キャリアガイダンスVol.421
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■ 砺波高校(富山・県立)保育実習では子どもの遊び相手を務める。高齢者疑似体験ではゴーグルやヘッドフォン、手袋をして見えづらい・聞きづらい・つかみづらい状態を体験する。結婚や育児について話し合う授業では、付箋とホワイトボードを活用。班ごとに話し合ってボードにまとめたことを、他の班にも発表してシェアをしていく。「味噌汁の味や、豆腐の切り方は、各家庭で違います。そこを任せて『今日は味噌汁の作り方より、生活背景が違う人と一緒に活動することを学んで』と伝えるんです。『同じ地区の私たちでもこれだけ違うのだから、グローバルと言われるけれど、生活習慣や文化が違う人と集まったらもっとだよね』とも投げかけます」 生徒は考える。今後誰かと生活を共にするなら、どう折り合いをつけようか? 座学の授業では、国内のフードロスや、世界の飢餓状況を示したハンガーマップについても学び、自分の食生活を、地域や世界とも結び付けて考えていく。 夏から秋には体験学習が目白押しだ。保育実習や、乳児と親を招いてのふれあい体験。子育ての楽しさと大変さの両面をかいま見る。高齢者疑似体験や車椅子体験。祖父母への接し方が変わったり、それまで見過ごしていた駅前のスロープに自然に目が行くようになるそうだ。 2学期以降は将来の生き方についても考える。例えば「結婚」「親になること」「働くこと」について各1時間。使う教材は、永井先生も制作に携わった『とやまの高校生 ライフプランガイド』だ。 その授業では、まずはグループの話し合いで生徒の思いを引き出し、そのあとで思考を揺さぶるトピックを紹介する。未婚率の増加、赤ちゃんポスト、ベーシックインカム、障害のある人が生き生きと働く会社。そのうえで改めて問いかける。 「結婚への理想と現実のギャップを解消するにはどうすればいい?」 「どんな価値意識をもって働きたい?」 「40人いれば40通りの答えがあっていい」と永井先生がくり返しているので、意見を出し合うときも生徒はリラックスしていて楽しそう。でも、男子と女子で結婚や育児の考えの違いが見えてくるなど、生徒はさまざまな気づきを得ていく。 「生き方について、教師は生徒に正解を与えられません。自分の人生をどうしたいのか。まわりの人の生活もより良くしたいならどうすればいいか。そうしたことを『他者と関わりながら、自分で考えていく力』を育みたいと思っています」 1年の締めくくりはお弁当コンクール。生徒がチームで献立を考え、お弁当を作り、先生たちが試食して1位や2位を決める。味・栄養・見栄えをどう両立させるか考える課題解決学習であり、「毎日お弁当を用意してくれている保護者の思いに気付く機会」でもあるそうだ。 実は授業でもう一つ意識していることがある。生活シーンを体験・思考することを通して「やってみようという意欲」や「知らなかった自分の発見」をもたらし、生徒の自己肯定感を高めることだ。 例えば調理実習では、リンゴの皮むきや玉ねぎのみじん切りなど、毎回「全員がやる」と指示される課題がある。挑戦できたという実感を得られるようにだ。 また、毎授業、最後には「学んだこと」や「考えたこと」を自由に記述することを生徒に求め、期末試験でも「この学期で何を学んだか」を書く問題を出す。生徒が手にしたものを自覚できるように。 それ以上に自己肯定感に影響するのは「他者との関わり」そのものだという。 「保育園の子から『また来てね!』と言われたときの表情とか、同じクラスでも普段は話さない子と協力できたときの笑顔とか。生徒の中から、『今までの自分じゃない自分』が出てくるんですよ」 なぜ自己肯定感を高めたいのか。 多感な高校生は、自分に否定的になることがあり、ともすれば自分を見失うからだ。例えば進学校である砺波高校の場合、受験にも真剣だからこそ、定期試験や模試の成績が悪いと、生徒によっては必要以上に自分を過小評価してしまう。 「もちろん試験もがんばってほしいけれど、他にもモノサシがあることを知ってほしいんです。『自分をありのままに受け入れる』といった自己肯定感の核となるものができれば、これからの人生で学ぶべきことは、私が教えなくても、生徒が自分でつかみとっていきますから」授業の最後には「学んだこと」「考えたこと」を生徒が自由に書く。永井先生はその記述を「自分の授業への評価」ととらえ、授業を見直す参考にもしている。自分を見失いやすい10代に生活の主体になれる自信を教育目標に「地域から信頼、期待され、地域の伝統・文化を理解し、継承できる人材を育てる」「職業人として生きるために必要な知識や技能を身に付けた人材を育てる」ことなどを掲げる。国公立大学現役合格率が高い。富山県教育委員会より2016年度ICT教育モデル校に指定され、普通教室すべてに無線LANアクセスポイント・プロジェクタ・スクリーンを配備し、授業でタブレットも使うなど、ICTの活用も推進中。普通科/1908年創立生徒数(2017年度) 598人(男子319人・女子279人)進路状況(2016年度実績)大学159人・短大4人・専門学校6人・その他(次年度受験者)19人〒939-1385 富山県砺波市東幸町3-36 0763-32-2447 http://www.tonami-h.tym.ed.jp/592018 FEB. Vol.421

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