キャリアガイダンスVol.420
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科学的な視点で考え、判断できる「騙されない人」になってほしいえる楽しさを知ってもらいたい。その思いは、立命館宇治高校で物理を教える今も持ち続けている。 「育てたいのは、情報を正しくインプットして理解し、そこから自ら思索を深め、さらには人に説明や実演ができるような、『自走して学べる人』です」 物理を通じてそれを実践するにあたって、授業では第一に科学・技術に関する情報を正しく理解することを大切にしている。ベースにあるのは自然科学に対する敬意だ。 「自然や宇宙にはとてつもない美しさがある。そして、その神秘に取り組み、明らかにしてきた人間の知恵もまたすばらしい。まずはそうした世界観をつかむことが必要でしょう」 ただし、現在明らかになっている物理の理論は、あくまで「仮説」だという。 「物理の教科書は、先人が取り組んできた仮説検証のプロセスを記した、いわば『歴史書』のようなものです。現在もっとも信頼度が高いと認められているものが記述されているだけで、より信頼性の高い新しい法則や理論が登場すれば、教科書の内容は『間違い』になる可能性もあるのです」 だからこそ、授業では、公式をそのまま正しいものとして暗記し計算させることはしない。対話や議論を交え、教科書に書かれていることが、どのような現象をもとに、どのように導かれ、どのように解釈されたのか、という視点で考えさせている。 「与えられた情報を鵜呑みにするのではなく、疑問をもち批判的に思考・評価・判断できる力をつけてほしいのです」 しかし、物理初級者がいきなり対話や議論で物理の本質をつかむのは難しい。その前段階として、小竹先生は「学びのスキル」の指導に時間をかける。取材・文/藤崎雅子 「考えるってどうしたらいいの?」 塾講師をしていた前職時代、小学生の教え子にそう言われ、小竹知紀先生はショックを受けたという。最近増えていると感じるのは、効率よく結果だけ出そうとし、課題を与えられないと考えられない子どもたち。彼らに自ら考高校時代は文系のほうが得意だったが、理系に対する憧れから理系コースに進み、そのまま大学で地球物理学を専攻。大学院博士課程修了後、学習塾で体験学習部門のリーダーを務めた後、2009年度から立命館宇治中学・高校教員に。学生時代から管弦楽団でオーボエ奏者を務め、現在は吹奏楽部の副指揮者を務める。博士(理学)。実際の授業の流れ1994年設立/普通科/生徒数1114人(男子564人・女子550人)/進路状況(2017年3月卒業生)大学357人・その他2人学校データ教科書の構成要素を概観①物理量や単位の表記法②定義・法則・原理・公式の区別③図表のキャプション表記法④図・日本語・数式・グラフの相互変換を意識すること⑤結論だけでなく、前提条件や 根拠も重要であること⑥脚注もくまなく読むこと❶前回までの学びの整理単元の学習内容についてKP(紙芝居プレゼンテーション)法を使って俯瞰。❷本日のテーマ(問題)に各自取り組む教科書に「事実」として書かれた関係式を具体例で検証したり、記述が欠けている部分の証明を考えたりする問題を提示。教室や廊下のワークスペースなどで、生徒はそれぞれ自由に議論したり、小竹先生に質問したりしながら考える。スマホでホワイトボードの内容を写真に撮ったり、インターネットで調べたりしてもOK。教科書読解指導シーン1本質的な問いに取り組む授業シーン2見方・考え方仮説検証の視点をもって批判的に考える授業デザイン①教科書の読み方の指導からスタート立命館宇治高校 (京都・私立)小竹知紀先生物 理こ  た けと も の り222017 DEC. Vol.420

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