キャリアガイダンスVol.420
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歴史に対する深い理解を通じて人生の選択・判断に生きる思考力を育みたい 歴史的思考力育成の重要性はこれまでも学習指導要領で謳われてきたが、前川先生は教育課程の国際比較資料を見た時、その方向性が海外ではより強調されていると感じたという(図1)。資料では、歴史教育によって育む力について、イギリスであれば「継続と変化」「原因と結果」といった観点を示し、ドイツであれば獲得すべきコンピテンシーを明確にあげるなど、各国のより具体的な状況から、グローバル社会に求められる資質・能力に着目した歴史的思考力の育成重視の傾向が分析されている。 では、歴史的思考力とは何か。「時間軸上にある因果関係をふまえて物事を俯瞰する力」と前川先生は捉える。「もし、そうした力をもって俯瞰できないと、人間は物事の一面だけにとらわれ、単純で短絡的な判断・行動になりがちです。歴史は繰り返すといわれますが、まったく同じ道をたどるループではなく、わずかに上昇しながら繰り返されるスパイラル状の動きです。そこにある差異を見て考えていくことに、私たちの判断・行動のヒントがあるように思います」 歴史的思考力を身に付けるには、単に歴史的事象の因果関係を学ぶだけではなく、そこに「現在の自分との接点」を見出すことが大切だという。 「日本史を学ぶことは、太古の昔から受け継がれた自分のなかにあるDNAとの対話ともいえます。まったく自分と関係のない遠い昔の話ではなく、自分事として捉えて考えられると、歴史の流れに対する理解がより深まるのではないでしょうか」 具体的な授業実践はこうだ。前川先生の授業では、ジグソー法やグループワークなどの手法を活用して、生徒自取材・文/藤崎雅子 歴史を学ぶとは、教科書の流れをひととおり追うことや、重要語句を憶えることだろうか。それも確かに大切だが、明光学園高校で日本史を教える前川修一先生が、より強く意識しているのは「歴史教育の目的である歴史的思考力を育むこと」だ。大学院修士課程を修了後、教員となって23年目。2003年度から明光学園中学・高校教員。進路指導部長。社会科のほか、体験型学習で将来を考える学校設定科目「キャンパスデザイン講座」の授業も担当。15年度、MOOCでの東京大学インタラクティブ・ティーチング受講を機に、自身の授業スタイルを大きく変革。見方・考え方時間軸をもって物事を俯瞰する授業デザイン歴史の知識を基に現代的な問いに取り組む実際の授業の流れ■テーマ:1952年設立/普通科/生徒数372人(女子のみ)/進路状況(2017年3月卒業生)大学66人・短大9人・専門学校6人、就職4人、その他4人学校データ本日の授業の目的「鎌倉幕府の成立と統治機構を理解する」、目標「①源頼朝の政権掌握の課程を説明できる ②朝廷とは別に守護・地頭を設置した理由を説明できる」を提示。肖像画を使ってウォーミングアップ。MQ「武家政権はどのように誕生し、成長したのか?」、FQ「主従関係はどのようなときに生じるのか?」を提示。鎌倉幕府の機構についてKP法による解説を行う。研究者が執筆した一般の歴史概説書から抜粋した文章を読み、「将軍と御家人はどのように関係を結んだのか?」など4つの問いについて考える。グループで話し合って、各問いの答えとなるキーワードを書き出す。導入1解説3個人・グループワーク4明光学園高校 (福岡・私立)前川修一先生日本史本日の問いの提示2鎌倉幕府の成立と統治機構262017 DEC. Vol.420

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