キャリアガイダンスVol.420
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知っていたこととも結びつき、「編み直した一つの知識」として自分の中に腹落ちします。そうした本物の知識は、自在に動かせる筋肉のように、さまざまな問題の発見・解決にも活かせるはずです。 なおかつ、そうやって数学的な見方・考え方を働かせる楽しさを味わっていけば、この先も現実の世界や数学のことについて、その視点から捉えて、新たな発見をしていくことができます。つまりは「学び続ける力」も高まるわ初任時代に下町先生が自作した田んぼ算のテキスト。田んぼの面積の求め方から始め、田んぼを使った式の展開、展開とは逆操作の因数分解、さらにその応用と、一つ一つが関連し合いながら高度な数学まで学べる構成になっている。基礎の積み上げを優先する授業は得たものを「使う楽しさ」に欠けるけです。 また、文部科学省としては、こうした見方・考え方を働かせる活動を通して「資質・能力」を育むことを想定しています。文部科学省の資料にある数学を通して育みたい資質・能力を私なりにまとめるなら、次のようになります。①問題解決に向けて数と式、図、表、 グラフを活用し数学的に処理する力②問題解決に向けて、帰納・演繹・類推 など論理的に推論する力。③得られた結果を、批判的に検討し、 体系的に組み立てていく力④見出したことを、既習の知識と 結びつけ概念を広げ、深める力⑤統合的・発展的に考える力⑥日常生活や社会の問題を数学化 する力⑦人と交流し合い、説明したり理解 して評価したりする力⑧粘り強く問題の発見や解決に 取り組む力 今後の授業のひとつの指針としては、粘り強く一人で問題に向き合うこと、あるいは、他者との対話的な活動を取り入れながら、①〜⑥のような資質・能力を高めていければよいと思います。 ただ、授業で実際にそうした活動をするのは難しい、と感じる先生もいることでしょう。 しばしば耳にするのが、このような意見です。 見方・考え方を働かせて課題を「やってみよう」と思えるのは、ベースとなる知識や能力がそれなりにある生徒。知識や能力が足りない生徒は、どこから手をつければいいかわからず動けない。うちの生徒はまだそのレベルである。だから、いずれ主体的な活動に向かえるよう、授業ではまず、講義や練習問題の反復で基礎を積み上げたい、と。 もちろん基礎を鍛えることは大切です。しかし、基礎基本を錦の御旗にしながら、実はただひたすらあぜ道を歩かせるような教え込みの授業を是としてよいのでしょうか。 基礎を指導する過程において「活用する楽しさ」を意識して授業を展開することもできると思います。あるいは「見方・考え方」を働かせる活動を先行させることで、生徒が知識の欠乏に気づき、基礎を身につける方向に自ら向かっていくということもあるはずです。 学びとは、必ずしも一から順に積み重ねていくものではなく、行って戻ってのプロセスを繰り返すなかで、社会で活用されていく知識が生み出されていくのだと思います。見方・考え方を働かせた活動で資質・能力も育成する下町壽男校長(岩手県立花巻北高校)見方・考え方が人生を楽しくする372017 DEC. Vol.420

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