キャリアガイダンスVol.420
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「その体験から『こんな考え方もあるんだ、皆で伝え合うのって面白いな』と、自分とは違う意見をプラスに受け止める力も育んでほしいんですよ」 布村先生はまた、「この場面で思いを伝えるには英語をどう使えばいいだろう?」という見方・考え方が働くようにもしたいという。 その視点をもつことで、特に生徒に実感してほしいのが、英語を流暢に使いこなす力の大切さだ。ここでいう「流暢さ」とは、仮に文法や語彙がおぼつかなくても、フリーズすることなく、相手が理解しやすいようにどんどん言葉をつむいでいける力のこと。 「英語で伝えるときは、論文作成のように文法や語彙の『正確さ』が重要になる場面もあります。ですが、日常の会話や議論では、間違ってもいいから言ってみて、伝わらなければ言い直すほうが、正確さを気にして寡黙になるより『よっぽど伝わる』ことに気付いてほしいのです」 では、どうすればこうした英語の見方・考え方は定着するだろう。 布村先生のコミュニケーション英語の授業は、受け答えすべてを英語で行う。しかし、それだけでは、本気で英語で伝え合うような空間は生まれない。 大事にしているのは、英語を使うのが「楽しい」と思える環境にすることだ。生徒が意見を口にするときは、自分の言葉で語ることを求め、文法や語彙の正確性はあえて問わない。生徒の英語表現が間違っていて不明瞭であれば、先生や周囲のほうが「こういうこと?」と英語で聞き返し、意思疎通に努める。 そんな授業を半年も続けると、生徒は自分の思いを英語で口にすることを怖がらなくなるそうだ。 普段の授業からさまざまな意見が飛び交い、違いを楽しめるようにする工夫もしている。1、2年生には、教科書の内容を別の言葉で表現するretellingを実施、その際に1〜2文で自分の意見も付け足すことを求めている。慣れてきた2年生の後半からは、教科書を読んで思ったことを、自由に言い合う時間も増やしていく。 さらに、各単元の授業の締めには、教科書の内容に沿った「問い」について生徒がペアやグループで議論し、じっくりと考える時間も設けている。 「意見を言い合って考えるのって、本当は楽しいことだと思うのです。今の3年生は思いを伝えたいがために『使えそうな表現を前に見た気がする』と単語帳を懸命にめくり、『あった!』と見つけては嬉しそうに使ったりしています。そうして学んだ語彙は、定着もしやすいですよね」 英語を使うことを楽しめるようになった生徒たちは、より通じ合うために語彙や文法も積極的に学び、受験でも結果を出した。さらに卒業生からは大学や職場で「英語を使えている」という声も届くようになった。布村先生にはそれが何よりも嬉しい。 「どんな世界でもいいから、英語を使わなければいけない場面に遭遇したときに、そのチャンスをつかめる人になってほしいんです。生徒にはいつも言っているんです。英語を使っていろいろな世界を見てきて、私にも教えてね、と。そうして皆から教われば、私の幅も広がりますから」自分の意見(またはグループで話し合ってまとめた意見)を、皆の前で発表するときも、準備した英文を読むのではなく即興で話す。うまい言葉が見つからず、なんとか伝えようと体全体で表現することもしばしば。ペアやグループで意見を出し合って、じっくりと考えたなら、次に、生徒たちはそれぞれに自分の意見を改めて文章にすることにもチャレンジする。文法や語彙の「正確性」は、この段階でフォローしていく。生徒から想定外の答えが返ってきても、布村先生は「なるほど、想像もしてなかった」と面白がる。英語表現がおかしくて意味が取れなければ、類推してこちらから別の英語表現を投げ返し、理解しようと努める。教師が多様な意見を率先して歓迎する4授業デザイン発言するのも意見を聞くのも「楽しい」と思える空間に教科ならではの「見方・考え方」が社会でどう生きる?例)スタンフォード大学の創造的な実践にふれた単元のあとで「最近あなたが行った創造的なことは?」「私たちはなぜあまり違った考えをしない?」「日本の教育の利点と欠点は?」「日本の教育はもっと創造性を促すべき?」という問いについて意見を出し合う。生徒の声「どんな言い方をしても先生が受け入れてくれる、という安心感があるから、自由に意見を言えるんだと思います」などを教科書を読んで懸命に考えるそうだ。「意見がばらける問い」にすることも重視。布村奈緒子先生(英語)「見方・考え方」を働かせる授業172017 DEC. Vol.420

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