キャリアガイダンスVol.420
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ことは、教科書にある事例よりずっと複雑で混沌としています。対象を具体化することによって、より現実的な発想や解決策が生まれると考えています」(髙木邦子先生) 「人」のリアリティの大切さは、ほかの学習においても共通だという。 「関わる人の背景や気持ちを含めていかに具体的にイメージできるかで、発想や行動が変わってきます。何事においても、その視点は大事にしてほしい。身につけた知識や技術を活用して、『人』を真ん中にして考えることが、AI時代に求められる看護の力だと思います」(守屋先生) 改革に取り組み始めて3年が経ち、授業や実習、プロジェクト学習の成果発表などさまざまな場面で、教員は生徒の成長を実感している。 「素直な生徒が多いのですが、最近は物事を批判的に見たり、根拠に目を向けたり、一歩踏み込んで考える様子が見られます」(髙木先生) 「積極的な姿勢が目立つようになったと感じます。プロジェクト発表会では、自分の言葉で意見や感想を述べたり、積極的に質問するようになりました。また、実習先の病院から、カンファレンスでの意見交換が活発になったという声も頂いています」(守屋先生) こうした生徒の成長をどのように測るか、難しいのはその評価方法だ。当初より、各学年終了時に社会で役立つ汎用的な力30項目について生徒の自己評価アンケートを実施してきたが、生徒の主観が反映されるため、変容を的確につかむことが難しい。そこで、昨年度、より客観的に評価するためのルーブリックを作成した(図5)。「生涯学び続ける看護専門職者」として目指す姿について改めて検討し、「協調性」「臨地のイメージ力」など20項目について、5段階の評価基準を設定。専攻科2学年で「5」を目標に置き、各学年終了時に生徒の自己評価と教員による評価を実施して振り返りに生かしていく計画だ。 最後に、進路に関する指導に目を向けてみたい。生徒は看護師志望を前提として入学するが、その目標を卒業まで揺るぎなくもち続けられる生徒は多くはないという。夢に向けてやる気に満ちて入学し、しばらくは目を輝かせながら学校生活を送るが、次第に勉強面で遅れをとってモチベーションが下がったり、看護現場の実態を知って自信をなくしたりして、目標が揺れる生徒も出てくる。そんな時は、担任による面談をはじめ、複数の教員が多面的にフォローする。 「揺れたり悩んだりするのは、真剣に考えているからこそであり、決して悪いことではないと考えています。挫折もあれば達成感もある。多くの生徒は、その繰り返しのなかで揺れながら、看護師への希望を確かなものにして進んでいきます」(高校3学年担任・三津橋佳子先生) また、さまざまな場面で異学年交流を取り入れ、同じ目標をもつ者同士の縦のつながりを大切にしていることも、生徒の進路観に影響しているようだ。 例えば、高校1学年から専攻科1年までが取り組む「地域活動体験」の事前学習では、初めて取り組む高校1年生に、高校2年生が活動の選び方や申し込み方法などをアドバイスする交流会を実施している。同校では入学時から「パーソナルポートフォリオ」を作成しており、数人の縦割りグループに分かれる際、最初に「パーソナルポートフォリオ」を用いて自己紹介を行う。お互いの距離を近づけたうえで、効果的なアドバイスや相談ができるようにしている。 このほかにも、高校2年生が初めて実習を行う際や、高校3年生が専攻科へ進むなどの節目に、1つ上の学年の生徒との交流会を実施している。また、年1回開催するプロジェクト学習発表会には複数学年が関わり、学年を超えて学習成果を共有する。 「下級生は、成長して看護師に着実に近づいている先輩たちの姿に自分の数年後を見て、こうなりたいと意欲を高める。一方の上級生は、後輩の姿から自分のたどってきた道のりを振り返り、成長を実感する。異学年交流は上級生と下級生の双方にとって良い刺激になっているようです」(教頭・有賀弘一先生)● 看護師国家試験において、同校は今春で4年連続の合格100%を達成している。ただし、この数字が同校の教育成果のすべてではない。同校教育の焦点は卒業生が看護師としてどう力を発揮していくかにあり、その成果は長い時間をかけて証明されていくものだからだ。 「本校の生徒には、看護師になって人の役に立ちたいという純粋な志を強く感じます。そんな志をどうやって伸ばしていくか、今後も高校看護科らしさを生かして考えていきたいと考えています」(島村校長)研究推進委員事務局長守屋有紀先生主幹教諭髙木邦子先生校長島村圭一先生研究推進委員副事務局長三津橋佳子先生図5 「SPHで身につく力~実習ルーブリック~」ルーブリックを作成し生徒の変容を客観評価進路に揺れながら先輩の背中を追いかける教頭有あるが賀弘一先生※ダウンロードサイト:リクルート進学総研 >> 発行メディアのご紹介 >> キャリアガイダンス(Vol.420)552017 DEC. Vol.420

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