キャリアガイダンスVol.419
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 生徒数約3000人、教員数約200人と大規模な近畿大学附属高校。いち早く授業にiPadを導入し、ICT教育の先進校として知られている。 同校のICT化の動きは、十数年前、教員の煩雑な業務を効率化しようというところから出発した。現在ICT教育推進室長を務める乾 武司先生は、かつての状況をこう振り返る。 「紙ベースの情報管理が根強く、同じ情報を転記するような無駄な作業を日常的に行っていました。また、入試や進路などの情報は担当部署がそれぞれの方法で管理しており、継承や部署間の共有のしにくさも課題でした」 そんななか、乾先生は当初より教員、生徒、家庭が包括的につながるシステムの構築をイメージしていた。その完成に向け、何年もかけて、一つひとつのピースをはめていくようにICT環境を整備。その最後のピースが、現在の同校の教員同士、生徒と学校をつなぐICT化により授業に一層、注力できる環境を整備看板になっているiPadの導入に当たるという。 こうした一連のICT化は、教員の働き方を大きく変えた。何によってどう変わったのか、振り返ってみたい。 同校のICT化は、大きく2段階に分けられる。その第1段階は、教員をオンラインネットワークでつなげる取り組みだ。2001年度、他校に先駆け、全教職員に専用パソコンを配布。その後、生徒の個人IDにあらゆる情報を紐づけ、データベースを一元管理する校務システムを構築した。 手元のパソコンで入力したデータは、学校全体のデータベースにて一元管理。同じ情報を何度も記載するような二重作業が不要になった。分掌間のデータの共有もしやすくなり、大学入試用の調査書などを作成する際も、自動的に必要な数字を集めて出力できるなど、多くの事務作業が効率化された。 さらに、教員間の情報共有にも、オンラインネットワークを活用。教員数の多い同校は、職員朝礼のたびに各所属職員室から全員収容できる大会議室への移動が必要だが、その頻度を、毎朝から週2回に減じることにもつながった。 「パソコンを配布した際は先生方からの反発もありましたが、実際に運用するうちに『便利になった』と言われるようになりました。煩雑さを排除する運用方法の工夫も含め、先生方の負担を軽減するための設計が大切だと実感しています」(乾先生) ICT化の第2段階は、生徒・家庭も含めたネットワーク化だ。乾先生は、登場間もないiPadの革新性に目を付け、13年度新入生からiPadを1人1台もつ体制を導入。校内のWiーFi環境も整備し、ポータルアプリ「Cyber Campus」をシステム会社と共同開発。これは、お知らせ、映像・文書ライブラリー、アンケート、掲示板、スケジュール、メッセージなどの機能を搭1939年創立/普通科/生徒数2899人(男子1759人・女子1140人)/進路状況(2017年3月実績)大学789人・短大3人・専門学校25人・就職6人・その他 63人/教員数(管理職含む)208人取材・文/藤崎雅子ICT教育推進室長乾 武司先生載したもので、各自のiPadを有効活用できるようにした。 当時はまだ学校でのiPad活用事例がなく、教員からは多くの反対意見があがったという。しかし、「前例がないからこそ挑戦する価値があるという経営判断があった」と乾先生。導入決定後は、教員の不安を払しょくするため、iPadの使い方について何度も講習会を実施。現在も、アップル社のeーラーニングシステム受講を支援する自主参加のフランクなイベント、「Apple Teacher Café」を定期的に開催するなど、サポートを継続している。学校データ業務の煩雑さの解消から始まったICT化構想背景と課題データを一元管理し教員がオンラインでつながる取り組みiPad導入から一気に進んだペーパーレス化と授業改善教頭丸本周生先生近畿大学附属高校の働き方改善のステップ●教員数約200人の大規模高校で、朝礼も大きな会場に移動して実施するような状況だった●校内にあるさまざまなデータは担当部署がそれぞれ管理していたため、情報の入手や引き継ぎが難しかった●生徒数が多いため、プリント1枚の配布にも膨大な紙と作業時間が必要●2001年、教員に1人1台パソコンを配布し、校務学籍システムを一本化●2013年~iPadを活用し、学校・生徒・家庭がオンラインでつながるシステムを導入背景課題実 施182017 OCT. Vol.419

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