キャリアガイダンスVol.420
61/66

ふじおか・しんじ●1975年生まれ 慶應義塾大学大学院修了。数学や生物の大学受験対策を教える塾講師を経て、大学院でキャリア教育の重要性に気付き、研究を開始。小学生から社会人までを対象とした現場指導経験を有し、推薦・AO入試対策、社会人基礎力の指導や教材・プログラム開発を大手大学受験予備校や高校・大学で行う。島根県立隠岐島前高校をはじめとし、行政と協業し教育を通じた地方創生に取り組み、現在、北海道から沖縄までの高校魅力化プロジェクトに参画、高校連携型の公営塾を運営。藤岡慎二北陸大学教授株式会社Prima pinguino代表取締役 フリーライダーを生まないためには、生徒の当事者意識の醸成やチームで行うPBLに関する技術を身に付けさせることが重要です。そして、当事者意識の醸成には生徒の価値観や信念の言語化が必要ですが、そのためにはそもそも大人である親や教員が、自身の価値観や信念を言語化し、生徒に見本を見せる必要があります。(2)生徒の提案内容が毎回  ありきたりで予定調和になる PBLで考える時はかなりの論理力と知識が必要になります。フィールドワークやヒアリング以前に必要なことは論理力と知識、つまり学力なのです。学力なくしてPBLを行うと、確かに一時的には生徒の主体性が発露する効果は見られますが長い目で見れば効果は薄い可能性があります。(3) PBLで学んだことが   生徒の進路につながらない 活動した事実はアリバイとして推薦・AO入試の出願書類に盛り込める効果はあります。しかし、生徒がPBLで突き詰めた課題やテーマが、学問とつながらなければ学部選択や大学選びもできません。 生徒も教員もどの学問が、どのような内容を追求・探究するものか理解しなければなりません。経営学と経済学の違いあるいは文化人類学と民俗学の違いを、先生方は事例も含めて生徒に説明できますか?(4) 評価軸がなく   効果測定が難しい これは難しい問題です。なぜなら先生が個人で作られても意味がないからです。せめて学年、学校で協議をしながら評価軸を作成する必要があります。そのために、まず学年や学校で先生方の意識や理解を統一させることからスタートします。 他の先生方とのコミュニケーションは自身の教育観・学力観の理解から始まります。先生方は同僚の先生たちと教育観・学力観においてどこが違うか説明し、議論することができますか?(5)先生方の意見がまとまらず   バラバラになりがち PBLの効果・意味・背景が置いていかれ、推薦・AO入試のアリバイ作りになるメリットだけが一人歩きしているうちは、まとめるのは難しいでしょう。ただし、そもそも論を語り合えない高校の働き方環境に問題があることも確かです。 他にも多くの苦悩がありますが、一体なぜ、多くの問題があるにもかかわらず、「働き方改革」が叫ばれる高校で、PBLが実施されるのでしょうか。その意味は何なのでしょうか。 「意識改革が必要だって言われたって、時間が…」と思われるでしょう。まさにその通りです。考える、話し合う、学ぶ時間が先生方にはありません。家族との時間を削って土日に学ぶ先生もいるでしょう。しかしこれでは学校現場での差はさらに広がるばかりです。そこで私が伝えたいことは「教育改革と教員の働き方改革はセットである」ということです。余裕がなければ改革は起きません。 私の勤める大学では、教育目標をシンプルに定め、戦略的に時間と人的リソースの選択と集中を実行、教員がもつコマ数を減らしながら、余裕を紡ぎ出し、担当する授業の質を上げています。教員同士が議論できる関係性作りと時間作りに挑戦し、一定の成果を得ています。 たとえば授業数は2〜3割減り、授業の満足度が上がっています。課題となっていた退学率も激減しました。教育改革は時間がかかり、大変なこと。働き方改革とは真逆だと思われがちですが、経験から自信をもって両立できると言えます。教育改革は働き方改革とセットで612017 DEC. Vol.420

元のページ  ../index.html#61

このブックを見る