キャリアガイダンスVol.418
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まざまな生き方があることを知ってもらおうというものだ。同校のアドミッションポリシーの一つである「多様性を認める心を持った生徒」を育てることにつながる。これらの取り組みは進学ガイダンスや学年の単発の行事とは切り離し、3年間の流れで実践していく純粋なキャリア教育プログラム。「社会に出る準備として絶対に欠かせないもの」と守谷先生は言う。 そして、ロードマップと同様、横断的な効果を考えて作ったのが教科横断的指導資料(図3)である。これに基づき各教科が年間指導計画を作成。これがあれば、教科間コラボもやりやすくなる。例えば「色彩の授業をした上でファッションショーを開催しますが、その前に生物の先生に豚の目の解剖から色彩の見え方のメカニズムについて話していただきました」(西島美加先生) 服飾デザイン科から名称変更しSPH(スーパープロフェッショナルハイスクール)指定を受けたファッションデザイン科は海外で活躍できる人材の創出を打ち出している。「教科を横断して学ぶ活用力や、ファッションイングリッシュという授業で英語でのコミュニケーション力を磨いています。これも新しい学力観の一つです」(松尾勝之先生) そしてアドミッションポリシーのもう一点「何事にも挑戦する意欲を持った生徒」はどのように育てていくか。答えの一つが全教科で導入した観点別評価だ。これまでのテストに100点を追加して200点満点とし、各教科で定めた基準に従って評価する(図4)。校長田中眞太郎先生教務部長松尾勝之先生3学年主任守谷敬人先生ファッションデザイン科主任西島美加先生ファッションデザイン科のファッションイングリッシュの授業。興味のある分野の英語なだけに生徒の学習意欲が高く、発言も多い。海外への修学旅行の準備も兼ねている。化学の実験では課題だけ示し具体的にどう実験するかは生徒に任せる。安全確保のため理科の教員が3人入る。見渡してみる限り、参加していない生徒はいない。 「偏差値などとは違う観点で香椎の生徒はもっと評価できる…そもそも今回の改革の原点はそこにあります。学校の評価と社会の評価にズレを感じていたのです。ペーパーテストの点はあまりよくなくても、授業に積極的に参加し協働できる。そういう生徒をきちんと評価する。学校の評価を社会の評価に近づけるということです」(松尾先生)。例えば数学の評価基準の中には、自主的に発表できる、積極的に協力している、見直すための工夫をしている、解答の流れを表現できるなどがある。主体的に授業に参加し、思考力、判断力、表現力を身につけ、深く学べているかを見る。 基準を揃えるには同じ教科の教員たちのすり合わせに時間がかかるが、それがあるために授業見学なども自然発生的に行われるようになった。同時に生徒が授業を評価する仕組みも取り入れるなど、さまざまな仕掛けで授業レベルを上げている。 「どんな取り組みを始めるにしろ、必ず香椎の生徒にとっていいことか、香椎らしいかというフィルターをかけ、学校全体で熟考しています。それが結果的にこれからの社会で必要とされる力を育成する取り組みと評価され始めたのだと思います」(田中校長)加点法による観点別評価で社会の評価に近づける生徒の多様な力を伸ばす実践ポイント◉ 3年間のロードマップを作成し、各分掌、各行事など… それぞれが他の動きを把握し学校の教育活動全体を俯瞰する◉ 学校行事、修学旅行などあらゆる場面で生徒自身が計画・実行◉ 総合的な学習の時間を通して、学んだことが人の役に立つ 経験をさせる◉ 全教科・科目における観点別評価の完全実施 (減点法から加点法へ)◉ 生徒に授業アンケートを実施観点別評価を行う際の手順図41 各観点で何を評価すればよいのか、それぞれの観点ごとの目標 (評価規準(のりじゅん))を定める2 1のそれぞれの事柄についてどの程度実現できていればよいのか(評価基準(もとじゅん))を定め評価する。評価方法は絶対評価(他の生徒の成績を考慮に入れず、生徒本人の成績(到達度)そのもので評価)とする。3 評価するための資料(授業での発言・態度、ノート・ワークシートの記述、宿題、定期考査など)を定める。4 一つひとつを評価し、各観点を総括して最終的な評価(総括的評価)を行う。2つの“きじゅん”(規準と基準)を設け、評価を簡潔、明確にしている。基準はあるものの、そこに到達しなくても減点にはならず加点が低いだけとなる。例えば数学のルートの計算問題を評価する場合は【評価規準】が「ルートの計算ができるようになる」【評価基準】が●友人に聞かずに計算ができた(提出内容に工夫が見られる)→A●友人に聞いたら計算ができた(期限内にノートを提出した)→B●友人に聞いても計算ができなかった(提出したが空欄が多い)→C※本項では基本的に授業に参加(提出)すればBで、AとCを評価する例えばExcelにA、B、Cを入力する。次にAを10点、Bを8点、Cを5点と規準に従い置換する。後は必要な項目で計算すると完成。Case study 06▶▶▶生徒の個性を伸ばす学び…香椎高校変わる大学入学者選抜 何を問うか、どう育むか。272017 JUL. Vol.418

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