キャリアガイダンスVol.418
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 奄美と聞いて何を思い浮かべるだろうか。理科の先生ならアマミノクロウサギをはじめとする固有の動植物、国語の先生なら『死の棘』の島尾敏雄だろうか。鹿児島の南、琉球弧に連なる奄美群島は、亜熱帯植物に覆われた緑濃い島々だ。鹿児島とも沖縄とも違う言葉、島の人に信じられてきた小妖怪ケンムンの存在など、独特の文化が色濃く残っている。  奄美大島には約4万4000人が暮らし4つの高校がある。ここでは集落のことを「シマ」と呼ぶ。大島北高校は島の一番北側、3つのシマからなる赤木名地区にある。この地域の歴史と文化についての聞き書き調査は2014年に始まった。「聞き書きサークル」メンバー十数人が夏休みの3日間、グループに分かれて地域のお年寄りの元を訪ね、1日に数人の話を聞く。事前に聞き書きのコツを学んでから訪問するが、生徒には初めてのことばかり。聞く内容は「舌に懐かしい味」「伝え残したいもの」「苦しかったこと」「楽しかったこと」「北高に期待すること」など。1、2時間の取材中、話は多方面に飛び、いつの間にか大先輩である人の人生を丸ごと受け止めることになる。 学校に戻り報告書にまとめるがこれで終わりではない。初年度は実地調査もして地図を作った(左頁写真)。また、鹿児島大学から依頼を受けて生徒が研究会で調査報告を行ったり、地域住民や小中学生に体験を伝えるなどアウトプットの機会も舞い込んでくるので、活動は報告冊子の発行される3月まで緩やかに続く。 島の人口減少に伴い、かつて12学級あった大島北高校の生徒数は現在99人。統廃合が取りざたされるなか、大島北高校は「学校教育振興協議会」を設置して学校の在り方を検討してきた。当時、会長を務めていた故・中山清美氏が学校の存続を願って企画し、奄美市の「魅力ある学校づくり支援事業」に採択されたのが聞き書き調査だった。中山氏は奄美市立奄美博物館館長も務めた文学博士(考古学)であり同校の卒業生。調査協力者への依頼や同行は、氏が関わってきた奄美郷土研究会のメンバーが担うこととなった(コラム参照)。 聞き書き調査がなぜ学校の存続につながるのか。15年の報告冊子『シマ(集落)に学ぶ』から中山氏の言葉を紹介しよう。「ローカル(シマ)に学び、グローバル(世界)に発信することができるのは先人たちが残したシマの最大の資源」。地域の自然と歴史、文化を見つめ直し、地域の人と共に未来を考えながら活動することは、地域作りを担うことにもなる。それが教育の特色となり、発信によって魅力が伝わってほしいと考えていたようだ。 初年度メンバーは、林野庁と文科省の共催から始まった「聞き書き甲子園」で鹿児島県代表に選ばれた。活動は地元メディアに何度も取り上げられるなど注目度は上がっている。  活動に注目したのはメディアや地元の人たちだけでなく、前述したように大学からの連携依頼も多くある。生徒は地域のお年寄りだけでなく、奄美を調査対象にする研究者や学生とも関わる機会が増えた。調査内容のデータベース化を行うのは東京大学の研究室。千葉商科大学の学生が奄美の観光シンボルを考えるワークショップにも参加した。 教頭の樋之口 仁先生は「生徒たちのやっていることはまさに〝島の宝〞「学校を残したい」卒業生の思いが出発点多様な人と関わる経験が人生の糧になる学校を地域に残すにはどうすれば良いのか、「教育振興協議会」で存続の方策を探るなかで提案されたのは、聞き書き活動でした。高校生にとっては先人に学ぶキャリア教育となり、地域にとってはその文化や魅力を発見し発信することで貢献できる。そんな思いからスタートした取り組みが4年目を迎えています。おじい、おばあへの聞き書き調査で奄美の地域の宝”を発見・発信する取材・文/江森真矢子大島北高校(鹿児島・県立)第12回 “502017 JUL. Vol.418

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