キャリアガイダンスVol.420
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れている。2つ目は「カジュアル」で、身近にある課題を扱うことで自分事化を図っている。3つ目は「クール」で、NPOや大学生による出前授業、議員インターンシップなどで魅力的な大人との出会いの場を作り、社会に積極的に関わるのはカッコイイと感じさせている。 年間の授業設計においては4つのステップを設定し、段階的に視野を広げていく。まず、最初のステップでは学校という身近な場を見つめ、校則や生徒総会などを題材に、どうすれば高島高校がより良くなるのか議論する。次の生徒の声ステップでは地域の課題に目を向け、魅力ある街にするための提案を行う。3つ目のステップで国の課題を取り上げ、例えば「安全保障関連法」や「選択的夫婦別姓」をテーマとしたディベートなどを行う。そして最後のステップで、グローバル社会の課題について「SDGs」(持続可能な開発目標)などをテーマに学ぶ。 また、実際の選挙のタイミングに合わせて特別授業も行う。今年度は10月の衆議院総選挙前に、模擬選挙のほか、「ぼくらの政党をつくろう」というグループワークにも取り組んだ(下図)。 「提示されたものから選ぶという模擬選挙では、生徒はあくまで受け身の姿勢です。そこからもう一歩踏み込み、より主体的に社会問題の解決について考える機会として実施しました」 こうした価値判断を扱う授業は、社会の仕組みを知識として教えるだけの授業にはない、怖さと責任感を感じるという。例えば、死刑制度をテーマにその是非についてグループで話し合ったり、専門家の話などを聞いたりするなかで、意見が変わっていく生徒もいるからだ。 だからこそ授業では細心の注意を払う。そのキーワードは「多様性」だ。生徒が多様な考え方に触れられるよう、生徒が自ら調べることを基本とし、こちらから提供する資料には賛否両論が載っているものを採用。外部のさまざまな立場の人の話を聞く機会も設けるようにしている。 「主権者教育では政治的中立性の確保が重視されていますが、教員が大切にすべきは、両極の中間を意味する『中立性』というより、社会を多面的・多角的に捉えるための『多様性』と考えるとしっくりきます。多様な考えにふれながら、自分自身の価値観を築いていってほしいと思います」 授業を進めるなかで社会に対する生徒の意識が変化していくと、大畑先生は手応えを感じている。今年実施された衆議院議員総選挙における全国の18歳投票率(抽出調査)は約51%だったが、高島高校「政治・経済」を選択している有権者の投票率は71%。この数字は、社会の一員としての意識が高まったというひとつの表れだろう。 大畑先生が生徒の将来に期待するのは、学んだことが日常生活のちょっとした行動に生かされることだ。 「公共的なことに関心をもって、例えば、休日に地域でボランティアをしたり、環境に優しい商品やフェアトレード商品を買うような小さなことでも、自分の価値判断に基づいて行動に移せる大人になってくれたら嬉しいです」授業実践の留意点多様な情報を基に価値観を形成していく授業例●地域課題解決学習地域住民インタビューやフィールドワークを通じて、住民の高齢化や空き家の増加などの課題の実態を調査し、魅力ある街にするためのアイデアを考え、区役所職員に提案する。授業例●模擬選挙実際の選挙公報や新聞記事などを用いて候補者・政党の政策を比較し、各自が投票を体験。後日、実際の選挙結果と模擬選挙の結果を比較し、相違点を分析する振り返りの授業も行う。賛同する政党のシートにシールを貼ることで「投票」。関心のある政策分野と、それに対するスタンスが意識できたかを確認。実際の選挙前日に行う模擬選挙につなげる。賛同する政党にシール4まとめ5普段、友達と社会課題について話すことがあまりないので、こうやって授業でみんなと考えを深められるのは、すごく良い経験だなと思います。授業で学んだことを基に周りの大人とも話せるようになるので、それによってもっと知識や考えの幅が広がると思います。社会のことを何もわかっていなかったのですが、今年度「政治・経済」を学び始めて興味がわいてきて、ニュースをよく見るようになりました。社会についてわからないままだったら、選挙にも行こうという気持ちをもてなかったでしょうが、今はちゃんと投票には行きたいという意識に変わりました。3学年・平塚菜々子さん3学年・富坂亮太くん日常で社会課題を話すきっかけに選挙に行きたいと意識が変化金を若年層のために使うという党など、各グループで重点を置く政策はさまざま。教科ならではの「見方・考え方」が社会でどう生きる?大畑方人先生(公民)「見方・考え方」を働かせる授業192017 DEC. Vol.420

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