キャリアガイダンスVol.419
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いった指示はしません。それをやってしまうと、アイデアが生徒自身のものではなくなってしまいますから」(織田澤副校長) デザイン思考を取り入れたことは、生徒の発想やプレゼンのスキル向上に大きく寄与した。しかし、「真にやりたいと思える自分自身のテーマを見つけることは、デザイン思考だけではできない」と織田澤副校長。そこで生きてくるのが、次からのフェーズだ。広く社会に目を向けさせ、生徒個人の興味・関心を問う内容に入っていく。 次のフェーズ、「アカデミック探究」(中学3年〜高校1年)では、まず「データサイエンス入門」でフィールドワークを絡めながらデータの取り方と見方を学び、論理的な思考力を鍛える。 そして、「社会課題解決ゼミ」では、「SDGs」(国連が設定する持続可能な開発目標)の17項目から生徒がそれぞれ興味をもったテーマ別に活動する。今年度は「飢餓」「ジェンダー」「平和」など6つのゼミが発足。ゼミごとに内容や範囲を徐々に広げていき、鳥取から日本、最終的には世界の課題について考える。 最終フェーズである「パーソナル探究」(高校2年)では、本格的な論文執筆に取り組む。各自がやりたい研究や解決したい課題を設定したテーマには、「鳥取市庁舎整備問題が混迷した原因はどこにあるのか」「植物を育てる光は、LEDと太陽光のどちらが効率がいいのか」など具体的な問いが目立つ。図書やインターネットでの調査のほか、Skypeなどを使って遠方の専門家から話を聞いたり、現場に出向いてフィールドワークを行ったりしてテーマを深め、1万字程度の修了論文を執筆。全校規模で実施する発表会、「青開学会」でもプレゼンテーションを行う。 今春、高校入学一期生が卒業したが、その進路は修了論文のテーマとリンクしているケースが多く見られる。例えば、エネルギーや環境問題に興味があって洋上風力発電の可能性に関する論文を執筆した生徒は、九州大学工学部へ。認知症の改善に関する論文を執筆した生徒は、島根大学医学部へ進学した。 将来を考える機会は「探究基礎」以外にも充実している。高校1年を対象に、自分自身のコアを形成している興味・能力・価値観について考えるワークショップを実施。世界で活躍する講師による講演会も年数回開催している。 一方で、大学入試対策もおろそかにはしていない。同じ学校法人が運営する予備校との連携により、放課後にさまざまな学習サポートを実施。また、高校2年からはカリキュラムに予備校連携授業を取り入れ、高校3年になるとその割合を約6割に増やし、実践的な大学入試対策を行っている。 「高校2年までのさまざまな活動で目標をもつ生徒は多く、高校3年は目標達成のためにがんばる時期というのはわかっていて、切り替えて勉強しています」(横井校長) 最近は海外大学への進学を考える生徒も出始めた。従来から力を入れてきた英語4技能の習得やグローバル教育のほか、名門海外大学生と議論を行うイングリッシュキャンプや、海外大学進学セミナーも実施。今後は全員参加の海外短期研修旅行も行う予定だ。 初の卒業生14人は、京都大学や九州大学、鳥取大学など、難関大学を含むさまざまな道に進んだ。横井校長は「期待以上の成長を遂げてくれた」と生徒の努力を称える。 「常識やルールにとらわれない発想のできるクリエイティブ人材は、周囲を巻き込んで社会に大きなうねりを起こしていくでしょう。卒業生が将来、そんな動きの核となって活躍してくれることを期待しています」(横井校長)● 開校から3年余り。地元の理解や生徒募集、教員採用など、まだ課題が少なくないという。しかし、従来の枠組みを打ち破るような新しい学校を目指し、試行錯誤しながら積み上げてきたことは確実に成果をあげている。今後も、外部機関との連携による探究型学習の評価方法の研究など、新しい教育方法の開拓に手を緩めない方針だ。理事長・校長横井司朗先生副校長織田澤博樹先生第一期卒業生による「探究基礎」の振り返り●修了論文テーマ「児童養護施設での虐待を減らすには」幼稚園に行けない子どもに目を向けてみようと思い、テーマはすぐに決まりました。論文の土台というか、骨組みを創る段階が一番大変でした。探究を通して知ったことが大学の児童福祉の授業でもよく取り上げられているので、つながっていると感じます。(兵庫教育大学 学校教育学部 初等教育科1年・藤田悠希さん)●修了論文テーマ「インドにおけるギリシア人の活動とその影響」好きな分野をテーマにしたのは面白かったけど、自分の立てた仮説が当たっていなくてがっかりすることもありました。さらに突き詰めようとすると自分のやりたいこと以外も調べたりしなくてはならなくて…規定の形には仕上げられたけど、もっと周りに研究を進めていくための相談をすればよかったというか、後悔もあります。テーマを切り替える決断をするべきだったかなとも思っています。(京都大学 文学部 人文学科1年・東家 健くん)●修了論文テーマ「市町村合併は本当に幸せを生むのか」市町村合併や学校の統廃合のことを知って、自分がどんな形で地域に関わっていきたいのか、より明確になりました。今はスポーツや社会福祉を通して地元を盛り上げたいと思い、高齢者施設でのボランティア活動も始めています。(鳥取大学 地域学部 地域創造コース1年・入江香菜子さん)修了論文のテーマが進路の方向とリンクキャリア講座や予備校連携で目標達成をサポート512017 OCT. Vol.419

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