キャリアガイダンスVol.420
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対象者について、年齢や身長・体重、病歴だけでなく、「杖を用いれば15m歩ける」「10分立っていることができる」など現状を具体的に設定。提案には避難所の見取り図を用いて、支援する場所や、必要となる簡易トイレの使用時以外の保管場所も示している。プロジェクト学習公開プレゼンテーション実施後の感想より〇「対象者に不自由なく生活してもらうためにはどうしたらよいか」の具体的提案を考えるのが一番大変でした。具体的提案を思いついても、実際にやってみると全然うまくいかなかったり、対象者にとって本当によい提案なのかわからなくなってしまったりと、なかなか意見がまとまりませんでした。(中略)つらい時もたくさんありましたが、その分、いろいろな力がついたと思いました。(高校1学年・女子)〇公開プレゼンテーションで専攻科1年の先輩の発表を見て、自分たちとの差がよくわかりました。こんなところにも着目しているんだ、など感心することがたくさんありました。自分も3年後には先輩のようなたくさんの人々を、あっと言わせる発表ができるようになりたいです。(高校1学年・女子)● 27日: 生徒は帰宅できず体育館で過ごした。● 28日: 午前9時、さいたま市長から下記の要請   ①看護師・ボランティア不足から、常盤高校学生が避難所を手伝うこと   ②避難所不足により、常盤高校体育館を一時避難所とすること※避難者受け入れは6組10人。1年生が担当。他の生徒、職員は、他の避難所の手伝いに行った。常盤高校には、校長・教頭・事務長と学年職員・生徒・避難してきた人、併せて111人がいる。※受け入れは28日午後1時から2日間。※水、食料はさいたま市より配給済み/電気不通で非常灯のみ。懐中電灯、ペンライト含め30個あり/ガス使用不可で携帯式ガスコンロ2台あり/トイレの洗浄水は貯水槽より使用可能避難所で2日間過ごす「対象者」が最も課題となる1シーンについて解決策を提案するミッション6月27日(火)午後2時 茨城県震源のM8.0の地震発生(さいたま市桜区:震度6強)設定フェーズ月主な活動4月〇 スーパーアドバイザー鈴木敏恵先生の講義〇 各グループが「対象者」(テーマ)を設定<テーマ例>5月〇 地震体験を通じて被災者の気持ちを知る〇 「R10」を活用して対象者を具体化〇 対象者の「ありたい姿」を考え、 現状との差から問題点を探る。 (相互発表、担当教員のコーチング、工程表作成)6月〇 インターネットや 書籍を活用し文献検索〇 「ありたい像」に近づけるための 解決策を考える〇 解決策についてクラス内発表9月〇 プレゼン資料制作〇 クラス内プレゼンテーション〇 2クラス合同プレゼンテーション10月〇 公開プレゼンテーション〇 他者のメッセージ (サンキューカード)を参考に 再構築し、凝縮ポートフォリオ作成導入・準備課題設定・情報収集・解決策検討まとめ・発表再構築組んできたことはあるが、SPH開始当初からスーパーバイザーとしてシンクタンク未来教育ビジョン代表・鈴木敏恵氏の全面的なサポートを得て改革を推進し、ともに授業を開発・実践してきた。 「以前は調べて発表するという『調べ学習』の域を出ることがなかなかできずにいました。本当の意味で『プロジェクト学習』になるよう、課題設定や進め方などを見直しています」(守屋先生) 実践例として、高校1学年の「避難所・環境整備プロジェクト」を紹介しよう。これは、避難所で何らかの困難を抱えている避難者を想定し、その人が最も課題となる1シーンに絞って、環境を整える支援策を提案するものだ。入学直後から約半年間、科目「基礎看護」の授業の一部として、グループで取り組んでいる(図3・4)。 この最大の特徴は、徹底的なリアリティの追求だ。指導・助言者である鈴木氏が提唱する「R(リアル)10」の項目を参考に、支援する対象者はどんな人物でどんな生活を送っているかを詳細に設定。それをもとに避難所のどこでどのように過ごすのがよいかや、支援が必要な時間や回数についてなども細かく検討し、極めて現実的な提案に仕上げている。 例えば、「歩行困難な90代女性に対する排泄補助」をテーマにしたグループは、対象者に「佐藤悦子」という仮名をつけ、身長・体重から日常の運動能力などを細かく想定。その「佐藤さん」のために「簡易トイレを作る」という解決策を発案した。実際に簡易トイレを段ボールで製作し、どのようなサイズが適当か、避難所のどこに設置するか、使用時はどのような配慮が必要か、細部までイメージしながら提案としてまとめた(写真)。 「こうした『〇〇さん』のリアリティがなければ、インターネットからユニバーサルデザインの情報を引っ張ってきて終わりだったかもしれません。現実社会で起こる想定した「〇〇さん」のためを徹底的に追求し解決策を提案図3 避難所・環境整備プロジェクトの概要プロジェクト学習の発表方法は、クラスや学年などで繰り返しプレゼンを行い改善していく。今年度は10月に高校1学年・専攻科1学年が合同でプロジェクト学習の公開プレゼンテーションを実施。図4 避難所・環境整備プロジェクトの流れ対象者の1日の行動を具体的にイメージ。発表した各グループに対するサンキューカード・アドバイスカードをもとに振り返りを行う。発表内容を1枚の模造紙に表現。<テーマ例>・歩行困難な90代女性の排泄補助方法の提案・妊娠8カ月のイスラム教信者30代女性の避難所での安楽な姿勢の提案 …など<R(リアル)10>*①時間 ②住居 ③空間 ④健康・生活⑤家庭・立場 ⑥仕事・職業 ⑦欲求行動⑧生活史 ⑨地域 ⑩経済状態* 『AI時代の教育と評価―意志ある学びをかなえるプロジェクト学習 ポートフォリオ 対話コーチング』 (鈴木敏恵著・教育出版)より542017 DEC. Vol.420

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