キャリアガイダンスVol.419
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112017 OCT. Vol.419を掲げるだけでは、イメージすることは先生によって違います。目指す方向はバラバラのままで、掲げたビジョンをもとに仕事を仕分けようにも、話はまとまりません。 簡潔な言葉にまとめようとすると、抽象度は高くなりやすいですが、例えばキーワードは「主体的な学び」というひと言にするにしても、その言葉に込めた思いまで誰もが同じように語れるようにしてほしいですね。 そのためには、仮の生徒像を思い浮かべ、その子にどう変わってほしいのか、具体的なストーリーを共有するのも一つのやり方です。「○○君は成績がふるわず、部活も熱が入らず、帰宅後はだらだらして寝るだけだが、その生活がこう変わり、卒業後はこのようになる」といったように。 さて改革の失敗例としてありがちなのが、課題や目指したい生徒像は見定めたものの、それだけで終わることです。学校は何をするのか曖昧なままで、やることは個々の先生に任せっきり。これでは方向性を揃えても、具体的に何を取捨選択するかで意見が食い違い、総論賛成・各論反対となって前に進みません。 だから第2のステップとして、重点課題とビジョンをもとに、今ある仕事のうち何を大事にし、何を減らしたり統合したりするか、哲学や戦略も議論していただきたいです。 例えば、「勉強についてこられなくなった生徒に頭髪の乱れが目立つ」という課題があり、「自己肯定感を高め、勉強に前向きになれるようにする」というビジョンを描いたなら、「皆で生徒のよいところ褒め褒め作戦をやってみる、代わりに頭髪検査の回数を減らす」「反省文や再登校指導による頭髪改善に時間を費やす前に、学習支援による改善を試みる」などと。このやり方が頭髪の乱れに必ず効果的だと言いたいわけではないですよ。何が有効かは、その学校が抱える課題の本質によって違ってくるはずです。 哲学や戦略を定めて動き出したら、先生方にもう一つ意識してほしい視点があります。自分たちのやっていることの「時間対効果」や「費用対効果」を振り返ることです。 子どもたちへの教育が合理性だけでは成り立たない、というのは百も承知です。けれども、学校は今でも、ある程度はやることを無意識のうちに合理性で取捨選択しています。例えば「フィギュアスケート部を作りたい」と生徒から相談されても、予算や労力の面から多くの学校が「難しい」と判断するように。学校教育は合理性だけでは成り立ちませんが、だからといって合理性を意識しないのはおかしな話で、そこで思考停止してほしくないのです。 重点課題とビジョンをもとに、学校の哲学や戦略を定め、仕事の仕分けと精選をして、まずはやってみる。そのうえで、どれほど効果があったかを振り返り、成果を皆で確認したり、さらなる改善点を見つけていく。ある管理職が感じる形から入る働き方改革への懸念 本校は地方の公立高校で、生徒や保護者からは大学進学を期待されています。インターハイに出場する運動部や、定期公演や出展に力を入れている文化部も多く、部活動への地域の期待も高いです。それに応えようと、先生たちの労働時間は膨らんでしまいがちです。 勤務時間外労働を記録して「見える化」するなど多忙化解消を進めてきましたが、思うように成果はあがっていません。また、部活動に関しても、以前から「ノー部活デー」を設けて勤務時間の削減に努めてきましたが、実際には「特例」の部活動を認めざるをえず、こちらもなかなか難しい状況です。 一方で、学習面では探究活動や地域連携が推進されていますが、まだ十分な進展を見せていません。「なぜそれをやるのか」が置き去りにされた形式的な活動が増えていないか。単に「部活動を減らして」「学習活動を増やす」ような軸のない働き方改革では、本物の経験を積める生徒が、かえって減ってしまわないか危惧しています。 一管理職としては、先生にとって働きやすい職場を目指すとともに、子どもたちのためにも、教育目的がぶれない形で働き方改革を進められないかと悩んでいます。(編集部に寄せられたある管理職の先生の声より)哲学や戦略を定めて具体的な改善活動へやってみたことの効果を思考停止せずに振り返る教育研究家 妹尾昌俊「働き方改革」で、どこへ向かう?Interview

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