キャリアガイダンスVol.421 別冊
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6Vol.421 別冊付録豊かな生活を安穏と享受しており、生活から矛盾を感じて問題意識を研ぎ澄ませていくというケースは少ない。しかし、実はその安穏と過ごせる豊かな生活の底には、どんな問題が潜んでいるのか。それを発見する、というのがこのプログラムの核心を構成している。 図1で言えば、「観察する」⇔「問題意識をもつ」を往還させるところが最初のポイントだ。食事の写真から何を読み取れるか 具体的なプログラムの中身に入ろう。 次の2枚の食卓の写真から、あなたはどんなことが読み取れるだろうか。架空の事例として、違和感を覚えるような食卓写真をケース用として用意したものである。生徒たちは「生活科学研究所」の研究員になったつもりで、同様の写真10枚ほどをグループで見て、その背景にどのような問題がありそうかを付箋に書き出していく。例えば朝食であれば、「野菜がない」「朝からコンビニで買ってきたものだけ」「テーブルではなく勉強机で食べている」「一人で食べている」などがすぐに思いつく。 夕食であれば、「コンビニで買ったものが並んでいるだけ」「手作りのものがない」「野菜が少ない」などがすぐに思いつくかもしれない。 そして、他のグループの付箋を見て回ってヒントを得て、付箋を増やしていく。 さらに、グループのメンバーは「栄養学」「環境学」「教育学」の専門家に分かれ、それぞれの専門分野の内容について書かれた「情報シート」を読み、その視点から問題点や疑問点を付箋に書き出していく。 そこでは表面的な疑問から踏み込んで「加工食品ばかりで栄養の偏りや添加物が懸念される」「プラスチックなどのゴミが一食当たり大量に出て、環境負荷が大きい」「家族のコミュニケーションが成立しているのか」などといったより抽象度の高い疑問が生まれてくる。それらの問題点をグループ内で討議して、考えをまとめて発表し、最後に振り返りを行うのである。知識と視点があればもっと深いことが見えてくる 実は、彼ら高校生も実生活において、この写真と同じような食事をしていたりする。写真を単に即自的に眺めただけでは疑問も生じない。一歩引いて見ることで見えてくることがあることに気づく。しかし、それはまだ思い付きの段階である。次の段階で「情報シート」が渡され、それを読むことで専門知識があるともっと深く問題が見えることを経験する。そうすると付箋の数も劇的に増える。それは生徒たちが視点を手に入れたからである。 そして、この「視点が手に入ると、もっと深く世の中のことが見えてくる」という感覚を生徒たちが経験することが重要なのだ。そうなると、「もっとニュースを見よう」「新聞を読もう」「今までと違うジャンルの本を読んでみよう」という知的欲求が生まれるからだ。そうした知的欲求をもち、問題意識をもって考え行動できるようになれば、探究学習において、自ずと質の高い問いを自分で立てることができるようになる。 そして、これは「いい大学に入れる」「いい就職につながる」というような生徒たちへの外発的動機付けとは異なり、生徒たちの「もっと知りたい」「もっと深く考えたい」という内発的動機付けへと結びつくのである。ここまでが、第1回の「問題発見編」だ。 第2回の「問題解決編」では、ある仕事と育児との間で揺れるワーキングマザーが主人公のビデオを見て、第1回と同様に問題発見をするとともに、今回はその先の解決までを考える。 問題の解決と言っても、前提となる知識が浅ければ、安易なレベルに終始してしまう。「短い時間で簡単に料理できるものを開発する」といった発想ではなく、主人公のワーキングマザーが抱える、「会社では信頼されるような仕事がしたい」「子どもにはちゃんとした料理を食べさせたい」「保育園の送り迎えは自分だと決まっているのか」等々のジレンマにまで踏み込み、思考や仮説の抽象度を上げていくことが課題である。そのために、多様な着眼点、複眼的な解釈を促しつつ、では一体何が最も本質的な問題なのかを掘り下げていくように「問題解決編」は設計されているのである。 「問題解決編では、生徒の知識前提経営学部齊藤弘通准教授夕食の写真朝食の写真他グループを見て回る様子付箋に書き出した様子

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