キャリアガイダンスVol.422
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 数少ない私立の高等専門学校として55年の歴史をもつ金沢工業高等専門学校(以下、金沢高専)は、創立以来で最も大きな改革を経て、この4月に「国際高等専門学校」(以下、国際高専)として生まれ変わった。校名を変えてまでの学校改革に乗り出した背景について、ルイス・バークスデール校長に伺った。 「今までの工業高等専門学校に求められていたのは、専門的な技術をもった即戦力となるエンジニアでした。近年は本校でも大学に進学する生徒が増えてきましたが、もともとは5年間でモノづくりの専門家に育成し、就職する生徒が多かったのです。 しかし、技術革新が進む現代では、モノづくりの分野はAIやロボットが担うようになってきています。工業系の人材に求められているのは、世の中の課題を見つけ、それを解決する新しい価値を創出することに変わってきました。人間の仕事が、『モノづくりからコトづくり』になってきたため、我々の教育もそれに対応しなければならないと考えたのです」(バークスデール校長) また、金沢高専では世の中のグローバル化を早くから察知し、国際化教育に力を入れてきた。きっかけは、バブル期から大勢の卒業生たちが海外勤務をしていたのだが、「派遣先で英語が話せず苦労した」という声が寄せられたり、海外出張や転勤のための就労ビザ取得の目的で、英語の卒業証明書を取りに来る卒業生が後を絶たなかったからだ。そこで、1991年には TESOL(Teaching English to Speakers of Other Languages)を取得した教員採用を始め、英語はもちろん、それ以外の授業でも外国人の教員が担当したり、生徒の海外留学も積極的に行い、グローバル教育を進めてきた。 「今まで本校では『グローバルエンジニア』を育成してきましたが、これからは『グローバルイノベーター』へと、学生の育成目標を転換させたことが学校改革の始まりでした」(バークスデール校長) 学生の育成目標を「グローバルイノベーター」にしたことで、同校では26ページの図1のようにさまざまな改革を行った。  本当の意味でイノベーションを起こすことができる力は、高専の5年教育でも十分ではないと考え、併設の金沢工業大学、および大学院での学びも含めた「9年間一貫教育」を打ち出した。国際高専を卒業した学生は、金沢工業大学の3年次に編入できる。さらに学び続けたい学生は大学院の修士課程まで研究を続けることで、産業界や地域と共創してプロジェクトに取り組むことができる(27ページ図2)。今までは卒業後の進路は就職がメインだったが、今後は大学や大学院まで進学できる力を付けられるよう、育成像とカリキュラムを変えるということだ。 また、金沢高専では、電気電子工学グローバルエンジニアからグローバルイノベーターへ取材・文/長島佳子1962年創立/国際理工学科/生徒数487人(男子442人・女子45人)/進路状況(2017年度実績)大学39人・就職61人、その他2人/教員数60人(うち外国人18人)[学校データ]技術者の役割はモノづくりからコトづくりへ。高専5年+大学・大学院4年まで見据え「グローバルイノベーター」の育成を目指す白山麓キャンパスには国際高専の校舎、学生寮のほか、金沢工業大学が地域や産業界と連携して研究する地方創生研究所がある。学生寮ではアメリカ人のラーニングメンターも共に生活し、夜間の課外学習で英語のサポートをするなど、英語での授業についていける体制を整備。理数科教科は英語で授業3学年は全員が海外に留学252018 MAY Vol.422

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