キャリアガイダンスVol.421
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プレ発表会(2年次11月)に向けて地域が抱える課題をおさえているか?自分が取り組みたい課題設定が決まっているか?課題解決に向けた調査や実践の報告があるか?新たに見えてきた課題の報告があるか?▼中間発表会(2年次3月)に向けて全国や世界の課題と照らし合わせた考察があるか?課題解決に向けた調査や実践の報告があるか?新たに見えてきた課題の報告があるか?▼発表会(3年次9月)に向けて全国や世界の課題と照らし合わせた考察があるか?課題解決に向けた調査や実践の報告があるか?社会や未来に向けた提言があるか?学んできた内容を自分の進路や生き方に繋げているか?わり、「総学」の各探究班では担当教員たちが異なる専門性を生かして多様な視点で生徒の探究活動を支援している。さらに、今年度から認定NPO法人カタリバとの協働で授業を行うようになり、より多面的な活動支援が可能となった。 しかし、課題へのアプローチには高い専門性が必要な場合も多く、校内だけで対応するのが困難な場合も多い。そこで、大学教授や企業、地域住民など、外部人材の力も借りながら学んでいく。「産社」「総学」の時間帯は、多くの人が来校し、講義を行ったり、生徒と議論したりする。あるいは生徒がどんどん地域に出掛けて学んでくる。 「正解のない課題に対し、教員も手探りで進むしかありません。教員も探究しようという気持ちで、生徒と一緒になって学んでいます」(對馬先生) ただし、同校が目指しているのは単にすばらしい研究発表をすることではないことを、南郷市兵副校長は強調する。 「大学生の研究ではなく、高校生の探究ならではの学びとして重視している点があります。それは、学んできた内容を、自分の進路や生き方、実社会への向き合い方にしっかり繋げることです」 2年間の「総学」で3回ある発表会の前には共通のチェックポイントで振り返りを行い、探究を深める手がかりとしているが、そこには「自分が取り組みたい課題設定が決まっているか」「自分の進路や生き方に繋げているか」といった、自分自身を見つめる項目も設定(図4)。これに沿い、教員も進路との接続を意識して指導を行う。また、3年次で論文作成に入る前には、これまでの自分を踏まえて世界の課題にどう向き合っていくかという短いエッセイを書く。そうして、節目ごとに学校での学びと自分の未来との接続を図っている。 3年間のさまざまな学びのなかで、大きく成長する生徒は多い。海外研修をきっかけに飛躍する生徒、さまざまな経験の積み重ねで少しずつ意識が変わる生徒など、状況は人それぞれだが、丹野校長が特に手ごたえを感じているのはこんな全体傾向だという。 「本校には、数々の苦労や喪失の経験から復興への思いが強い生徒が多く入学します。最初から具体的な夢のある生徒もいますが、漠然とした思いだけで気負っている生徒も少なくありません。それが3年間の学びのなかで自分のやりたいことが明確になり、復興のために自分があるのではなく、自分の夢を実現するフィールドとしてふるさとがあるというふうに変わってきた。生徒の未来を考えるととても嬉しいですね」(丹野校長) この春、同校初の卒業生となる一期生は、探究学習で取り組んだテーマを引き続き学んでいくために大学進学したり、系列で学んだ専門性を生かして就職したり、それぞれが選んだ道を進んでいく。 同校の教育は、どこかにある前例に倣うものではない。新しい挑戦に対する教員の不安は大きく、これで本当にいいのかと悩みながらここまできたという。だからこそ教員も必死に学んできた。月1回程度、授業方法やキャリア教育などをテーマに、大学教授や専門家を講師に招いて「未来研究会」という教員研修を実施。校内で自主的な勉強会を開いたり、講演会や講習会などに出掛けて学んでくる教員も多い。 そして今、育った生徒たちを見て、「我々の方向は間違いではなかったんだと、ようやく確信がもてるようになった」と丹野校長。その一方で「まだまだ不十分」と気を引き締める。「変革者」の育成に向けて、さらなる教育の質の向上を図っていく方針だという。 「方向は間違っていない。次はそれをどれだけ深めていけるかです。今後は、探究課題の本質に迫る深い学びの一層の追求や、対立を乗り越え共存を図る市民性やコミュニケーション能力の育成に力を入れていきたい。それによって未熟なりに物事の本質をとらえ、大人たちが本質から外れた動きがあれば鋭く切り込んでいく。そんな生徒を育てていけたらと考えています」(丹野校長)「方向性は間違いではなかった」生徒の成長が証明原発に頼らない省エネ社会を実現させたい 東日本大震災が発生したのは小学校5年生の時です。避難生活の経験や周囲の状況から「地域の復興に携わりたい」と思い、ふたば未来学園高校に入学しました。 とはいえ、初めは何をしてよいかよくわかりませんでした。それが一気に具体化したのは、環境大国と言われるドイツでの研修で、少ないエネルギーで快適に過ごせるパッシブハウスについて学んでからです。日本でもこういう住まいを取り入れることで、原発に頼らない社会に近づけるのではないかと考え、未来創造探究のテーマに設定しました。ソーラーパネルを製作して屋根の角度と発電量の関係を調べたり、3Dプリンターで建物の模型を作って断熱効果の実験をしたりして、省エネ方法の検討に取り組んできました。 卒業後は福島大学共生システム理工学類へ進学予定です。引き続きさまざまな視点からエネルギーについて学んで、さらに新しいアイデアを生み出し、英語コミュニケーション能力も磨いて世界に発信していけたらと思っています。アカデミック系列3年次遠藤健次くん校長丹野純一先生副校長南郷市兵先生企画研究開発部主任對つしま馬俊晴先生図4 未来創造探究のチェックポイント512018 FEB. Vol.421

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