キャリアガイダンスVol.420
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2016年より生徒は全員、「地域研究部」に所属しており、教員の引率も部活動の範疇でカバーされるようになった。有志の活動として行われている「らじお部」は月に1回、FM岡山の番組に出演。「クニヨシ部」は地元出身の画家、国吉康雄を研究する有志活動。行政・民間・大学が共催する「国吉祭」を共に盛り上げている。また、工業系授業では県の「岡山県産木材ふれあい事業」に協力し、木工作品を製作して地域の学校や公共施設に提供する活動を行っている。17年に岡山で行われた「食育推進全国大会」の活動の一環として、福祉分野の教員、生徒が地域の方と一緒に郷土料理を作ったことがきっかけ。独居高齢者にとって、高校生と一緒に食事をする場があることで、外出の動機や会話をする機会になると気付き、月に1回食堂を地域に開放している。夏季休業中には、教員手作りの流しそうめんを振る舞ったことも。学校と地域の交流ができたことで、地域とのつながりを感じる生徒が増え、福祉の授業への学習意欲が高まっている。岡山市街の中心部にあり、遊歩道の周りに商店が広がる西川。2011年から始まった清掃活動には全校生徒の約1/3が参加している。16年には西川につながる県北の森、17年には流れ込む瀬戸内海での体験学習も有志で行った。山、海、川のつながりを学んだ生徒は「西川水族館」を企画。捕獲した生き物の展示や、水中ライブカメラを使って市民に西川の自然を伝える活動を行っている。西川周辺で開催する歩行者天国イベントで展示を行うことで地域の賑わいづくりにも貢献している。住む生徒も大勢います。でも本校に通う生徒の感覚は都市生活者。そして学校の地元地域とは結びついていませんでした」と振り返る。 市立高校なのだからまずは岡山市を知ることから始めよう。市役所の各課から職員を招き、市政の取り組みについて語ってもらった。内容は商店街の賑わいづくり、自転車先進都市の推進、防災など7つ。生徒にとっては、何気なく生活している日常がただ当たり前にあるのではないことや、自分にもつながる課題があることを知る機会となった。 3年間の流れ(コラム1)は大きく変えないが、2年目からは大学教員からフィールドワークなどについて学ぶ時間も作った。自前主義ではなく、手を借りられるところからは借りる。ま1999年創立/全日制・単位制・総合学科/生徒数478人(男子117人、女子361人)/進路状況(2015年度)大学・短大56人、専門学校54人、就職16人、その他23人左から 下村雅和先生(主幹教諭)上林栄一先生(校長)室貴由輝先生(教頭)た、生徒が関わる地域イベントには会議室を提供する。なぜか。「高大接続改革が迫っています。大きな改革の時期には、今まで教員がやってこなかったことをやらなければいけない、間違いなく現場がもっと大変になるその前に、地域と共に生徒を育てる体制を作りたい」(室先生)からだ。 2年目には駅前や保育所で調査を行うなど、生徒が外に出て行く動きが明らかに増えた。この先輩たちの成果を先行研究として次の学年に引き継げるよう、発表資料は電子データで残すようにした。「それが蓄積すれば地域のミュージアムとしての価値も出てきます」と上林校長は言う。 実は、同校の開校時には、シティキャンパス構想というものがあった。「当時の仮校舎は岡山城や博物館に近い文化中心地区。近くの小学校跡地で体育を、道を挟んだ向かいの美術館でも授業を行っていました。学校という檻はなく、まち全体を学びの場にしようというわけです」(上林校長)。 今年度から学校経営計画にも明文化された「まちなかのふるさと教育」では地域と関わる課外活動も意識して増やしている。例えば、市内の川の豊かさを市民に伝える「西川水族館」、月に一度、学校の食堂を地域の人たちに開放する「らっかんランチ食堂」、部活動(コラム2〜4)などのラボ的な活動を、教員に負担のかからない形で始めている。課外の活動を見て総学でもやりたいという生徒が出てくれば、総学の質も高まるからだ。 「生徒が地域のことをきちんと考えることは、主権者教育の原点でもあり、国際教育で大事なのは自分の地域を知っていることです」と言うのは前任校でも地域連携に取り組んでいた下村雅和主幹教諭。目指すは単なる原点回帰ではない。特色ある教育で目的意識をもった志願者を集め、地域を育てる人を育て、岡山市も元気になる学校づくりだ。今年度は授業改善を担当する「まなプロ推進委員会」とこれからの学校の姿を構想する「総合学科魅力化委員会」を立ち上げた。 再来年度に向けて準備を進めているのは「空きコマチャレンジ」。単位制でどうしてもできる空き時間に、地域の施設で働く。目標と計画を立て、職場を見つけて交渉し、働いて身に付いたことを発表することで学校設定科目の単位認定をするという構想だ。全国に類を見ない改革のこれからに注目していきたい。まち、ひと、学校を高い視点から見た改革コラム4 部活・授業等コラム3 らっかんランチ食堂コラム2 西川水族館572017 DEC. Vol.420

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