キャリアガイダンスVol.420
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生徒の声クロスカリキュラムがあるからこの学校に入学しました。普通の学校では学べないことを経験できて、大人になったときに人と違う知識をもっていた方が強いと思います。もともと化学が好きでしたが、歴史を知って化学の悪い面も知ることができました。クロスカリキュラムの授業は、自分の好きなことの知識が幅広く増えて毎回おもしろいです。化学は好きだけど覚えることが苦手でしたが、今日の授業は記憶に残ります。歴史は嫌いだったけど化学と関連づけられるとおもしろく、世界史にも興味がわきました。クロスカリキュラムは参考書にはない知識を聞けるのがいいです。研究者志望ですがこれからの研究者はクロスした研究が求められると思うので、将来の役に立つと思っています。3学年・小関清香さん3学年・押本夏佳さん3学年・宮地 駿さん3学年・土屋智也さん普通の学校では得られない勉強と経験が体験できる幅広い知識が増えていくクロスカリキュラムが楽しい記憶に残る授業で連携教科にも興味がわく化学と世の中のつながりを先生の知識からもらえるしたいと考えている、教科での「見方・考え方」について聞いた。 「化学の進歩は偶然の発見ではなく、さまざまな見識や条件の積み重ねであることを伝えたいです。そのためには失敗することも必要なのです。また、化学の使い方には人類にとって良い面と、悪いことをもたらす面があることから、すべてのものごとを多面的に捉える力をつけたいです」(太田先生) 「歴史はいつの時代も、どこの国の人間も同じことを繰り返しています。そこから得られるもの、学べるものを見つけ出し、現代に活かしてほしい。だから、常に今という時代と比較しながら授業を行っています」(川等先生) さらに、クロスカリキュラムならではの養える見方や考え方について川等先生は、生徒が平面的に見ていた歴史的事象を立体的に見るようになったと語る。また、太田先生も自身の経験から、教員の引き出しを増やして授業を行うと、生徒が興味をもって教科に臨む姿勢につながるため、自分がもっていない引き出しを他教科の先生に補ってもらうことが有効と考えている。 「初任校の時代、進学する生徒以外は、化学は卒業したら一生関わらないと考えていたため、『どうしたら生徒が化学をおもしろがって好きになってくれるだろう』と考えていました。そのとき、他校の授業研究会に参加して、化学が生活に結びついていることや、生徒が興味を引くような実験を見て、私自身が初めて化学の本質的なおもしろさに気付いたのです。そこから、教科書には出ていない、自分だけの引き出しを増やそうと教材研究を始めました」(太田先生) 授業のつかみは、トリビア的な化学に関わる豆知識で生徒の興味を引く。しかし、授業本来の質を高めるために、大学の一般教養のレベルである、化学の根本理論に触れた授業を行ってきた。化学式を覚えるだけではない授業に生徒は食いついてくる。しかし、授業の質を深めようとすれば、化学に留まらない知識や見識が必要となる。単科教員では答えられない、思いも寄らない質問が生徒から出ることもある。そんなとき、教科横断型の必要性や可能性を太田先生はより感じるという。 市立千葉高校のクロスカリキュラムは、実施科目(主担当)の教員がテーマを決めて、連携教科(副担当)の先生に連携を依頼する。そのうえでお互いにアイデアを出し合い授業を構成。今回取材した授業は、太田先生の化学が実施科目、川等先生の世界史が連携教科だ(下記「実際の授業の流れ」参照)。 講義型の授業ではあるが、教科書にはない授業のため、両先生とも詳細な資料を準備している。太田先生は授業のテーマである「ハーバー・ボッシュ法と毒ガス」について、ハーバー・ボッシュ法が人類にもたらした功績を、人口増加や窒素肥料の生産量のグラフなどを用いて解説。川等先生は、ハーバーがこの方法を開発した時代の背景を、人口増加と農業政策や、政治的に第1次世界大戦の直前だったことについて、資料とともに伝えていた。そしてその歴史的背景から、ハーバーが窒素肥料を工業合成する方法を、兵器の製造に使っていった話に進んだ。ここにクロスカリキュラムの意義が表れる。太田先生が伝えたかった化学がもつ功罪だけでなく、功罪は時代や人によって捉え方が変わることを生徒たちに考えさせることができるのだ。 「単科の世界史の授業であれば、ただ授業のつくり方両教科の「見方・考え方」が相乗効果をもたらす再び太田先生に戻り、ハーバーとは別に、第2次世界大戦中に毒ガスが白血球を減らすことに気付いた軍医が、白血病の治療に使えると思いついたことから抗がん剤が開発された事例を紹介。化学の発明と使い方には、裏と表があり、化学者には常に倫理観が問われることを伝えた。化学がもつ裏表を伝え、何のために化学を学ぶのかを考える太田先生は、化学だけを学んでもわからない事実や倫理観があること、他の教科と結びつけて学ぶことの意義を伝えていた。クロスカリキュラムによって興味の幅が広がり、自分なりの意見や疑問が出た生徒が、授業後に先生に質問に来ることも珍しくない。教科書や参考書にはのっていない授業なので、生徒たちが先生たちのもつ知識を引き出そうとしてくる。次ページにつづく太田和広先生(化学)×川等健史先生(世界史)「見方・考え方」を働かせる授業292017 DEC. Vol.420

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