キャリアガイダンスVol.420
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 これまでの教材研究が、単元の内容をいかにわかりやすく教えるか、という教員視点のものであるとしたら、「見方・考え方」を働かせたくなる授業にするためには、生徒視点の教材研究が重要になります。 そこで意識してほしいのが、授業設計における「前向きアプローチ」と「後ろ向きアプローチ」の違いです(図2参照)。後ろ向きアプローチでは、単元の目標から逆算し、「1回目の授業ではここまで」「2回目はここまで」と、後ろに戻りながら授業をデザインします。教員が設定した道のりを段階的にたどることが求められ、到達しているかどうかは折に触れ〇×テストなどで確認することになります。目標に達することが最大の目的なので、生徒はどうしても「覚える」ことに重きを中教審答申における「見方・考え方」(抜粋)図3第5章3.(各教科等の特質に応じた「見方・考え方」)より○ 子供たちは、各教科等における習得・活用・探究という学びの過程において、各教科等で習得した概念(知識)を活用したり、身に付けた思考力を発揮させたりしながら、知識を相互に関連付けてより深く理解したり、情報を精査して考えを形成したり、問題を見いだして解決策を考えたり、思いや考えを基に創造したりすることに向かう。こうした学びを通じて、資質・能力がさらに伸ばされたり、新たな資質・能力が育まれたりしていく。○ その過程においては、“どのような視点で物事を捉え、どのような考え方で思考していくのか”という、物事を捉える視点や考え方も鍛えられていく。こうした視点や考え方には、教科等それぞれの学習の特質が表れるところであり、例えば、略。○ こうした各教科等の特質に応じた物事を捉える視点や考え方が「見方・考え方」であり、各教科等の学習の中で働くだけではなく、大人になって生活していくに当たっても重要な働きをするものとなる。私たちが社会生活の中で、データを見ながら考えたり、アイディアを言葉で表現したりする時には、学校教育を通じて身に付けた「数学的な見方・考え方」や、「言葉による見方・考え方」が働いている。略。○ 前述のとおり、「見方・考え方」には教科等ごとの特質があり、各教科等を学ぶ本質的な意義の中核をなすものとして、教科等の教育と社会をつなぐものである。子供たちが学習や人生において「見方・考え方」を自在に働かせられるようにすることにこそ、教員の専門性が発揮されることが求められる。第7章2.(「深い学び」と「見方・考え方」)より○ 「アクティブ・ラーニング」の視点については、深まりを欠くと表面的な活動に陥ってしまうといった失敗事例も報告されており、「深い学び」の視点は極めて重要である。学びの「深まり」の鍵となるものとして、全ての教科等で整理されているのが、第5章3.において述べた各教科等の特質に応じた「見方・考え方」である。略。○ 「見方・考え方」は、新しい知識・技能を既に持っている知識・技能と結び付けながら社会の中で生きて働くものとして習得したり、思考力・判断力・表現力を豊かなものとしたり、社会や世界にどのように関わるかの視座を形成したりするために重要なものである。既に身に付けた資質・能力の三つの柱によって支えられた「見方・考え方」が、習得・活用・探究という学びの過程の中で働くことを通じて、資質・能力がさらに伸ばされたり、新たな資質・能力が育まれたりし、それによって「見方・考え方」が更に豊かなものになる、という相互の関係にある。※中央教育審議会「幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について」(答申)平成28年12月21日より抜粋。(赤字は編集部で強調)たな疑問が生じ、「深い学び」につながっていく可能性があります。つまり、狭めてから広げていくわけです。 この例は、東京大学CoREFが関わる教員研修でも使われてきたのですが、「それでも❶が良いと思う」という意見があがったことがあります。「生徒の主体性に期待するなら❸の問いは絞りすぎ。自由な発想でその子たちなりの考えを展開してあげたい」ということでした。なるほど、ただ、現実は難しく、❶のやり方では、「腎臓ってどこにあるっけ?」から始まることもあり、「見方・考え方」を働かせた学びまで発展せずに時間切れとなることも多いのです。 これに関連する話題として、「問題発見・解決能力」という語句に、違和感や疑問を抱いている先生がおられるかもしれません。発見が先か、解決が先かという疑問です。仮に、文字通り問題の発見が先だとして、何の準備もない生徒にそれを期待することはなかなか大変なことです。そこに、先程の「狭めてから広げる」という発想が生きてくると思います。つまり、最初に、解決すべき問題を教員が提示し、それを解決していくなかで次の問題や疑問が生じるよう促す方法です。問題発見・解決能力を育むために、必ずしも発見から入る必要はないというのが私の考えです。「前向きアプローチ」と「後ろ向きアプローチ」大切なのは焦点化された「問い」。狭めてから、広げていく益川弘如教授(聖心女子大学)「見方・考え方」を働かせる授業112017 DEC. Vol.420

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