キャリアガイダンスVol.420
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化学の功罪を、世界史の視点から考え、多面的に捉える力を養うクロスカリキュラム授業を展開する「クロスカリキュラム」を導入した。背景として、2期目のSSH指定の際に「千葉市から未来を牽引する科学者を育てる」ことを目標に、専門性と幅広い見識をもった生徒の育成を目指したことがある。また、教科で重複している内容を、より専門的に教える狙いもあった。 化学担当の太田和広先生は、SSH主担当としてクロスカリキュラム全体のマネジメントに取り組むかたわら、自身も世界史の川等健史先生と共にクロスカリキュラムを実施している。両先生は、今の生徒たちをこう見ている。 「本校の生徒は理数科の生徒を中心に好奇心が旺盛です。しかし一方で、おとなしくて素直すぎ、器用だけれど失敗を恐れて一歩踏み出す勇気に欠けているところがあります。例えば化学の実験の際、昔だったらどうなるかわからない結果にワクワクする生徒が多かったのですが、今の生徒は結果がわからないと怖がってやろうとしません」(太田先生) 先に結論を知りたがる生徒に対し、失敗しても分析して次に活かせばいいことを伝えるために、太田先生はあえて失敗するように薬品を入れ違えて渡すこともあるという。「なぜ失敗したのか」を意図的に考えさせる必要があるからだ。また川等先生はこう語る。 「歴史の授業が嫌いな生徒は、ただの暗記科目だと思っています。そうではなく、歴史は人間が行ってきた蓄積であり経験談。歴史を知って現代の自分自身に活かさなければならないことを知ってほしいです」(川等先生) こうした生徒たちに両先生が育成取材・文/長島佳子 撮影/舘野季子 SSHとして今年度から3期目に入った市立千葉高校。特色ある取り組みを目指し、2012年から異なる教科の先生方によるティームティーチングで教員歴33年。SSH主担当、主幹教諭。化学担当。2009年に市立千葉高校着任。初任の進路多様校時代、化学に興味をもたず学ぶ意欲が低い生徒たちに対し、化学は生活や人生に役に立つことを伝えて、「化学を好きになってもらいたい」想いで授業をつくってきた。教員としてのモットーは「失敗してもそれを活かすことが大事」。教員歴27年。世界史・日本史担当。2013年に市立千葉高校着任。野球部で甲子園に行きたくて教員を目指した。いつの時代もどこの国でも歴史は常に繰り返すため、今という時代と比較しながら歴史を生徒に伝えることが必要と語る。「人間として正しいことを行う」が教員としてのモットー。背景と生徒の見取り失敗を恐れる生徒たちに一歩踏み出し考える力を見方・考え方教科横断によって、物事を多面的、立体的に捉える実際の授業の流れ1959年創立/普通科、理数科/生徒数968人(男子495人、女子473人)/進路状況(2017年度実績)大学232人、短大2人、専修5人、大学校2人、就職4人学校データまず太田先生から、窒素と水素からアンモニアを工業合成する発明でノーベル化学賞を受賞した「ハーバー・ボッシュ法」を解説。作物を栽培するための肥料が人工的に作れるようになり、ヨーロッパで深刻であった人口急増問題が解決でき、人類の人口拡大へつながったことを伝えた。川等先生にバトンタッチし、ハーバー・ボッシュ法が開発された1908年ごろのドイツの時代背景について解説。第1次世界大戦前の時代であり、ハーバー・ボッシュ法がその後の戦争で爆薬や毒ガスを作ることにも使われ、ハーバーがそれに携わったこと伝える。日本の火縄銃と肥料の関係にも言及。ハーバー・ボッシュ法が開発された意義を解説ハーバー・ボッシュ法が開発された時代背景を解説市立千葉高校 (千葉・市立)太田和広先生川等健史先生化学世界史太田先生は、ハーバー・ボッシュ法の化学的な合成方法と、それを可能にした触媒を利用するというハーバーの気づきを解説。川等先生は、なぜハーバーが研究成果を戦争に使ったかの理由を生徒に考えさせた。人口拡大に貢献する化学的発明をしたハーバーが、兵器の開発に関わった事実を聞いて、顔つきが変わった生徒たち。282017 DEC. Vol.420

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