キャリアガイダンスVol.422
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パワーポイントを使ったプレゼンテーションの形式で、1年間の学びの成果を発表した。また、3学年は12月に「卒フェス」と題したイベントを開催。前半は各個人の卒業研究成果に関するポスターセッション、後半は全員の卒業研究内容に基づく議論から後輩へのメッセージを導き出すというシンポジウムを行った。これら発表会は、司会を含めて生徒主体で運営している。 発表会に参加した地域の人からは、「インターネットで調査するだけでなく実際に地域に出てヒアリングやアンケート調査を実施して提言や実践に結びつけていることは大いに評価できる」「どの発表も動機・仮設・検証・まとめの流れが確立しておりすばらしい」といった賞賛の声が寄せられた。 このように手ごたえが感じられる探究学習だが、同校が目指す「探究する人」とは、高校卒業後も自ら課題を見つけ改善するPDCAを回していく人のことだ。それには「C(評価)」の育成がカギだと考え、さまざまな場面で生徒のメタ認知につながる多様な評価方法を採用。学びを効果的に生徒のなかに落とし込むとともに、評価スキルの育成を図っている。 例えば、「閑谷學」をはじめとする幅広い教科学習でルーブリックを活用。目標を可視化し、その達成状況を自ら確認できるようにしている。 また、他人との比較ではなく自分の変化をとらえる視点を内在化させるため、5年前から一枚ポートフォリオ評価を導入。「閑谷學」でも活動による各自の変化を客観視させている。 さらに、一部の学年では、「MSC(Most Significant Change)評価」(※1)の手法を活用。1年間の「閑谷學」の振り返りとして、自分に起こった最も重大な変化は何か、それはなぜ起こったのかという問いに取り組んだ。17年度は授業評価においてもMSC評価を導入し、評価委員会には生徒の代表も参加した。 実は、入学時点では自己肯定感が低く、人前で話すことに苦手意識の強い生徒が多いという。そんな彼らが、高校生活を終えるころには自信をもって自分の探究成果を語る。 「校内外において責任感をもって多様な経験をすることで、町の活性化や学校の改善に貢献している感覚を得たり、誰かから直接感謝されたりして自信を付け、意識や行動が変わってきました。彼らは、力がないのではなく、力を発揮する機会に恵まれてこなかっただけなのです」(内田先生) 生徒の言動の具体的な変化を、教員は口々に語る。 「社会のことも、他人事ではなく、自分事として考えられるようになってきたと感じます」(藤澤先生) 「町や学校に対して、何かをしてもらうという受け身なスタンスがなくなり、『自分から動くことが大事』と、生徒の口から聞かれるようになったのは大きな成長です」(大野先生) 昨年度、同校に着任した教頭・上野修嗣先生の口癖は、「生徒たち、すごい」だ。「自らどんどん動く生徒たちのエネルギーに圧倒されます。学校の規模と生徒たちの活力は、必ずしも比例しないのだと実感しました」 その影響は地域にも広がっている。同校生徒の地域における活躍を目にしてきた地元中学生が、「自分たちも頑張りたい」と言って入学するように。同校が地域住民と高校生が町の未来を語り合う「多様な主体による協働会議」を開催すると、地域から多くの参加者が集まる。 「地域の方々は、自分たちが関わることで高校生が活動的になり、それが町を良くするということに手ごたえを感じてくPDCA推進のカギとなるメタ認知能力を鍛える自己肯定感の低かった生徒も主体性や行動力を発揮地域の協力があっての学び思い通りにいかないからこそ、楽しい「閑谷學」の卒業研究では、介護ロボットに関するテーマに取り組みました。調査にあたって近所の高齢者施設が快く協力してくださり、こうやって地域の協力があるからこそ貴重な学びができるんだと実感しています。最初は「高齢者を支える介護ロボット」が必要と考えていたのですが、探究を進めるうち、介護には人間の関わりが何より大切だと気づきました。人間の関わりを充実させるためには「介護現場の負担を減らすロボット」が必要だと思うので、将来はそれを世の中に広めていく仕事をしたいと考えています。(祇園くん)高校時代から商業科目の授業が好きで、大学では経営学を学んでいます。高校の卒業研究のテーマも経営学に関連したもので、経営者の立場から、雇用するなら人とAIのどちらがよいか。それぞれメリット、デメリットがあるのでどちらがよいとは言い切れず、「僕ならどちらも雇う」という結論を出しました。「閑谷學」の活動では、思い通りにいかないことがたくさんあります。だからこそ、面白かった。「こうなるんだ!」と気づくことは、本当に楽しいです。(松井くん)和気閑谷高校卒業生祇園大輝くん(就実大学1年/写真右)・松井竜輝くん(岡山商科大学1年/同左)閑谷學・LHR委員会(取材時)内田賢治先生主幹教諭大野浩志先生教頭上野修嗣先生校長香山真一先生閑谷學・LHR委員会藤澤 晃先生閑谷學・LHR委員会(支援職員)中村哲也先生ださっているのではないでしょうか。人口減少は免れなくても、高校生がそこで暮らす大人たちと目を輝かせて共に町づくりを語っている…そんな未来に向けて少しずつ進んでいるように感じます」(大野先生) 教員もまた、生徒のエネルギーに後押しされ、地域との連携、外部人材の活用、授業改善、評価手法の検討など、次々と新しいことに取り組んできたという。 「最初から順風満帆だったわけではありません。しかし、動き始めると、まず生徒たちが生き生きしてきました。そして、その姿に教員たちが励まされ、挑戦を続けてくることができたのです」(香山校長) 地域に根づく学校として歴史を刻み続け、2年後には創立350年を迎える同校。「もっと生徒を伸ばすことはできる」とさらなる進化を図っていくという。※1 MSC評価:事前の指標を用いず、現場から「重大な変化」を集めて行う評価方法。512018 MAY Vol.422

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