キャリアガイダンスVol.422
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取材・文/松井大助 大阪府立箕面高校は、英語の活動で注目されており、一見、語学に力を入れてきたように思える。実際はそうではない。校長だった日野田直彦先生をはじめ皆で目指したことは別にある。 「今の高校生は、大半が将来まだ存在しない仕事に就くと予想されています。2050年の人口やGDPの推計によれば、現時点で上位の中国やインドのほか、ナイジェリアやインドネシアも躍進し、世界情勢も様変わりします。そうした変化の激しい時代のなかで、多様な人と勇気をもってチームを組み、イノベーションを起こし、世界に貢献できる人になってほしい、と思っています」(日野田先生) そのために生徒にまず必要なのは「自信」だと首席の池谷陽平先生は思っている。 「本校は偏差値的に地域4番手くらいで、能力はあるのに自信がない生徒が多いんです。外でも一歩踏み出せる勇気をもてるといいのですが」 その生徒たちに激変する世界でやっていける自信をどうすれば育めるか。 土台となるのは「生徒がオーナーシップをもつこと」だとSET(欄外※1参照)の髙木草太先生は考える。勉強も進路選択もやらされるのではなく自分事で取り組む姿勢。 「家族や先生から促されたことでも最後は『自分で決めた』という自覚をもって物事に取り組んでほしいのです。そして『自分で決めた』ことに取り組むための能力を培うなかで、自信もつけてほしい。その自覚と自信さえあれば、何でも挑戦できると思うのです」 オーナーシップを生徒がもてるよう、教員にできることは何か。日野田先生が思うのは、第一に「マインドセットを変えること」、次いで「必要なスキルセットを伸ばすこと」だという。 「20世紀はFixed Mindset(固定的な思考態度)が評価され、教育でも忠実な人を育てようとしましたが、21世紀はGrowth Mindset(しなやかな思考態度)が大事と言われています。失敗を恐れずやってみようとするマインドや、心を開いて異論も受け止めるオープンマインドを生徒に育んでいきたいです。そのうえで、自分たちの課題を解決するためのスキル、思考したり議論したりするためのスキルも伸ばしていきたいですね」 マインドセットとスキルセットの必要性は、英語教育に関心をもつ先生たちも感じていたことだった。日本人の多くは、なぜ英語を話せないのか。それは語学力というより、マインドとスキルの問題ではないか。要は、英語にとどまらない問題なのだ。進路指導部長の寺下公章先生はこう表現する。 「私は、グローバル人材というのは、自分の意見をちゃんと相手に伝えられる人のことだと思うんですよ」「英語が話せない」裏にあるマインドやスキルの問題1963年創立/普通科・グローバル科生徒数1195人(男子548人・女子647人)/進路状況(2018年3月実績)大学294人・短大5人・専門学校17人・就職0人・その他76人[学校データ]英語“で”学ぶ活動を起点に改革変化の激しい世界で通用するマインド・スキル・自信を育む改革のための工夫1意見が割れて頓挫しないよう想いを一つにして働ける環境に 箕面高校の改革は校長の日野田先生を中心に進められたといえるが、そのやり方はトップダウンではなかった。多様な先生がいるなかで、意見対立や意欲喪失で改革が頓挫しないよう、日野田先生は次のようなことに努めていたという。①各先生のやりたいことを聴く まず注力したのは、やりたいことや困っていることを先生たちから聴き出すこと。批判を言いにきた先生にも「先生は何をしたいですか?」と問い返し、想いの把握に努めた。②先生たちの想いに沿った提案 着任後の3カ月で日野田先生は「どうすればみんなで意欲的に学校をより良くしていけるか」を何度もシミュレーション。何通りもの試案のなかから、「各先生の想いに沿った改革案」を示して賛同を得ていった。壁一面ホワイトボードの導入では、生徒に民主主義を学んでほしい先生たちの想いにも沿うことを示す、といったぐあいに。③有志の活動から規模拡大 いきなり全員に負担となる提案は原則行わない。校長として、やりたいことのある有志に対してプロジェクト立ち上げなどを支援。その活動や成果に関心をもった先生をさらに巻き込み、改革の波を大きくしていった。192018 MAY Vol.422

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