キャリアガイダンスVol.418
28/66

 京都府立園部高校は、丹波高地の山あいに位置する「地域の学校」だ。設置学科は普通科と、国際的な視野の育成を目指す京都国際科。普通科は3コースに分かれており、標準的な学習を行うSB(園部ベーシック)コースと、発展的な学習も行うSA(園部アドバンスト)コース、そして附属中学校からの中高一貫コースがある。 普通科(SB・SA)は定員の8割を南丹市内から募集しており、地域の幅広い層の生徒の受け皿となっている。つい最近まで生徒指導が大変な学校で私語や居眠りが多く授業が成立しないクラスもあったとの話も聞かれる。そんななか、「どの生徒もとりこぼすことなく学びに向かわせたい、との思いでさまざまな取り組みを行ってきた」と副校長・前野正博先生。この10年間の変革のうち、英語科をはじめとする教科主導の取り組みと、教科の連携による学校ぐるみの取り組みについて紹介する。 英語科の転機となったのは、2006年にスーパー・イングリッシュ・ランゲージ・ハイスクール(SELHi)の指定を受けたことだった。同校がSELHiでターゲットとしたのは、英語に対し強い苦手意識をもち、授業に見向きもしパフォーマンス評価や課題研究を導入し自ら問いをもち考える生徒を育成 ない生徒たちだ。特製プリントを作成して英文構造の学び直しを図る一方で、「逆向き設計」論を参考に到達目標の明確化に注力。どの段階で何ができることを目指すか、教員が議論を重ね、2年かけて長期的ルーブリック「英語6年間 Assessment Grid」として整備した(図1)。到達目標の明確化は、「英語でホットケーキを焼く」などの柔軟な授業実践を可能にし、生徒の小さな成功体験の積み上げにつながったという。 さらに、英語力を多面的に評価するために、それまでの筆記・実技テストに加えて、パフォーマンス評価を導入。現在、「英語で自己紹介」「名演説を群読」など、生徒が自ら考え判断して英語を使うパフォーマンス課題を年2〜4回(学年・コースによって異なる)実施し、ルーブリックによる評価を行っている。「BBCの英文記事を日本語の記事にする」といった難易度の高い課題は、SBコースではグループで取り組むことで乗り越えさせ、それぞれが達成感をもてるようにしている。 「学ぶ意欲を引き出す授業によって、勉強が苦手で入学してきた生徒ほど成長していると感じます。3年間で、自分の考えや調べたことについて英語で発表することもスムーズになっています」(英語科・光木 宏先生) こうした英語科の取り組みは他の教科にも刺激を与え、パフォーマンス評価の実施も広がった(図2)。理科では04年度から「理科課題研究」を実施しているが、英語科の評価方法を参考に実施後の振り返りを強化。また、ICTを活用した授業や、講義動画を制作して反転授業を始めるなど、独自の授業改善も行っている。 「どの生徒も、学びたいから学校に来ています。生徒が自分で考えて『わかった』という経験をたくさんさせたい。そのために、教員も一緒に楽しむ姿勢で、いかに生徒を活動的にするかを大切にしています」(理科・遠山晶子先生) 各教科が切磋琢磨するムードは、学校全体の取り組みにも発展した。13年度から実施された「府立高校特色化事業」において、同校はテーマを「探究・協同・表現」に設定。その具体策として立取材・文/藤崎雅子幅広い層が集まるなか「どの生徒も取りこぼさない」学習到達目標を明確にしルーブリックを使って評価研修旅行を軸に教科横断型課題研究プログラムを構築パフォーマンス課題の例園部高校英語6年間 Assessment Grid図2図1あなたが尊敬する人(紹介したい人)を探してください。そして一人に絞り込み、その人をクラスメイトに紹介してください。その際、その人がどんなことをしたのか。なぜあなたがその人を尊敬しているのか(なぜあなたがその人を紹介したいのか)を、聴く人にわかるように話してください。「現在」あるものには必ず「過去」があり、この2つの間に「歴史」があります。みなさんが興味をもっている人・物・場所など、対象は問わずにその「歴史」を調べ、自分が抱いている興味がクラスメイトによく伝わるように工夫して、B4用紙1枚にまとめてください。夏休みの課題です。京都国際科のみなさんはさまざまな地域から通学していますね。自分の暮らす市や町について紹介したい「もの・こと・ところ」をクラスメイトに紹介してください。その際、紹介したい事柄については、必要なら資料等を調べ、正確な情報に基づいて説明し、紹介したいと思った理由も伝えてください。発表原稿は400字程度で作成し、発表は1分間。黒板を使ってもよいことにします。英語(全コース1年生)世界史B(普通科・京都国際科2年生)国語表現(京都国際科3年生)理解(Reading・Listening)、表現(Writing・OralCommunication)、知識について、それぞれ習熟段階1~6を文章で表現。コースごとに各学年でどの習熟段階を目指すかについても共有。改訂を重ね、現在も同校英語教育の指針となっている。1887年設立/普通科・京都国際科/生徒数471人(うち男子195名・うち女子276名)/進路状況(2017年3月卒業者)大学110人・短大8人・専門学校40人・就職18人・その他6人学校データ282017 JUL. Vol.418

元のページ  ../index.html#28

このブックを見る