キャリアガイダンスVol.419
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ができる」という前向きな姿勢を共有する学年団だったので、授業・課題(宿題)の軽減と部活動加入を奨励。学習効果を高めるために、部活動やボランティア活動を今まで以上に取り組むことによるシナジー効果を狙った。 1・2学年は夏休みの補習授業を大幅に減らしていった。特に、部活や生徒会の中心であり最も多忙な2学年の補習を大きく減らし(図2)、その分オープンキャンパスや部活動、各種大会への参加を促した。教員は、授業改善のための相互に相談する時間を確保するだけでなく、外部の勉強会へ参加することを奨励された。補習のコマ数を劇的に減らすことに対して、保護者からは不安や反対の声も出たという。 「補習授業の量を減らしても、質を高めれば進学実績を上げられる自信はありました。また、当時本校から九州北部総体に補助員を出すことが決定していたので、強制的に補習数を減らさざるを得ない状況にあったため、それを理由に『数を減らしても実績は下がらない』というエビデンスが取れるかもしれないと考えました」(山﨑先生) 当時の同校の夏期補習は量に力点が置かれ、生徒を長時間拘束し、時間割に「自習」のコマがあった。5教科のみで授業を回すので、教科を目一杯入れても教員不足のため自習とするしかなかったのだ。しかし、疲弊していた生徒たちの授業での精度は低く、課題も「やらされている感」が蔓延していた。そこで、まず自習コマをカットし、午前中に授業を固め、午後の授業を廃止。伸び悩んでいる生徒や、逆に学力が高い生徒への個別指導に切り替えた。 「授業数を減らして『部活動や校外活動等をさせることで生徒の多様性を担保し、タフな生徒を育てたい』と言うと、保護者は受け入れてくれました。『チーム致遠館』の持続的な成長の源泉となる、生徒、保護者、教員の三者の足並みが揃ったのです。それまで部活の加入率は50%程度でしたが、それ以来90%以上の生徒が部活を始めました。小さな積み重ねがつながっていき、チームとしての改革の機運が熟していくのを感じました」(山﨑先生) 「一般の学校では高校受験の際に部活や習い事を辞めなければならず、好きなことを諦めた状態で入学してきます。それに対し、中高一貫校のメリットは好きなことを続けられる『6年間のゆとりある教育』のはずです。しかし、そのあるべき姿が、大学受験に向かった学習に偏りすぎて予備校化した結果、生徒が疲弊していったのです。スポーツでも芸術でもやりたいことを犠牲にしなくてもいい、『時間を生徒に返していこう』という思いです。好きなことを思い切りやったら、生徒たちは自ら勉強もやる気になります。これは教員の責任放棄ではなく、教員の不安から授業に縛り付けていた体制から、生徒が自ら学びたくなる環境に変えようということです」(牟田久俊校長) 課外授業の配分は入試科目の配点を鑑みて、時期に応じて重点科目を設置することにした。2学年の8月までは英語・数学・国語に重点を置き、夏を過ぎると理科・社会にも注力させる。3学年の部活を引退する頃には、生徒の学力が一気に伸びる時期が来るからだ。 また、同校では公立でありながら全生徒に学習用PCを導入、全教室でWi ‒Fiが使えるなどICTの利活用国公立大学現役合格者数の推移夏期補習のコマ数推移(2学年)生み出された時間での新たな取り組み例図1図2図3勉強以外にも熱中できる時間を生徒たちに返していくICTの利活用で生徒個々の理解度に合わせた学習を支援取り組み内 容大学入試問題研究会教科ごとに大学入試問題(センター試験、東大、九大、佐賀大等)の分析担当者を決めて研究し、得られた知見を普段の授業に生かして指導内容の精選とレベルアップを実現することによって、生徒の学力の向上と進路実現を図る。中高乗り入れ授業中高一貫校の利点を活用し、中学・高校でお互いの授業研究会を通して、職員のもつ指導ノウハウを共有する。先輩と語る会3年生を対象に、卒業生を講師に招き、最終学年のあるべき姿や学習方法などについて語ってもらう。オープンキャンパス参加1・2学年は夏期補習特課を減らし、オープンキャンパス参加を奨励する。面談の回数増加面談を頻繁に行い、生徒の状況把握、個別進路指導の強化。また、担任や進路指導の面談とは別に、「何のために学ぶか?」の意識付けのために、校長が全生徒と面談を行う。スタディサプリの導入生徒が好きな時間に、自分の学びたい内容を自由に学習できるよう、Web学習サービスを導入。15014013012011010090807012011010090807060504020082013201420152016201714610210884847214313310589119124127133卒業年度人数20092010201120122013201420152016←次ページにつづく「多忙」とどう向き合うか…致遠館高校「働き方改革」で、どこへ向かう?Report 04212017 OCT. Vol.419

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