キャリアガイダンスVol.420
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『第1次大戦で毒ガスをドイツが使用しました』で終わるところを、『ハーバーはユダヤ系ドイツ人で、ドイツ人として認められたいがためにドイツのために毒ガスを作ることをした。これをハーバーの気持ちになって考えてみよう』と厚みのある授業ができるようになりました」(川等先生) こうしたクロスカリキュラムを、同校では現在は普通科も含め全校的な取り組みとして組織的に行っている(図1)。2015年と2016年では全教科を実施科目とし理数教科を連携させる形で、全クラス最低1回の実施を必須としていた。生徒からの評価が高く、成果を上げた取り組みとなったが、理数科教員は空き時間がないほどの負担があったことから、今年から授業数を精査した。 授業をつくる過程で教員たちは、お互いの専門分野についても勉強していかなければ良い横断授業にはならない。その負担に対する抵抗はなかったのだろうか。 「クロスカリキュラムでは、それまで関わりの少なかった他教科の先生と連携することになるため、教員たちが他教科の授業方法から刺激を受けて見識が広がることが多々あります。地学の先生が実施していたアクティブラーニング型授業を見て、数学の先生が同様の取り組みを始めたりしています。もともと教員は知的好奇心が高いので、自身の教養の幅が広がることにむしろ喜んでいる先生が多いです」(太田先生) 何より生徒たちの成長が、教員たちの自信とやる気につながっているという。当初、「クロスカリキュラムは受験科目に関係ない」と言う生徒もいたが、授業のおもしろさから今では双方の教科に対する興味が深まり、教科書には書いていないことを知る喜びを感じている。クロスカリキュラムを通して、社会や生活が、すべての教科のつながりでできていることに気付き始めたのだ。「ここで教えてもらえなかったら、一生知ることができなかったことに出合えた」と語った生徒もいたという。 前ページの「生徒の声」にあるように、クロスカリキュラムで得た知識を使って、これからの時代に求められる科学者になれそうだと、生徒自身が実感している。また、川等先生はこう語る。 「クロスカリキュラムをすることで、例えば化学の歴史的背景を知ることで、その実験が良かったのか悪かったのか、なぜその実験をしたのかが理解できてきます。生徒たちが研究者になったり社会に出たときに、自分の行動の意味を振り返る参考にできると考えています」組織としての取り組み実社会が教科のつながりで成り立つことを生徒が理解見方・考え方を働かせた生徒が社会でどう活躍できそうか図1 クロスカリキュラム授業例実施科目連携教科単元・内容(テーマ)2016年度英語表現Ⅱ生物桜の生態について現代文B物理評論「生物多様性の恩恵」バイオミミクリーについて英語表現Ⅱ地学地球科学に関して英語によるプレゼンテーション服飾手芸化学染色の原理SS国語生物評論「虫愛づる姫君」DNA・ゲノムについて家庭研究化学合成繊維を作る家庭基礎生物人体と食物・栄養世界史A理科ルネサンス~産業革命期の発明や発見について書道Ⅰ化学墨色の工夫・にじみの諸条件国語総合地学土佐日記 月の表記について2017年度化学世界史ハーバー・ボッシュ法と毒ガス数学ⅡB英語Liner programming物理数学行列による連立方程式の解法物理情報Excelと行列による連立方程式の解法化学世界史炭酸ナトリウムとフランス革命国語総合化学錬金術について家庭基礎化学食品添加物について政治経済化学地球環境と、資源・エネルギー問題SS-国語生物生命とは何か理数化学生物アスピリンの薬理作用と酵素反応日々着用する衣服を構成する繊維について、天然繊維に比べてイメージしにくい化学繊維はどう作られているのかを化学的な実験で体感し、その成り立ちと特性を学ばせる授業。家庭化学効果的なにじみを追究する中で『墨と水の最適な比率』、『濃度別のにかわ溶液の添加による墨色の変化』、『気温・湿度の影響』などを科学することで書表現を深める授業。古典文学では「月」の役割が大きいことから、『竹取物語』に出てくる月の満ち欠けの現象表現を科学的側面から解説。感覚的な表現をより身近なものとして理解する授業。書道古典化学地学太田和広先生(化学)×川等健史先生(世界史)「見方・考え方」を働かせる授業302017 DEC. Vol.420

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