キャリアガイダンスVol.419
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にも力を入れている。学習用PCは当初、授業での一斉利用に使用していたが、現在は外部のWeb学習サービス(スタディサプリ)を学校で契約し、生徒たちは家庭でも個別に活用している。 「生徒の理解度には大きな差があり、上位の生徒も遅れ気味の生徒も、自分の理解度に合わせて好きな時間に学びたい内容を復習できます。特に上位の生徒たちのなかには質問することが恥ずかしいと思っている生徒も多く、伸び悩む傾向があったのですが、彼らが苦手を克服することにWeb学習サービスは予想以上の効果を上げています。教員にとっても、補習や課題が減って、教材開発などに余裕がもてるようになりました」(大久保智昭先生) 補習授業を減らし生み出された時間で、教員たちは授業の質の向上が、生徒たちは進路をじっくり考えるための多様な取り組みが可能になった(図3)。若手の教員が自分の勉強に充てる時間を確保できるようになったことで、外部の勉強会にも参加し始め、最難関大学を目指す生徒への指導にも自信と根拠をもって臨めるようになったという。外部での勉強会で得たことは、毎週の教科会議で共有している。 「教員は自分を超えるような生徒を育てなければなりません。そのために教員自身の勉強は欠かせないのです」(牟田校長) また、授業の質の改善だけでなく、面談で一人ひとりの生徒と向き合う時間も増えている。  「勉強は自分のためだけにするものではありません。自分の学びが社会でどう役立つかがわからないと、学びの意欲は継続しません。『何のために勉強するのか』の意識付けをするために、進路指導の面談とは別に私が個別に全生徒と面談しています」(牟田校長) 山﨑先生が所属した学年団から始まった改革をベンチマークにして、全校で同様の取り組みを実施した結果、国公立大学への合格者数がV字回復した(図1)。教員の勤務は適正化され、職場の雰囲気が明るくなった。 教員・生徒の多忙化が徐々に解消されていったことで、進学実績回復だけでなく生徒たちも笑顔で元気になり、そのことが教員たちの自信につながり、教員にも活気が戻ってきた。生徒の変化で、保護者や地域からの評価も上がり、県内屈指の人気校となった。 多忙化解消によって教員が本来やるべきことが明確になってきたと山﨑先生は考えている。 「生徒たちも多様化している時代なので、答案や授業の振り返りも予想を超えた内容が返ってきます。これに対応する教材研究が大事で、そこにもっと時間を割くべきだと考えています」(山﨑先生) また、生徒たちを激動の時代を生き抜ける人材として鍛え上げるために、今後は地域や大学との連携、留学支援など、勉強以外での施策をこれまで以上に実践していきたいという。 全員参加の補習授業数を減らすという思い切った改革を続けてきた同校の先生たちには「地方の公立高校から日本を変えたい。日本の教員を元気にしたい」という熱い思いがある。 「生徒の人生がかかっているので無謀なことはできませんが、失敗を恐れないでほしいです。新しいことを始めるときは恐れをともないますが、恐れるがあまり新しいことへの挑戦をやめれば徐々に疲弊していくだけです。その方がもっと怖いと思います」(山﨑先生) 「若い人が新しいことをやりたいと言ったら管理職は止めない勇気も必要です。管理職はビジョンを伝えて、具体的なことは何かあったときだけ責任を取ればいいのです」(牟田校長) 多忙化解消の先に同校がどう進化していくか今後の変化にも期待したい。生徒の笑顔、地域の元気、教員のキャリアアップ改革による変化タフな生徒を育成するための外部連携施策も進行予定今後の展望同校では志望校検討会や教科担当者連絡会議などもICT化。生徒の特性に応じたよりきめ細かい指導や、教員の生徒理解を促し、授業改善や面談に役立てている。校長と生徒の個人面談。校長は予め、生徒の進路希望や成績状況などを頭に入れたうえ、各々の進路の学部などが社会とどうつながっていくかについて、生徒に気づきを与えている。生徒の多忙化改善補習・課題の削減部活加入率増働き方改善につなげるためのポイント致遠館高校では、教員も生徒も元気がない状態について、多忙化しているのは教員だけでなく生徒も同様だと気付いたことから始まった。教員の業務削減という視点から「生徒に時間を返す」という視点で取り組んだのが、課題や補習数の削減と、部活動の奨励だ。それにより、生徒に元気が戻り、ひいては地域の活気にもつながっていった。山﨑先生はそれを生徒も教員も保護者も、「丸ごと幸せシステム」と呼んでいた。牟田校長が語っているように、生徒のためと思っている業務が、実は教員自身の不安解消のためであったり、目標や情報の共有不足のために重複して行っている業務はないかなど、今一度精査するお手本になりそうだ。PickUpキーワード「多忙」とどう向き合うか…致遠館高校「働き方改革」で、どこへ向かう?Report 04222017 OCT. Vol.419

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