キャリアガイダンスVol.419
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442017 OCT. Vol.419 1年生の夏休み明けに、学校を辞めたいと言い出す生徒は少なくありません。夏休みに違う価値観に触れたり、学校よりも魅力的なことに出会ったりして、何かモヤモヤしたものを抱えることも増えます。そこで経験豊富な先生ほど、「よくあること」と軽く捉え、「そんなこと言わずがんばれ」と励ましてしまいがちです。しかし、それは逆効果です。 まずは、「辞めたい」という気持ちをしっかり受け止め、「進路のことを考える時期に来たんだね」と、状況を認めることが大切です。そして、「大事なことだから焦らないで、まずはどんな思いでいるのかを教えて」と、しっかり時間をかけて対応していく姿勢を示すことです。さらに、生徒との面談を繰り返し、ある程度落ち着いたところで、保護者との三者面談なども行う必要があるでしょう。いずれにしても、「学校を辞めてはダメだ」と、頭ごなしに教師が決め付けることは一番やってはいけないことです。 学校によっては夏休みのアルバイトを禁止しているため、アルバイトで価値観が揺らいでいる生徒が話しづらくなっていることもあります。教育カウンセリング心理学の専門家の視点から、ケース対応の極意をアドバイスしていただきました。会津大学 文化研究センター上級准教授 苅間澤勇人先生かりまざわ・はやと●1986年岩手大学工学部卒業後、岩手県公立高校教諭に。早稲田大学大学院教育学研究科博士後期課程単位修得退学。教育学、教育カウンセリング心理学を専門とする。2015年4月より現職。軽く受け取らずにどんな思いか丁寧に聞くもう一度、中学から高校への進路指導のやり直しを意識する 長期休業後に登校を渋る生徒が出てくるのは、長年の教員生活のなかでもよくあることの一つです。高校・中学・小学校で30年以上教員を経験していますが、どこでも同じ傾向がありました。ただし、高校、特に今回の事例のような1年生の場合は、そもそも「高校に進学した」時点で本人が抱えていた問題、とりわけ「進路」に関しての思いが大きな要因となっている傾向があります。しかも、「学校を辞める」という選択肢が一番早い解決策のように思えるのも、本人の問題解決能力の低さからはやむを得ないところでしょう。 私としては、生徒との人間関係がどのようなものであるかによって多少対応は変わりますが、基本は、生徒の訴えにひたすら耳を澄まし、聞いてあげることを第一としています。 4月から8月まで本人が考えてきたこと、思ってきたこと、感じてきたこと、それらをすべて吐き出させる。それが最初のステップです。「だるい」「つまんない」「面倒くさい」「勉強わからない」「疲れる」など、表層的な言葉の「根源」を本人と共に探してあげることが大切です。時間はかかります。かつては一人の生徒とまるまる6時間近く話をした(聞いた)経験もあります。簡単にアドバイスを与えたくなるのが教員の立場ですが、そこをぐっとこらえて、本人の思いを解放させてあげるのが、その後につながる大きな鍵だと思います。最終的に進路変更となった生徒もいます。しかし、最初の「関わり」は、彼・彼女らにも、少しは残っているようで、その後も年賀状のやりとりなどにつながっています。 以前、信頼関係がまだそれほどできていなかった生徒から突然「学校を辞めたい」と言われ、面談で理由を聞いて学校を続けるように説得をした経験があります。担任だったので納得してもらえたかと思いましたが、こちらの勘違い。余計火に油を注ぐ状態となり、結果、進路変更をしてしまったことがありました。この経験が今に生きていて、早い段階で二者面談をしたり、日頃の声かけなどで信頼関係を構築し、このような事態に備えて情報をキャッチしておくことが重要と思っています。 また、「辞めたい」と言われた際も、すぐに面談をして傾聴を心がけます。そうすると、私ならこうする!こうした!実際に、読者の先生方がどうされたか・どうされようとするかをお伺いしました。生徒の訴えにひたすら耳を澄まし「話を聞く」(北海道・道立 北見柏陽高校 中川了之先生)日頃の信頼関係の構築が大事(東京都・都立 練馬高校 正木成昭先生)

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