キャリアガイダンスVol.419
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希望の道標取材・文/山下久猛撮影/舘野季子1991年神奈川県生まれ。高校卒業後、一浪して早稲田大学教育学部複合文化学科入学。1年生の時に日本ソマリア青年機構を創設。「学生だからできること」を標榜し、2013年、ソマリア人若者ギャングの社会復帰プロジェクト「Movement with Gangsters」を開始。これまで数多くのギャングを更生、社会復帰させてきた。大学卒業後はロンドン・スクール・オブ・エコノミクス修士課程に入学し、紛争解決について学ぶ。2016年9月卒業、その後はソマリア紛争の最前線に立ち、ソマリア政府や国連とともに、「カウンターテロリズム」と「武装解除」の2つの手法で、紛争の主要因となっているイスラム過激派組織アルシャバーブの戦力を削ぐ活動に従事。2017年4月、団体名を「NPO法人アクセプト・インターナショナル」と改め、テロ根絶と紛争解決に尽力している。ながい・ようすけ“やりたいこと”だけでなく“やらなければならないこと”も軸に 将来を考えるということ。NPO法人アクセプト・インターナショナル代表/永井陽右 2011年、大学1年生の時に「日本ソマリア青年機構」を設立し、ソマリア人の若者のテロ組織への加入防止とテロ組織からの脱退促進活動などに取り組んできました。2017年4月に「アクセプト・インターナショナル」と名称を変え、現在はソマリアに加えて、ナイジェリアや新疆ウイグル自治区など世界から取り残された場所でもテロ防止・紛争解決に取り組んでいます。 僕がこのような活動に身を投じようと思った原点は高校時代にあります。高校生の頃は勉強そっちのけでバスケットボールに打ち込んでいました。高2の夏休みに部活が2日間だけ休みになったので、部屋でインターネット上にアップされているおもしろ動画を見まくっていました。その時、南太平洋に浮かぶ島国・ツバルの特設ページのリンクを見つけて何の気なしにクリックして読んだところ、大きな衝撃を受けました。地球温暖化の影響で海面が上昇して、今まさに少しずつ沈んでいて、近い将来完全に沈んでしまうということを知り、「これは大変だ! 俺が止めなきゃ」と思ったんです。同時に、これがきっかけで他者の存在を意識し始めて、これまでの自分の生き方を大いに反省しました。僕は小学校の頃からスポーツが得意だったので、運動神経が鈍い子などをけっこうきつくいじめていたんです。なんてひどいことをしてきたんだろうと腹の底から後悔、懺悔しました。その罪滅ぼしのために、これからはいじめられている人を救おうと決意したんです。そして、どうせなら一番いじめられている人をどうにかしようと思いました。この思いは今も変わってない、僕の行動原理になっています。 高校3年のある日、世界史の資料集でルワンダの大虐殺を知って、ルワンダの人々を救おうと決めました。大虐殺が起きたルワンダこそが世界で一番いじめられている場所と考えたのです。大学に入学した週にルワンダ支援の団体に入って、夏休みに念願のルワンダへ行ったのですが、当然虐殺なんてとうの昔に終わっていて、国自体がすごく発展していました。肩透かしもいいところで、これからどうしようかなと思ったのですが、帰りに寄ったケニアのイスリー地区はソマリアからの難民がテロリスト化して非常に危険なエリアになっていることを知りました。帰国してソマリアについて調べてみると、大飢饉が起きていて、1年で28万人も死んでいたんです。それで僕が助けるべきはソマリアだと思って支援団体を探したんですが、一つもありませんでした。その理由は地球で一番危険な場所だったから。当時国際協力活動をしているNGOに相談に行ったのですが、「お前にできることなんて何もない」「邪魔になるだけだ」「無理だから諦めろ」「死ぬぞ」など全否定されました。でもどんなに否定的なことを言われても諦めようとは思いませんでした。支援団体がないなら自分で作るしかないと「日本ソマリア青年機構」を設立したというわけです。 最近は、大人が子どもに「好きなこと、やりたいこと、得意なことを仕事にしよう」とよく言っていますが、全員がそんな考え方では地球は滅んでしまいます。僕がソマリアの問題に取り組んだのも、ソマリアが好きなわけでも、専門的な知識や経験、スキルを持っていたわけでもないですが、ソマリアでは生死に関わる深刻な問題を抱えている人たちがたくさんいて、しかも世界から見放されている、だったら僕がやるしかないと思ったからです。だから、高校生の皆さんには、やりたいことだけじゃなくて、やらなければならないことは何かをぜひ考えてみてほしいですね。国際協力は誰にでもできるけど、特定の誰かにしかできない国際協力もあるので、その「誰か」になってほしい。そんな若者こそがこの時代のヒーロー。世界はいつだって、ヒーローの誕生を待ち望んでいるんです。●NPO法人アクセプト・インターナショナル https://www.accept-international.org/32017 OCT. Vol.419

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