キャリアガイダンスVol.422
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「顕微鏡を置くのはどんな場所でしょう?」教壇の高校2年生が問いかけると安心院小学校の6年生が元気に手を挙げる。「太陽の光の当たらないところ!」「そうそう。なんでかわかるかな…?」。顕微鏡の使い方を一通り確認すると4班に分かれての観察が始まった。お互いに異年齢との交流は慣れた様子で、小学生に優しく対応する高校生の姿が頼もしい。 高校生にとっては教科で学んだことをアウトプットすることで深め、班で協働して観察素材や授業の構成を考えることで課題解決力を、小学生の学習をサポートしながらコミュニケーション力を伸ばすことが企図されている。これは、安心院高校の「ゲストティーチャー活動」の一つ。同校食文化コースの生徒はパン作り、園芸マネジメントコースの生徒は収穫体験など、それぞれの学びを生かした活動が行われている。 授業が終わると小学校の担任から「ルーブリックを確認して、ふりかえりをしましょう」と声がかかった。高校生も同様にふりかえりを記入する。ここ、安心院・院内地区では小中高12年間でつけたい力を明確にした一貫教育が行われており、「ルーブリック」や「ふりかえり」は、教員にも児童生徒にも日常の学習活動として定着している。 小学校7校、中学校2校、高校1校の一貫教育の中心は2016年度から本格スタートした独自科目「地球未来科」だ。12年間を4ステージに分け発達段階に応じて①国際的視野で地域を捉える(関わる)力②地域の課題を国際的視野で解決する(工夫する)力③英語をツールとしたコミュニケーション能力を育むことを目指している(図1)。 教材となるのは地域特有の文化、歴史、自然、そして人。学年が上がるにつれ、町から市、県内外へと視野を広げていく。高校では地域の魅力を外国人留学生に伝えるツアーや、地域課題を探究し英語でプレゼンする活動を行う。ローカル・グローバル双方の視点をもち、地球社会の一員として主体的に課題を解決する資質・能力をもって社会に巣立ってほしいからだ。 活動はポートフォリオとして蓄積され、ルーブリックと共に評価に活用される。高校入試では中学での学びを1枚にまとめることが課され、高校3年次には12年間のサマリーポートフォリオをもって修了認定するなど、学びの連続性が意識されている。 実は、安心院・院内地域の一貫教育は2000年から始まっている。研究開発学校に指定され大分県初の連携型中高一貫校となった後、断続的に4回の指定を受けて小中高一貫教育を開始したのが2010年。背景にあったのは独自性のある教育で学校を存続させたいという地域住民の意志だ。そもそも安心院高校自体が、高校進学に大きな経済的負担を伴っていた戦後すぐの時代に「地域の子どもは地域で育てる」を旗印にした運動によって開校したという歴史がある。 全戸署名など地域の後押しを得て開始した一貫教育も、順風満帆だったわけではない。中高での英語・数学の乗り入れ授業や連携型入試、毎月の全校連絡会議は続いてきたが、教小中高10校の一貫教育背景には地域住民の熱い願い2000年から地元中学との中高一貫教育を導入し、10年からは小中高一貫教育体制を確立。この間、研究指定校として断続的に6回の指定を受けている安心院・院内地域10校のダイナミックな取り組みを紹介します。地域の願いをうけて「地球未来科」でつながる小中高一貫教育取材・文/江森真矢子安あじむ心院高校(大分・県立)第16回昨年度スタートしたゲストティーチャー活動は、教科とも連携している。この日の活動は、細胞の観察。光学顕微鏡の使い方をどう教えるか、何を観察するかは高校生が班ごとに企画した。小学生の時から思考ツールの活用やふりかえりを習慣化し、活動の記録はポートフォリオとして上級学校に引き継がれる。522018 MAY Vol.422

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