キャリアガイダンスVol.421
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調理実習は協働作業。3学期のお弁当コンクールでは、最初に3時間かけて、味・栄養・見栄えの良いおかずの構成を各班が考え、必要な材料から調理の手順まで文書にする。そして2コマ連続でお弁当作り。チームで挑むプロジェクトなのだ。でどういう人がどんな思いをしているかを、感じ取れる人になってほしいのです」 だから、1年生が受ける家庭科の授業では、生徒がさまざまな生活シーンを「主体的に体験・思考する」ことを重視している。ある世代の生活を擬似体験したり、結婚や育児について自分ごとで考えたり。その中で生徒たちが、「生活とは他者と関わりながら自分たちで形づくるもの」と感じてくれることを期待している。 例えば4月の授業開き。調理実習で班ごとに味噌汁を作るのだが、永井先生は、豆腐、ネギ、味噌などの材料だけ用意し、作り方は生徒たちに任せるという。生徒を見取って授業をデザインある先生から聞いた悩みです。「社会課題を考える活動には食いつく生徒でも、生活課題を考える活動だと反応が薄い」それは生徒が「生活の主体」になれていないからかもしれません。生徒が生活主体として未来を描く実践をご紹介します。取材・文/松井大助撮影/小林太樹 富山県は持ち家率全国1位で、祖父母との同居世帯が珍しくない地域だ。同県にある砺波高校には、住み良い環境で大勢の大人に見守られて育った生徒が多い。そのうえ生徒たちは、基本、進学希望で、独り立ちはまだ先と思っているので、当面の生活についてはまず心配がない。 その環境は良いことだが、見方を変えれば生活面で「これはどうすればいいのか」「もっとこうできたら」といった問題意識が芽生えにくい、ということだ。 そのままでは社会に出たときに二つの面で困るのでは、と永井先生は考える。 一つは、自分が「生活の主体」になる準備ができていないことだ。 「日常生活で今は親御さんなどに『やってもらっている』ことを、自分が『する』『やってあげる』側に回る時期がいずれ来ます。その転換をいつするかですね」 もう一つは、働くうえでも重要になる「生活者の視点」に欠けることだ。 「保育や介護だけでなく、まちづくりでも建築でも、車のデザインでもロボット開発でも、どんな仕事でも目指すことは『人々の生活を良くする』ことに行き着くと思うんです。例えば本校のOBには、アザラシ型ロボット『パロ』を開発された方がいます。お年寄りや自閉症の子のセラピーに効果をあげ、生活を豊かにしているロボットです。これからの社会の担い手となる生徒たちには、日々の生活の中砺となみ波高校(富山・県立)「やってもらっている」生徒に生活に対する問題意識を育む他者との関わりの中でこれからの生活を考える大学院卒業後、高校教師に。北陸家庭科授業実践研究会で、思考を深める授業の実践に取り組む。同研究会の編著に『考えるっておもしろい 家庭科でつなぐ子どもの思考』など。2016年に刊行された県の副教材『とやまの高校生 ライフプランガイド』にも編集委員として参加。家庭科永井敏美先生582018 FEB. Vol.421

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