キャリアガイダンスVol.419
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 愛知県教育委員会(以下、愛知県教委)は今年の3月に「教員の多忙化解消プラン」(以下、プラン)を発表。短期的、中長期的な視点で整理しながらも、期間を区切っての数値目標を設定するなど(図1)、現場の活動に踏み込んだ具体的な取り組みをスタートさせている。 愛知県教委がこの取り組みを始めた背景には、全国的な教員の働き方改善の動きだけでなく、脳出血で倒れた教員に最高裁で労災認定する決定が時間外勤務の削減目標を数値設定し、工程表に基づき、業務改善を目指す下された自治体ということもある。図1のプランの目標で基準としている「勤務時間外の在校時間月80時間」とは、厚労省が疾病発症の原因を業務と関連性が強いとする、つまり労災と認定する時間外労働の時間数だ。教員の在校時間については2013年度から調査してきたが、2015年度まで高水準のまま変化がなく、高校教員の14%、中学教員では38・7%が80時間以上の時間外労働をしている実態が浮き彫りにされた。 そこで、2016年に設置した「教員の多忙化解消プロジェクトチーム」の提言を踏まえ、県内の学校が足並みを揃えて、教員の多忙化の解消に向けた具体的な取り組みを示すプランを策定した。プランでは「長時間労働の是正に向けた在校時間管理の適正化」「業務改善に向けた学校マネジメントの推進」「部活動指導に関わる負担の軽減」「業務改善と環境整備に向けた取り組み」の4つの柱を具体的に示し、PDCAを回せるよう、チェック機関として県教委、市教委、校長会、PTA、有識者からなるフォローアップ会議も設定している。また、管理職の人事評価項目に、在校時間管理や執務環境改善に関する取り組みを盛り込むことの検討もプランには含まれ、管理職の意識改革を促している。 予算や人員が増えないなかでのプラン策定には、現場からは「現実的ではない」という声もあったという。 「その通りかもしれませんが、このまま80時間を超えた時間外労働をしつづけていいということにはなりません。教員の働き方改善は最早『やる・やらない』の問題ではなく、教育委員会と学校が一緒に知恵を出し合って取り組まなければならない課題なのです。そうしなければ、優秀な教員を採用できなくなるという危機感をもっています」(宇都宮裕人氏) プランを具体的にした理由は、学校や教員たちはすでに業務改善に取り組んでいる意識があるからだ。それでも労働時間が減らないため、別の視点を提案する意味がある。また、教員たちは生徒のためと思うと超過労働もいとわず行ってしまう。それをふり返って「今の業務が、本来行うべき学習指導取材・文/長島佳子愛知県教育委員会教育企画課 課長補佐教育政策グループ宇都宮裕人氏などの目的から考え、本当に生徒に還元されているか」という視点で見直してもらう機会にしたいと宇都宮氏は語る。 プラン初年度の今年は、学校別の具体的な取り組みをどう決めていくかのプロセスを見える化するために、取り組み実践検証校を指定し、モデルプランを実践している。当該校には民間からコンサルタントを派遣し、ワークショップなどを行って課題を吸い上げ、県が主催する「カイゼン」推進会議で情報共有。年度末に向けて学校の業務改善計画を策定していく。このプロセスを来年度から他校にも参考にしてもらい、全校で個別の計画を策定、実行していく予定だ。 「まだ始まったばかりの取り組みですが、部活に関しては考えていかなければという声が上がっています。教員の業務改善の目的は『質の高い教育を持続的に行う』ためです。この基本に立ち戻って、形骸化させず組織として継続的にできる取り組みにしたいと考えています」(宇都宮氏)「教員の多忙化解消プラン」の目標図1待ったなしの労働状況に足並みを揃えた改善の必要性多様な視点から改善案を検討実践検証校からスタート【平成30年度までに達成すべき目標】【平成31年度までに達成すべき目標】【平成32年度までに達成すべき目標】勤務時間外の在校時間が月80時間を超過している教員の割合:現状数値の半減以下を目指す。小学校5%以下、中学校20%以下、高等学校5%以下、特別支援学校0%勤務時間外の在校時間が月80時間を超過している教員の割合:全校種0%を目指す勤務時間外の在校時間が月80時間を超過している教員の割合について、全校種0%を継続しつつ、国の働き方改革の動向を踏まえ新たな目標を設定する。(平成29年度を目途)教育委員会での包括的な取り組み「多忙」とどう向き合うか…愛知県教育委員会「働き方改革」で、どこへ向かう?Report +1262017 OCT. Vol.419

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