キャリアガイダンスVol.421 別冊
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4Vol.421 別冊付録改善実行提案検討改善検討情報共有調査分析情報共有第3サイクル第2サイクル第1サイクル現状調査辞令交付中間報告課題発見提案報告り深く掘り下げていく知識へと生徒たちは誘われるのである。【富士市立高校】繰り返すことでスパイラルに問いと探究を高度化していく もう一つの例を紹介しよう。静岡県・富士市立高等学校も2011年の開校時から探究活動を基軸に据えた教育を行っている。同校の探究活動は「究タイム」と呼ばれ、毎週2時間のボリュームで「序」「論」「活」「究」「夢」という5段階で、スパイラルに1年前期から3年前期まで高度化していく。 1年前期の「序」では、ブレインストーミング、KJ法などを使って課題を見つけ、情報を集め、まとめて表現するための基本的な方法を学ぶ。この段階では、慣れることが重視されている。 1年後期の「論」ではディベートにチームで取り組むことで、多角的な見方や論理的な考え方を学び、コミュニケーション力や協働力を高めることを目指す。 2年前期の「活」では、地元の富士市の抱えている課題に向き合い、解決策を検討しプレゼンテーションする。ある年のそれは「市役所プラン」と名づけられ、クラスごとに市役所の健康福祉課、環境課、防災危機管理課と提携して、地域課題を見つけて解決することに取り組んだ。 ポイントはこの「市役所プラン」が3サイクルで取り組まれていることだ(図3)。 最初のサイクルでは各部署の計画などを読み込んで興味のある課題を見つけ、次に富士市の取り組みをウェブサイトや市の計画から情報収集・分析し課題を絞る。そしてこの段階で、調査した情報とグループで設定した課題とを報告・発表する。 2番目のサイクルでは、最初のサイクルで設定した課題を修正し、設定し直すことから始まる。次に、市職員の話や体験学習で情報収集して取り組むべき課題を検討し、中間発表会で報告する。 そして3番目のサイクルで、もう一度課題を修正して設定し直し、さらに独自の調査を計画する。それに基づき自分たちでさまざまな場所に出かけていって話を聞き、解決策の根拠となる情報を収集。最後に探究学習発表会で、これまでの活動で考え出した解決策を提案する。 このように3サイクルにすることで、各サイクルの最後に他のグループの発表を聞き、自分たちのグループよりも進んでいたり優れていたりする内容を知ると、生徒たちは自分たちの内容をさらに良いものにしたいと意欲的になるのである。 そしてさらに2年後期の「究」では、これまでに身につけた力を活用して、自分自身が設定したテーマを研究することで社会問題や自分の将来についての視野を広げる。 3年前期の「夢」では、3年間の学習を振り返り、そこでの気づきや自らの成長を自覚し、将来とのつながりを意識したスピーチ原稿の作成を通して進路意識を高め、後輩たちに伝えていくのである。 こうした取り組みが、生徒たちの意識の変化に結びついていることは、アンケート調査からも読み取ることができる。 例えば、学習方法に関することでは「何かわからないことや困ったことがあったときに、どこに問題があるかを考えることができる」が全国平均80.6%に対して同校生徒は88.6%と高い。同様に、「異なる立場や考え方の良いところを見つけることができる」が全国82.5%に対して91.6%である。「自分は地域や社会から必要とされていると思う」が全国49.1%に対して63.7%、「学修や生活での気づきを自らの改善につなげている」が全国69.4%に対して82.3%と、いずれも高い数値を示している。さらに「失敗しても、もう一度挑戦したり、最後までやり遂げたりしようとする」が全国平均77.5%に対して、90.3%となっているのである。生徒の内発的動機を引き出し自ら問いを立てられる主体へ 京都市立堀川高校と富士市立高校の探究活動の事例から読み取れることは多様にあるが、そのなかでも次のことは重要である。生徒が自ら問いを立てるということは、単に自ら関心のあることに自由に取り組ませればいい、ということではない。堀川高校にせよ富士市立高校にせよ、興味を問いに転換させること、問いに取り組むうえでの専門知識の学びなどを組み込んだプロセスを入念に設計することで、生徒自らが問いを立てて探究活動に取り組むことを可能にしているのである。 加えて、両校の取り組みに共通していることは、生徒の内発的動機を引き出している点だ。堀川高校でいえば生徒による探究基礎委員会の活動が、富士市立高校でいえば地域に必要とされている実感がもたらす自己肯定感が、そのことを示しているといえるだろう。 探究活動で壁にぶつかっている高校や先生方にとって、大きなヒントとなるのではないだろうか。図3 「市役所プラン」単元の流れ市職員から現状報告辞令交付計画を読む調査状況の中間報告体験学習で課題発見課題解決策の提案出典:『日本生活科・総合的学習教育学会 学会誌 2015年発行「総合的な学習で育まれる学力とカリキュラム(2)中学・高校編」』

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