キャリアガイダンスVol.422
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 悩みや葛藤を抱えているのも一緒。学ぶとか、成長するとか、およそ人の感情が絡むことに関しては、企業も学校もさして変わらないというのが私の結論です。ディテール(詳細)はもちろんカスタマイズが必要です。しかし、コアの部分は共通。次項で、いくつか企業研修の例をあげていますが、そうした思いがあることをくんでいただければありがたいです。 学校づくりのための研修には、大きく「個人」を通じたアプローチと「組織」を通じたアプローチがあり、前者の代表として、リーダーの育成を目指した研修があります。一般に、リーダーシップは意思決定の量と質で決まるため、その育成には、実際にリーダーの役割を担わせることが一番ですが、必ずしも機会に恵まれるわけではありません。 そこで、企業研修でよく行われているのがケースメソッドという仮想体験です。これは、実際の企業活動で起きた状況を、さまざまな情報とともに文章で詳しく再現した「ケース」を読み込み、ファシリテーターの下、当事者になり切って議論し、意思決定に至るプロセスを疑似的に体験するマネジメントトレーニングです。 「マナビラボ」プロジェクトでは、教員向けにアレンジしたケースを、作成し、研修に取り入れています。最近実施したのは、「ALの推進派と反対派に割れている高校において、ミドルリーダーとして何をするべきか」を考える研修。選択肢を前に、自分たちならどうするか議論し、その後どういう経過をたどったか具体的に予測していくのですが、その際、かなり踏み込んで考えることになります。例えば、研究授業を同僚に依頼する場合、「力量はあるけれどALに反対している年上の先生」なのか、「力はないのに、新しいことに前向きな若手」に頼むのかなど。現実の学校でも、職員室の空気やパワーバランスで物事が決まることは多いですから、こうした訓練を積むことは有効です。 そもそも組織とは多様な立場や考えをもつ人々の集合体であり、賛否両論はつきもの。少々のコンフリクト(対立)に動じないメンタルが大切です。対立や葛藤が生じるのは変化が起き始めている証。腹をくくって向き合い、そのうえで決断する。いくら多様と言っても「みんな違ってみんな良い」では何も始まりません。どこかで決断を下し、決めたなら「悪いけれど従ってもらうよ」と言いきるくらいの覚悟が必要でしょう。 次に、「組織」を通じたアプローチですが、学校が機能するために組織はどう動けばいいか。最も知られている手法としてPDCAサイクルがありますが、さすがに食傷気味かもしれません。そこで参考にしてほしいのがポジティブ心理学をベースにした4Dサイクルです。4Dとは、Discovery, Dream,Design,Destinyの頭文字。「あなたの組織にはどんな強みがありますか?」「その強みや潜在力を生かしたら、どんなことができそうですか?」「そのためには〜」といった問いに答えていくことで、組織の強みを生かすアプローチです。ケースメソッドでリーダーの役割を疑似体験学校づくりに対する組織からのアプローチ個人が頑張るモードから、組織で頑張るモードへ左から、『働く大人のための「学び」の教科書』(かんき出版)、『「事業を創る人」の大研究』(クロスメディア・パブリッシング)、『教師の学びを科学する』(北大路書房)、『アクティブ・ラーナーを育てる高校』(学事出版)など、著書・共著書多数。142018 MAY Vol.422

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