キャリアガイダンスVol.422
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まとめ/堀水潤一 撮影/内田琢麻1936年駒込中学校開校。47年学制改革に伴い新制の駒込中学校、駒込高校に改組。高校に、国際教養コース、理系先進コース、特Sコース、Sコースを設置。2016年度から入学生全員にタブレット端末を配布。オーストラリア・ニュージーランド留学、ハワイセミナー短期語学研修、マルタ島語学研修など留学制度も充実。駒込中学・高校(東京・私立)かわい・たかよし1945年生まれ。明治大学大学院修士課程修了。学生時代、大学改革や有機化学の研究に没頭し、社会矛盾や環境問題に疑問を呈する一方、離島で子どもたちと暮らすような生活への憧れも。「研究者より教育者に向いている」という指導者の勧めもあって教職を志望。71年、駒込中学・高校に理科教諭として赴任する。同校は戦前、自由な気風の進学校として知られたが、戦後の焼け跡のなかで庶民教育に舵を切った仏教系の伝統校。時代の要請に応え、一時休校となっていた中学校を92年に再開し、現理事長の下、進学校としての再生を目指す学校改革の中心的役割を担う。中学教頭、高校教頭を経て、2006年に校長に就任してからは改革に一層注力。志願者数を大幅に伸ばし都内有数の人気校に。学校法人駒込学園理事。東京私立中学高等学校協会の各種委員長を歴任。 人工知能が人類智を超えるシンギュラリティの時代を控え、ロボットに職が奪われるといったことに不安や脅威を感じる人は少なくないでしょう。しかし、進化するのはロボットだけではありません。AIの能力のウェアラブル化(身体さらにはナノ化による脳内神経細胞への装填)によって、人間の能力も限りなく拡張(オーグメンテーション)していくはずです。そうした時代に必要なのは、ロボットに使われるのではなく、ロボットを使いこなす能力。そして、自分自身の人生の物語を自由に描く力です。 2016年度に「国際教養コース」、翌17年度に「理系先進コース」を設置したのも、そうした未来の社会に対応する人材を育むため。国際教養コースでは、国際バカロレア的要素を備えたカリキュラムにより、論理的思考力やプレゼンテーション能力を育みます。オールイングリッシュで各教科を学習するイマージョン授業の一環として、フランス語を英語で学ぶ講座も設置。理系先進コースでは、科学・技術・工学・数学を統合したSTEM教育をいち早く導入し、埼玉大学と連携した特別講座を展開しています。 改革にはスピードが求められるため、トップダウンで始まる取り組みも多いですが、動き始めてからは現場に一任。意欲や能力のある先生方がプロジェクト単位で検討委員会を組織し、教務運営研究会等で周知を図るなど、連携がスムーズに行われていることに頼もしさを感じます。 学校とはどういう存在であるべきか。本校はこれまで、さまざまな形でメッセージを発信してきました。東京都が私立高校の就学支援制度を始めるずっと前から、一定収入未満世帯の授業料無償化を打ち出したのもその一つ。 不登校気味の生徒には、保健室登校ならぬ校長室への登校を促し、「友達がいなければ書物の中に求めよう。赤毛のアンやソクラテスを友人にすれば世界を切り抜けられる」と語りました。教室に入れないのはバリアを感じているからで、人間嫌いなのではありません。実際、中学の3年間を校長室で過ごしたある生徒は、高校から教室に戻り、生徒会役員として活躍しました。 保護者にも本音で対応します。「前の担任の方が良かった」と若い先生に文句を言う親御さんに、「世界を敵にしても我が子を守りたい気持ちはよくわかりますし、それは貫いてほしい。けれど、大学出たての教員が子育てのベテランと立ち向かうのは難しいこと。対立ではなく目線を一緒にするところから始めましょう」と言い、担任との関係が改善したこともありました。 21世紀型の教育を推し進めてはいますが、創立以来の主軸は仏教精神に基づく人間教育です。そのため今も、夜間30キロの回かいほうぎょう峰行を含む比叡山研修を実施しています。「一隅を照らす」という建学の精神の下、自らを灯明として、周囲を照らす人間を育てることに変わりはありません。ロボットに使われることなく、人生の物語を自由に描く力を付けるために生徒や保護者とも本音で対峙人間教育を軸に21世紀型教育を展開来るべき人工知能時代を脅威ではなく能力拡張の機会と捉え待ったなしの学校改革を推し進める河合孝允駒込中学・高校 校長472018 MAY Vol.422

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