キャリアガイダンスVol.422
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 PDCAは、計画実現のうえでの障壁に目を向け、課題を解決していくことに適していますが、課題に目がいくあまり、強みを見過ごしてしまうことも。前向きなビジョンを新たに形成する場面では4Dサイクルの方が向いているかもしれません。 もう一つ、参考にしてほしいデータがあります。田中聡氏との共著『「事業を創る人」の大研究』でも述べましたが、企業において新規事業が成功するかどうかは、アイデアや構想の良し悪し以上に、社内の支援が得られるかどうかが鍵を握っているということ。新規事業担当者500人対象の独自調査でも、苦労した経験として、「既存事業から必要な支援・協力を得ること」をあげた人が最多でした。新規事業というのは、多くの組織において歓迎されないもの。そのため、どう政治を行使するかが実は重要なのです。学校組織にも当てはまるのではないでしょうか。 昨今、教育界ではカリキュラム・マネジメントという言葉が使われるようになりました。正直、漠然としすぎてピンとこないのですが、私の専門分野である組織論、組織学習論で研究されてきたこととも被り、そう難しい話ではないと思っています。 私なりの捉えでは、「自校の現状を見える化して、目標や計画を立て、リソースを確保しながら、教育改善やその評価を、組織的にくるくる回していく」ということ。「見える化」といっても、数値データである必要はなく、せめて学校内部で生じていることを、他者に説明できるように。少なくとも、勘と経験に頼った、行きあたりばったりのマネジメントはやめよう、ということなのだと思います。 企業と学校は変わらないと述べましたが、教員の特殊性として、生徒に対する「罪悪感」があるように感じています。教育は際限のない仕事であり、しかも効果が見えにくい。そのため、「ここで手を抜いては申し訳ない」という気持ちになるのでしょう。 そうした心理は、横浜市教育委員会との共同研究で実施している「教員の働き方改革」の調査にも表れています。「長時間労働が是正されたら空いた時間で何をしますか?」という設問に、少なくない教員が「仕事をする」と回答していますし、長時間労働を是正することで、教育の質が落ちるのではないか、というような罪悪感を感じる、と回答しているのです。この場合の仕事とは、教材準備など生徒に先生がいきいき働く先に、子どもたちのハッピーがある直接関わる業務を指しているのでしょうが、それにしても不思議な質問と回答のセットです。「仕事をしなくなったら、仕事をする」と回答しているのですよ。 別の調査でも明らかですが、先生方の多くは管理職になりたいわけでも、学校改革に携わりたいわけでもありません。ただただ、子どもたちの成長に携わりたいだけ。そうした純粋な気持ちは尊敬すべきものです。 ここで私自身、懺悔しなければなりません。ALにしても、その他の取り組みにしても、良かれと思い、研究者として声をあげてきたわけですが、「これが必要、こうあるべき」という思いが先行しすぎ、「現実的にどう現場に落としこむか」というリソースの勘案を疎かにしていたと思います。 私は、思考が足りていませんでした。可処分時間がほとんどないなか、頑張っている先生方には頭が下がります。同時に、私は現場に必要な資源をくみした主張をしていきたいです。当然ですが、教育現場にお金を落とすのは、国や行政がなすべき仕事。私どもが行う「見える化」が、行政が利用できるエビデンスになることを願っています。 ALもPBLも、学びに満ちた組織から生まれるもの。先生方がアクティブに学ぶ環境の確保がAL普及の大前提です。教員の学びが起こらずして生徒の学びは生まれません。まずは先生方が、いきいきと学び、働ける環境を整えること。そうやって先生方がハッピーになることで、子どもたちもハッピーになる。それこそ学校づくりの先にある明るい未来、希望だと思います。理念とリソースがセットになってはじめて学校は動きだす個人として、組織として 学校改革にどう取り組む?組織開発の知見から 中原 淳152018 MAY Vol.422

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