キャリアガイダンスVol.421
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 福島県立ふたば未来学園高校は、2015年、「未来を創る学校」として開校した総合学科高校だ。同校が位置するのは、福島第一原子力発電所のある双葉郡の南端。東日本大震災時の原発事故によって多くの住民が避難を余儀なくされ、いまだ混乱が続くなか、復興に向けて一歩ずつ前進している地域だ。 かつて双葉郡8町村にあった5つの高校がすべて休校した現在、双葉地区教育長会らの「いかなる状況下でも子どもたちの学びを保障する」との強い意志によって生み出された同校は、郡内唯一の高校となった。郡内の中学校と連携し、さらに19年度には併設中学校の開校が予定されており、地域の子どもたちの未来を拓くという大きな役割を担っている。 同校生徒の4割強は双葉郡出身者だ。原発事故後の避難生活で転校を繰り返し、喪失感から力を発揮できず過ごしてきた生徒や、避難先でいじめにあい不登校になった生徒もいる。一方で、「地域の復興を担いたい」という意欲をもって入学する生徒は多い。 地域も生徒も乗り越えなくてはならない課題を抱える状況をふまえて、同校が目指すのは、自らを変革し、地域を変革し、社会を変革していく、「変革者」の育成だ(図1)。変革のための「自立」「協働」「創造」の3つの理念を柱に、「未来創造型教育」と銘打った新しい教育に取り復興の希望が込められた未来を創る学校組んでいる。丹野純一校長はこう語る。 「これまでの価値観を根本から見直して、新しい生き方や社会の建設を目指す力を子どもたちにつけていくこと。それが福島の子どもたちの未来に繋がると強く感じます。今ある現実を少しずつ変えていくことで、未来を創造していってほしいという思いを込めて、変革者たれと呼びかけています」 開校直後、全教員で議論を行い、育成したい生徒像のイメージを共有した。そこで出た意見をもとに目指す資質・能力のルーブリックを作成(図2)。定期的に生徒自己評価を行って成長状況を確認している。 ルーブリックにあげられているのは、「他者との協働力」「寛容さ」「自分を変える力」など、実社会で活用できる汎用的な資質・能力だ。各教科の学習だけでは育成が難しいものもあるなか、カリキュラム全体での育成を図っている。 その核となるのが、1年次「産業社会と人間(産社)」と2・3年次「総合的な学習の時間(総学)」で展開する、「原子力災害からの復興」を主題とした探究学習のプログラムだ(図3)。地域をしっかり見つめるだけでなく、スーパーグローバルハイスクールとしての海外研修事業と絡めながら世界に視野を広げ、課題解決に向けた実践に取り組む。 一方、各教科の授業も表面的な知識・演劇を通じて課題のとらえ方を学び、グローバルな視点をもって地域の課題解決策を探る3年間の探究学習プログラムは、開校3年目を迎えるふたば未来学園高校の大きな特色です。活動を通じて困難を打ち破って歩んでいこうとする生徒たちの姿から、教育の可能性の大きさがうかがえます。取材・文/藤崎雅子先進校に学ぶキャリア教育の実践課題の本質に迫る実践的な探究を通じ地域の未来を創る「変革者」を育むふたば未来学園高校(福島・県立)演劇 プロジェクト学習 グローバル教育 外部講師 NPO連携ルーブリック 中高連携探究と各教科の学びの往還で汎用的な力を育成482018 FEB. Vol.421

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