キャリアガイダンスVol.419
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92017 OCT. Vol.419には、「忙しいけれども、そこにやりがいを感じている」先生が少なくないこともあげられます。中学校のデータになりますが、OECD国際教員指導環境調査(2013年)のデータを再集計すると、日本では週60時間以上働いている先生の70〜75%が「仕事を楽しんでいる」と回答しているのです。 だから働き方改革が唱えられても、「好きでやっているんだから放っておいてくれ」と反発する先生もいれば、「熱心にやっている先生たちに水を差すようなことをしたくない」と考える管理職の先生もいて、結局、掛け声倒れに終わりがちでした。 しかし、長時間労働は本当にこのままでいいのでしょうか? 先生方の長時間労働には、少なくとも四つの弊害があげられます。 一つ目。自己研鑽や授業改善の時間が減ることです。個人レベルでも、教職員全体の研修や教科ごとの研究会など、組織レベルの学習でも。 二つ目。心身ともに疲れて、バーンアウトや過労死、精神疾患や体調不良に見舞われるリスクが高まります(図4参照)。 三つ目。「長く働くのがよい」「仕事のためにはプライベートを犠牲にせざるを得ない」というメッセージを暗に子どもに送ってしまいます。人生の楽しみ方は人それぞれであって、仕事に賭ける生き方があってもよいのですが、大半の先生が長時間労働という現状では、その影響が強くなりかねません。 四つ目。「教師は長時間労働できつい」と知れわたれば、不人気職になり、質が低下します。 自己研鑽の時間が足りない先生が多く、心身が疲弊した先生も大勢いたのでは、教育の質は低下します。きつい仕事と敬遠されて学校に人材が集まらなくなれば、なおのこと教育の質は低下します。いずれも子どものためになりません。 「子どものためになるから」と一生懸命やっているはずが、それによって先生が多忙になっていたのでは、結果的に「子どものためにならない」状況になってしまうのです。 では、働き方改革を掛け声倒れにせず、前に進めるにはどうすればよいのでしょうか。取り組んでいただきたいのは、次の二つのことです。①課題の原因を深掘り・重点化し、 同時にビジョンを明確化する「子どものために」が裏目に出ているその仕事はそもそも何のためにやっているのか他業種との勤務時間の比較図2諸外国における教員の役割図3高校の教員のストレス要因図4週35~42時間週43~59時間週60~69時間週70~79時間週80時間以上60時間以上の割合建設業34.4%52.4%8.5%3.1%1.5%13.1%製造業46.5%45.2%6.1%1.5%0.7%8.3%情報通信業47.3%42.5%6.6%2.4%1.2%10.2%運輸業、郵便業33.5%43.8%13.5%6.2%3.1%22.7%卸売業、小売業44.3%42.3%8.7%3.2%1.5%13.4%金融業、保険業50.8%41.8%5.7%0.8%0.8%7.4%不動産業、物品賃貸業48.0%40.0%8.0%2.7%1.3%12.0%学術研究、専門・技術サービス業46.5%40.3%8.2%3.1%1.9%13.2%宿泊業39.4%45.5%9.1%3.0%3.0%15.2%飲食店33.6%37.9%14.7%8.6%5.2%28.4%医療業55.3%37.2%4.3%2.0%1.2%7.5%社会保険・社会福祉・介護事業63.3%33.2%2.2%0.9%0.4%3.5%国家公務63.0%28.3%4.3%2.2%2.2%8.7%地方公務55.5%33.6%5.5%3.9%1.6%10.9%学校教育40.5%40.5%11.5%4.7%2.7%18.9%その他の教育、学習支援事業51.4%37.1%8.6%2.9%0.0%11.4%週45時間未満週45~59時間週60~69時間週70~79時間週80時間以上約60時間以上の割合小学校教諭0.8%41.4%40.7%14.4%2.7%57.8%中学校教諭0.7%25.2%33.5%24.8%15.8%74.1%業務アメリカイギリス中国シンガポールフランスドイツ日本韓国児童生徒の指導に関わる業務登下校の時間の指導・見守り 欠席児童への連絡朝のホームルーム教材購入の発注・事務処理成績情報管理教材準備(印刷や物品の準備)課題のある児童生徒への個別指導,補習指導体験活動の運営・準備給食・昼食時間の食育休み時間の指導校内清掃指導運動会,文化祭など運動会,文化祭などの運営・準備進路指導・相談健康・保健指導問題行動を起こした児童生徒への指導カウンセリング,心理的なケア授業に含まれないクラブ活動・部活動の指導児童会・生徒会指導教室環境の整理,備品管理学校の運営に関わる業務校内巡視,安全点検国や地方自治体の調査・統計への回答文書の受付・保管予算案の作成・執行施設管理・点検・修繕学納金の徴収教師の出張に関する書類の作成学校広報(ウェブサイト等)児童生徒の転入・転出関係事務外部対応に関わる業務家庭訪問地域行事への協力地域のボランティアとの連絡調整地域住民が参加した運営組織の運営※「労働力調査(2016年度)」の月末1週間の就業時間をもとに作成※業種一覧における「学校教育」は、幼小中高大の教員から事務職員までを含むデータ※「教員勤務実態調査(2016年度)」(週35時間以上勤務の人のみ集計対象)に基づく1週間の学内勤務時間に平均的な自宅持ち帰り時間(週約5時間)を加えた時間出所)総務書「労働力調査(2016年度)」、文部科学省「教員勤務実態調査(2016年度)」をもとに作成※校長や教頭など管理職を除く教員のデータ出所)文部科学省「教職員のメンタルヘルスに関する調査(2012年度)」をもとに作成■常にある ■ときどきある ■あまりない ■まったくない※教員の「担当とされているもの」に〇,「部分的にあるいは一部の教員が担当する場合があるもの」に△,「担当ではないもの」に×を付けている※三か国以上の国で△又は×が選択されている業務をグレー表示している。※全部で40 業務設けたが,「出欠確認」,「授業」,「教材研究」,「体験活動」,「試験問題の作成,採点,評価」,「試験監督」,「避難訓練,学校安全指導」等全ての国で「担当とされているもの」7 項目は掲載していない。出所)国立教育政策研究所「学校組織全体の総合力を高める教職員配置とマネジメントに関する調査研究報告書」国名生徒指導学習指導事務的な仕事部活動指導業務の質同僚との人間関係自身の私的生活校外行事への対応保護者への対応上司との人間関係0%15.3%48.8%48.2%46.4%37.2%45.2%32.0%31.5%33.0%36.2%26.9%31.3%32.5%33.9%39.4%39.1%47.0%48.2%49.9%45.7%54.5%4.6%7.2%7.8%13.0%5.6%12.5%13.6%11.0%12.2%14.0%12.1%12.0%10.4%10.2%8.6%6.7%6.1%6.0%4.6%20%40%60%80%100%教育研究家 妹尾昌俊「働き方改革」で、どこへ向かう?Interview

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