キャリアガイダンスVol.418
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■ 田名部高校(青森・県立) しかし、生徒が自分の考えを表現するアウトプットの時間を増やすとなると、教科書の全単元の語彙や文法を覚えるインプットの時間は、どう確保するのか。 その両立のために、コミュニケーション英語の授業モデルとして、堤先生が同僚と築いたのが〝TANABU Model〞だ。図1のように、授業の流れを4パターン構築。単元によっては、リスニングや読解力テストに絞って「あっさり」短時間で授業できるようにして、ひねりだした時間を表現活動に回し、そのなかで「英語を使って定着させる」ことも目指したのだ。 時間をかけて「こってり」やる単元の場合、授業の流れはこんな感じだ。 まずは概要把握。生徒は予習段階で、辞書を極力使わずに〝PARAGRAPH CHART〞(本文の展開を図式化して空欄を設けたシート)や〝SUMMARY〞(概要を日本語100字でまとめる)に取り組み、その内容を授業でペアや全体で確認する。 「これはいい読み手になるための〝推測ゲーム〞なんです。本文やタイトル、写真から内容を推測し、仮説を立てて読む。推測で100字にまとめた概要をペアで『ここはどう?』と確認し合うと、読みの甘さや間違いが自然にわかります」 次いで詳細理解。これも各自ワークシートに挑んでからペアや全体で確認する。 続いて語彙&表現定着活動と音読活動。 〝VOCABULARY SCANNING〞では、与えられた日本語と指定語数に当てはまる英語表現を教科書から抜き出す。英単語がわからなくても推測で考えられるのだ。ペアで答え合わせをしたら、覚えた表現について問題の出し合いっこ。  〝READING PRACTICE〞では多種多様な音読練習にチャレンジ。最速読みの競い合い、超早口から超ゆっくりまで緩急つけたクレイジー・リーディング、先生が言葉を発したらすぐ追いかけてほぼ同時に音読するシャドウイング、耳にした英語をその場で訳す同時通訳など。 「これをALT(外国語指導助手)がやるとすごく面白いですよ。ネイティブのスピーチを、生徒は何を言っているかわからなくても、のりでリピートします(笑)。英語の発音やリズムに慣れていきます」 教科書本文の朗読を生徒が聞きながら〝DICTATION〞(書き取り)もして、締めには〝STORY REPRODUCTION〞を行う。与えられた10個のキーワードを使い、各生徒が、本文の内容を自分なりの英語で、話して書いて、表現するのだ。 「超こってり」パターンでは、その後にパフォーマンス・テストを行う。1年生は教科書の登場人物なりきりインタビュー。うまく演じたい生徒ほど教科書を読み込む。2年生は教科書の内容を基にしたディベートで、お題は「国境なき医師団の医師が子どもの酸素ボンベを外した決断は正しいか」など。余り時間に「首相はUFOの存在を公表すべきか」を議論したことも。「ニュースを疑え、教科書を疑え、先生を疑え」とも投げかける。 総じて茶目っ気のある授業内容だが、これも堤先生が大事にしていることだ。「生徒の頭を桶に突っ込んで水を飲ませるような授業ではなく、『英語ってなんかおもしれえ』と、生徒が水を飲みたくて飲みにくるような授業にしたいんです」全単元の「内容理解」と「表現活動」を両立させるには個別ワークで取り組んだことをペアや全体で確認するときは、堤先生は指示を出すだけで、正解や間違いは生徒が見つける。「私の役目は教師というよりコーチ」と堤先生。ALTが見本を示したクレイジー・リーディングでは、言い方を大げさなほど真似て周囲の笑いを誘う生徒も。「間違えたら恥ずかしい」とはならず、皆で音読を楽しんでいた。 TANABU Modelをつくるために、堤先生とまず取り組んだのは、全国の先進的な高校に学び、真似から入って本校に合わせて調整することでした。 そうした形づくった型を、堤先生が新課程の1年生から導入。そのとき私は3年生の受け持ちで、2年間は傍から見ていたのですが、授業中の生徒は楽しそうでも「説明不足では?」とも感じていました。けれども、その1年生が卒業までに、模試の成績でも飛躍的な伸びをみせてくれたのです。以降も、異動で来られた先生方がこの授業モデルをうまく自分のスタイルに落とし込んでくれて、毎年結果もついてきて、皆で手応えを深めていきました。 英語を抵抗なく使うfluency(流暢さ)を重視した授業なので、当初は文法などのaccuracy(正確性)は低くなりやすい、といった課題はありました。そうした点は、先生同士で意見を出し合い、例えばaccuracyは課題や小テストで補うなど、授業のやり方を少しずつモデルチェンジしていきました。今後も皆で改善をしながら、より実践しやすいTANABU Modelにしていきたいです。 本校の生徒は、地元の人以外との接点はそんなに多くないこともあり、力はあっても引っ込み思案なところがあるんですね。私たちとしては、その子たちが外に出ても、自分の良さを発揮して活躍できるようになってほしいんです。そして外でもいろいろなものを見聞きしてさらに成長し、得たもので還元できるものがあれば、社会やこの地域に還元してもらえたら、と思っています。英語武川真樹先生生徒が外に出ても自分を発揮できるように■ INTERVIEW校訓は、「自律・協和・純正」。校章は、ドイツの物理学者ラウエが発見したラウエ・スポット(ラウエ斑点)を形どったもの。その整った美しさに通じるように「調和のとれた人間の育成」を目指している。生徒主体の学習活動に力を入れており、部活動も盛ん。アメリカ・ワシントン州にあるポートエシジェルス高校が姉妹校で、英語科ではその姉妹校交流をはじめ、さまざまな国際交流活動も行っている。普通科・英語科/1917年創立生徒数(2017年度) 556人(男子229人・女子327人)進路状況(2016年度実績)大学135人・短大12人・専門学校/各種学校24人就職12人・その他7人〒035-0054 青森県むつ市海老川町6-18 0175-22-1184 http://www.tanabu-h.asn.ed.jp/572017 JUL. Vol.418

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