キャリアガイダンスVol.420
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生徒の声身が文献や史料から歴史の流れやそこにある因果関係をつかみとる活動が中心となる。そこで生徒が主体的に取り組みやすいよう、冒頭で授業の目的・目標とともに、この単元で考えてほしい2つの問いを提示する。 その1つは、教科書の内容に沿ったメインクエスチョン(MQ)。もう1つは、教科書の内容を少しずらして普遍化したファンダメンタルクエスチョン(FQ)で、これが歴史と自分とをつなぐカギとなる。 例えば、鎌倉仏教に関する単元のFQは「なぜ人間は宗教を必要とするのか」、執権政治の確立に関する単元のFQは「ルールや決まりごとが必要になるのはどんな時か」といった具合に、単元で学んだ歴史的事象をふまえた現代にも通じるテーマを設定している。 FQの普遍的な問いへといざなう仕掛けとして、授業には現代の話題や史料を積極的に取り入れる。例えば、鎌倉仏教が流行した背景に相次ぐ戦乱や天変地異による飢饉があったことを学ぶ際、当時の状況が描かれた餓鬼草紙の史料とともに、現代のアフリカにおいて飢餓に苦しむ子どもたちの写真も用い、「今も同じことが起こっていますね」と関連づける。生徒は、宗教に救いを求める当時の人々の苦しい状況に対する理解を深めたうえで、FQ「なぜ人間は宗教を必要とするか」に取り組む。 単元のリフレクションの一部として生徒が記入したMQ・FQの解答は、回収して前川先生がすべて目を通す。FQへの解答は簡単ではなく、当初は一行も書けなかった生徒もいるが、多くは数カ月でだいぶ書けるようになるという。 「自分の言葉で文章表現できるということは、知識を頭のなかで統合できるということ。プリントに垣間見える成長に涙が出る思いです。こうしてトレーニングを積むことで、時間軸をもった思考が日常的な習慣となるのではないかと期待しています」 FQに「正解」はないため、意見が正反対に割れたり、ユニークな捉え方がみられたりする。それは次の時間の冒頭にクラス全体で共有し、さらに学びを深めている。 時間軸をもって物事を見る力は、生徒がこの先の人生を歩むうえできっと役に立つ、と前川先生は考えている。 「先人の知恵や歩みがあって今の自分があるということをしっかり振り返ることによって、自分の未来が見えてくるものです。困難にぶつかった時や岐路に立った時、過去もふまえて考えられるかどうかで、判断や行動はだいぶ変わってくるでしょう。自分の人生を俯瞰しながら豊かなものにしていってほしいですね」日本の2009年高等学校学習指導要領と諸外国を比較、諸外国の状況について、「①グローバル社会に求められる資質・能力について着目し、②主要な概念を中心にカリキュラムを構成し、③歴史的手法を習得させ、歴史的思考力を培うことを重視する傾向がある」と分析されている。各グループがあげたキーワードをもとに、前川先生が解説。各自、MQ・FQの解答に取り組む。プリントを使いながら知識を整理。頼朝を中心とした系図を用い権力抗争について解説。授業のまとめとして、後鳥羽上皇と北条政子はどういう人で、承久の乱はどうなったのかをイラストで表現させる。グループワーク結果の確認5本日の問いへの解答6解説7リフレクション8これまで「なぜこうなったの?」「なぜこうしたの?」と疑問に思っていた歴史の背景や流れが、前川先生の授業ではよく理解できます。たまに母に付き合って史跡めぐりをする時、以前はその良さがわからなかったのですが、今は、授業で学んだ歴史の知識が結びついて面白く感じるようになりました。聞いているだけの授業ではないので最初は難しかったですが、今はその時代を深く考えられるようになったかなと感じています。先生が現代と結びつけ授業をしてくださるので、こういう歴史があるからこそ今の時代があるんだと考えさせられます。もしこの人がいなかったら現代は…? などと考えると面白いです。2学年・幸田 華さん2学年・坂西 恵さん史跡めぐりの楽しみ方が変化歴史があるから今があると実感※2時間連続授業教科ならではの「見方・考え方」が社会でどう生きる?歴史教育に関わる教育課程の国際比較図1中央教育審議会 初等中等教育分科会 教育課程部会教育課程企画特別部会(第8回)配布資料より作成国~参考資料アメリカ~1996年ニューヨーク州(New York Learning ST)イギリス~2003年ナショナル・カリキュラム(K3)ドイツ~2004年バーデン=ヴュルデンベルク州動向〇全米教育組織による全米規準を参考に各州が策定〇歴史学習の成果を、実社会で役立つ学びへと転移させるために歴史学の手法を導入、時系列をおさえた学習を重視〇2015新レアプラン発表予定:コンピテンシーの獲得重視、共通コンピテンシーと校種毎の段階的評価規準の明確化取り扱う主要な概念、キーワード〇6つの概念で構成(文化の伝播、移動・移住、多地域帝国、宗教システム、交易・貿易、衝突)、諸地域世界の相互作用を取り扱う〇歴史学の概念(継続と変化、原因と結果、類似、差異と重要性)の理解〇概念の活用〇探究方法の理解〇見方の獲得〇疑問のコンピテンシー〇判断のコンピテンシー〇方法のコンピテンシー学習活動等の特徴〇多様な時間・空間から、自他の地域を相対化 〇政治経済学習と連携 〇将来に向けた実社会に役立つ資質の育成 〇過去の事象の歴史的評価を問う〇地域・国家・ヨーロッパ・世界レベルでの歴史を扱い、多様性を強調 〇主題設定し、概観学習・テーマ学習・深化学習を組み合わせる〇教師が問いを発し、諸資料を活用して、探究的に授業を構成 〇日常的にICTを歴史の授業で活用前川修一先生(日本史)「見方・考え方」を働かせる授業272017 DEC. Vol.420

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