キャリアガイダンスVol.419
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いのかが可視化される。  3回目には「大船渡」を中心に置き、特に学びたいことを2つか3つ周りに書く。地域との間にあるキーワードを考え、線で繋ぎながら現実社会の問題と学びたいことを結びつけていく。ポイントは、途中の問いかけ。「学びたいこと」がたくさん挙がった、でもそれは手段では? 本当に学びたいことは何だろう? 何のために? そこでペンの色を変え、気分を変えてもう少し掘り下げてみようと声をかける。 「目の前にある問題は、課題ではありません。現状だけで止まっていることが問題で、目指す未来と現在のギャップが解決すべき課題なんです。問題に捉われるのではなくて、課題を捉えることが必要。この考え方を自1920年創立/普通科/生徒数571人(男子269人、女子302人)/進路状況(2016年度) 大学・短大145人、専門学校19人、就職7人、その他7人左から 高橋知己先生(3学年主任)、宮 学先生(副校長)、菊池広人先生(東北学院大学地域共生推進機構 特任准教授)、梨子田 喬先生(進路指導課・1学年担当)、齊藤芳朋先生(進路指導課・2学年担当)授業は講演会、学年全体でのワークショップ、クラスでのグループワークなど多様な形態をとる市民団体のワークショップに参加し、さんまでまちを元気にするアイデア発表を行った生徒も分のものにできればそれだけでも価値があります」(菊池先生)。このことを意識させるために、仮説をまとめるワークシートには「このテーマの目指すべき未来は」「しかし、このままでは」「高校生である私たちは、この課題に対して」という言葉が並び、空欄を埋める形になっている。 担任は、問いを明確にして調査計画を立て、自分たちなりの考え方を導き出すまでの伴走者だ。調査先への連絡は生徒が行う。担任と生徒の双方に問いを磨くためのルーブリック(図2)を渡し、対話によって深めていく。 「生徒と向き合って、何度も試行錯誤を繰り返す姿を見るのが楽しいですね。これを繰り返せばいずれ課題解決の力がつくと感じています」と齊藤先生。続けて梨子田先生も「生徒が主体的な学習者になることが私たちの目指すべき未来です。推薦・AOの指導を通して実感しているのは、社会体験のなかで思考するトレーニングを重ねた生徒は伸びるということ。社会体験によって勉強が自分ごとになり、学びたいことが芽生えていけば、自動的に走り出す。問いを立てられる生徒はどんな授業でも主体的に学べます」という。 国際関係に興味がある2年生は、「外国人が大船渡に与える影響・大船渡が外国人に与える影響」を探究したいと考えた。アジアからの技能実習生に注目し、企業と実習生の橋渡しをする東北産業振興協同組合で調査を実施。文献調査により日系ブラジル人を多く受け入れた群馬県大泉町にブラジルタウンができ、観光地になっている例を知る。そして、大船渡にベトナムタウンをつくることで観光資源の創出、人手不足の解消による市と企業の活性化、被災地とベトナムが姉妹都市としての新たな関係を作るという可能性を描いた。 「以前は町にいるアジア系の方たちに、失礼ではありますが少し不安な気持ちを抱いていました」と始まるまとめでは、調査によって技能実習生に対する見方が変わったことが綴られ「大船渡学を通して学んだことは、発想・思考の転換で価値生産の場が広がること、そしてその要素は意外とすぐ近くにあるということです」と結ばれている。 「大船渡学」の取り組みは始まったばかり。担当分掌は曖昧で、時間割の隙間をやりくりして授業時間を捻出している。教員が自ら問いを立てながら学校外の識者と協業し、地域とつながり、納得解を生み出すただ中にある。生徒たちの「見えない学力」を見出し、主体的な学習者を育てる挑戦を注視していきたい。新たな知を生み出す要素は足元にある図2 “問い磨き”のルーブリック(評価基準)生徒の立てた問いに対して、さらに深めるための教員の声かけ例を示し生徒と教員で共通理解を促す問いタイプ先生による声かけの例大船渡の福祉の問題について知りたい漠然型具体的に? どんな問題? 福祉の問題って何? それって人に聞かなきゃわからないの?大船渡の福祉の問題について、独居高齢者にどんな課題があるのか知りたい対象明確課題漠然型あなたはどんな課題があると思うの? その課題に取り組んでいるのは誰(どこ)なの? それって本当に人に聞かなきゃわからないの?大船渡の独居高齢者に他者とのつながりを得る機会を提供するために、行政はどんな取り組みをしているのか課題明確型あなたなら何ができる? 本当にそこに行けばわかる? それって本当に人に聞かなきゃわからないの? 何のために知りたいの? なぜ取材先がそこなの?大船渡の独居高齢者が、他者とつながりを得るためにサロン活動をしてみたい。行政でも実施してはどうか課題解決型本当にそこに行けばわかるの? なぜ取材先がそこなの? 何でそれができると思うの? 本当に効果あるの?532017 OCT. Vol.419

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