科で具体的に検討。2016年度入試より導入。2017年入試では新たに導入する学部学科も拡大。2018年度入試からは全学部全学科で実施する予定。背景課題環境実施取材・文/堀水潤一1897年創立/学部学生数1万3511人(2016年5月1日現在)/総合人間学部、文学部、教育学部、法学部、経済学部、理学部、医学部、薬学部、工学部、農学部の10学部ほか、18大学院研究科。学校データ各学部が求める幅広い基礎学力に加え、「学業活動報告書」や「学びの設計書」等で学びの足跡や意欲・志を総合的に評価副学長・理事 工学博士北野正雄氏個別大学の入学者選抜の今102017 JUL. Vol.418

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