キャリアガイダンスVol.420
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方を働かせて、学びを深められるようにしたい、という。「別の解き方はないかな?」「この解き方と別の解き方では、どちらがどういう点で優れている?」「今回のやり方をほかの問題にも応用できないだろうか?」「解き明かしたことのなかに、気になることは残ってないかな?」 そのように、わかったことをさらに多面的あるいは統合的にみていく、というのも数学ならではの視点。生徒がこの視点まで手にすれば、解き明かしたことを既存の知識と結びつけて物事への理解を一層深められる。また、発想をふくらませてより高度な問題の解決にも挑んでいける。いわば「身につけたものを柔軟に使いこなす力」が高まるのだ。 問題を解くときも、問題を解いたあとも、生徒が主体的に数学的な見方・考え方を働かせるようにしたいなら、日々の授業はどのように展開すればいいだろう。井上先生が意識しているのは、はじめに「目の前に立ちはだかる大きな問題」を提示したうえで、解決に向かうための「スモールステップとなる課題」を設定し、段階を踏みながらゴールに向かうことだ(下のカコミも参照)。 「自分たちは何を解決したいのか、まずは大きな目標を共有しておきたいのです。その際に『これ、いきなりは無理だ』と当惑する気持ちを生徒に味わってほしい、という思いもあります(笑)。でも、手を動かしていったら、見通しが立って、ついには解決することができた。そのときの手ごたえも感じてほしいのです」 そうやって徐々に核心に迫っていくやり方に対しては、生徒から「井上先生の授業はなんでか眠くならない。ちょうどいいときにちょうどいいヒントを出してくれるからかも」という声があがるほど。 そのうえで、問題を解き明かしたプロセスを皆で振り返る。生徒と協働で板書してきたものを「作品」と位置付けて、じっと眺め、井上先生が訥々と感想を口にするのだ。 「すごいねえ、ここはこのアイデアがあったからうまくいったんだねえ。ここは前に習ったのと、ほとんど同じことやっているよね。じゃあ、ここをこうしたらどうなるのかね?」 授業後には、そんな発言に触発された生徒が自身の気になったところをしばしば報告してくれる。井上先生はそうした生徒からの疑問をすべてノートにしたため、自ら解明に挑み、生徒にフィードバックしている。 井上先生がこうした授業で一番育みたいのは、「主体的に問題解決に関わることのできる力」だという。 「どうすればいいか見当もつかない問題に直面するというのは、数学だけでなく、実社会でもよくありますよね。そのときに途方にくれず、数学的な見方・考え方を働かせて『とりあえず何かできないかやってみよう』と前に進めるエネルギーをもってほしいのです。それに加えて、ただ解決すればいいとは思わず、よりよい方法を検討することもできるようになってほしい。社会で生きるそうした力を、数学の授業は伸ばしていけるものだと思っています」ノートやプリントに各自が綴った式や図形については「間違っていても消さないで残しなさい」と井上先生は伝えている。それも作品であり、模範解答と比べるなかで貴重な気づきを得られるからだ。問題を解き明かす過程では、近隣の生徒同士でどんなことを考えたかを話し合うこともする。まずは個別に問題に取り組み、自分の考えをもってからシェアすることを大事にしている。抽象度の高い問題に挑む4数学で表現した作品を振り返る5振り返りで生まれた疑問から知識を統合・発展させる6授業デザイン立ちはだかる問題の核心に皆で手を動かして迫っていく教科ならではの「見方・考え方」が社会でどう生きる?具体的に条件設定をした問題を解くなかでつかんだ式や規則性を活用し、抽象度の高い問題に挑む。個別に問題に挑んだあとで、それを「作品」ととらえ、生徒同士で見せ合う。もしくは、代表の生徒が板書した作品や、井上先生が生徒から聞きながら板書した作品を皆で眺める。振り返りで生じた疑問の解明に挑み、既存知識との融合や、新たな不思議の発見につなげる。大きな課題を段階を踏んで解決できた!異なる解き方や過去の学びとのつながり新たな疑問などを発見理解が深まり探究心も一層強まる中学校で習った「円周角」を使って考えることはできないだろうか。今回の方法と比べてみよう。井上芳文先生(数学)「見方・考え方」を働かせる授業252017 DEC. Vol.420

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