キャリアガイダンスVol.422
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「人の孤独を解消すること」を生涯のミッションに掲げ、活動しています。私が開発した遠隔操作型分身ロボット「OriHime(オリヒメ)」はその代表的な成果物の一つ。カメラ・マイク・スピーカーが搭載されており、スマホやPCなどからインターネットを介して操作して、会話したり、置かれた場所の様子を見たり、写真を撮ったりできます。つまり、このOriHimeを行きたいところに置いておくと、操作する人は家にいながらにしてあたかもその場にいるように会話ができ、その場にいる人たちもその人の存在を感じることができるんです。難病で寝たきりの患者さん、育児などで会社に行けない人、学校に通えない子どもなどに使用してもらっています。また、目の動きだけで文字を入力できる「デジタル透明文字盤」(OriHime eye)も開発。寝たきりで眼球しか動かせない患者さんが、他者とコミュニケーションを取ったり、絵を描いたりすることで、再び生きる希望を見出した人も少なくありません。 今でこそ、開発者、経営者として活動している私ですが、小学5年生から中学2年生までは不登校で、引きこもりでした。この期間は本当に苦しかった。家族に迷惑をかけるだけの自分に嫌気が差し、自信もなくなり、無気力になり、さらに精神的に追い込まれ、耐えられずに叫び出すこともありました。生きていくのがつらかった。 その状況から抜け出せたきっかけは、中1のときに母が申し込んでくれたロボットコンテストに出場したこと。結果は準優勝だったのですが、会場ですごいロボットを見かけて、私もこんなロボットを作ってみたいと思いました。その作者は地元の工業高校の先生だったので、彼に弟子入りするためにそれ以来学校に通い、猛勉強を開始。無事合格でき、そこから私のものづくり人生がスタートしました。高校時代にはその先生の下で車椅子の研究開発に没頭し、JSECで特別賞と最優秀賞の2冠を達成し、アメリカで開催される世界大会にも出場。そこでその後の私の人生の方向性を決定づける出来事が起こりました。出場者の外国人の生徒が「この研究は俺の人生そのもの。俺はこの研究をするために生まれてきて、死ぬ瞬間まで研究をするだろう」と言ったんです。その言葉を聞いたとき、まだ10代の高校生なのにそこまで自分の人生を決めているのかと大きな衝撃を受けました。と同時に、私は「車椅子の研究を一生の仕事とするのは違う」と思いました。同時に「じゃあ自分が本当にやりたいのは何なのだろう? 何のために生きているのだろう」という疑問が湧いてきました。それから自問自答を繰り返してたどり着いた人生の目標が、「人の孤独の解消」です。それまでは高校卒業後は町工場に就職して車やバイクを作る職人になろうと思っていたのですが、孤独の解消を目的とした福祉機器開発を志し、まずは人工知能を勉強しようと詫間電波工業高等専門学校に編入。さらに早稲田大学に編入してロボット開発を始めたのです。 高校生の皆さんには、まず人生に正解はないということを伝えたいですね。私は常々「決めつけと諦めが人を殺す」と思っているので、その逆である「あこがれとワクワク感」を大事にしてほしい。高校生だから無力で何もできないと思っている人も多いかもしれませんがそれは大間違いで、大人たちだって無力です。その証拠に、高校時代、あるお婆ちゃんが私にいろんな困り事を相談しにきたことがありました。高校生に助けを求めなきゃいけないほどの世の中だったら自分にも十分できることがあると確信したことも、この道に進んだ大きな理由の一つです。  人はいつ難病にかかるかわからないし、いつ死ぬかわかりません。だから高校生のうちから他人の言葉に流されずに自分が本当にしたいことは何なのかを考えて、それを見つけて、打ち込むのがいいと思います。そのためにはいろんな人と会って、意見を聞いてほしいですね。自分の中からだけではその答えは出ませんから。希望の道標取材・文/山下久猛撮影/竹田宗司1987年奈良県生まれ。小学5年生から中学2年生まで引きこもりを経験。奈良県立1987年奈良県生まれ。小学5年生から中学2年生まで引きこもりを経験。奈良県立王寺工業高等学校で電動車椅子の新機構の開発を行い、国内の科学技術フェア王寺工業高等学校で電動車椅子の新機構の開発を行い、国内の科学技術フェアJSECに出場し、文部科学大臣賞を受賞。その後世界最大の科学大会Intel ISEFにJSECに出場し、文部科学大臣賞を受賞。その後世界最大の科学大会Intel ISEFにてGrand Award 3rdを受賞。高校卒業後、詫間電波工業高等専門学校に編入し人てGrand Award 3rdを受賞。高校卒業後、詫間電波工業高等専門学校に編入し人工知能の研究を行う。その後、早稲田大学創造理工学部で孤独の解消を目的とした工知能の研究を行う。その後、早稲田大学創造理工学部で孤独の解消を目的とした分身ロボットの研究開発に取り組む。2011年、分身ロボットOriHime完成。2012年、分身ロボットの研究開発に取り組む。2011年、分身ロボットOriHime完成。2012年、株式会社オリィ研究所を設立、代表に就任。2018年、デジタルハリウッド大学大学院株式会社オリィ研究所を設立、代表に就任。2018年、デジタルハリウッド大学大学院の特任教授に就任。著書に『「孤独」は消せる。』(サンマーク出版)がある。の特任教授に就任。著書に『「孤独」は消せる。』(サンマーク出版)がある。よしふじ・けんたろうよしふじ・けんたろう●オリィ研究所 http://orylab.com/●オリィ研究所 http://orylab.com/他人の言葉に流されず自分の人生を生きてほしい。ロボットコミュニケーター/吉藤健太朗32018 MAY Vol.422

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