キャリアガイダンスVol.422
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■ 瀬谷西高校(神奈川・県立)授業だ。それまでに基本的人権や憲法のことを学んできた生徒たちに対して、黒崎先生はこんなお題を用意した。 原告は高校生アイドルKUROSAKI。ある雑誌が次号で自分の家の写真を、次々号で新曲の酷評を載せると知って、記事にするのを止めてくれ、と訴えた。 被告は瀬谷西出版。どちらもファンの要望に応えるための記事だ、と反論した。 さて、この問題をどうすればいいか。 弁護士役の各班は、自分たちが弁護する原告や被告のために、どんな法的根拠をもとに何を主張すればいいか考えた。裁判官役の各班は、この訴訟をどんな法的根拠をもとにジャッジするかを考えた。 授業には地元の弁護士も講師として参加。黒崎先生と共に各班の机を回り、生徒たちの議論を深める手助けをした。 「記事を制限されるのっていいんだっけ」 「なんかあった、なんかあった」 「表現の自由!」 「でも読みたい人だっているよね」 「あれだ。知る権利ってどんなのだっけ」 「ここにも法的根拠を加えられない?」 「記事にされるとこんなことが起きて、プライバシーの侵害になるから、ということを考えればいいのかな」 机をコの字に並べ変えて始まった裁判。原告側・被告側の各班が主張し、お互いに再反論もして、いよいよ判決へ。裁判官の班が、これまでの主張に対して、どんな法的根拠をもとにどういう結論を下すかを、全員が固唾を呑んで見守った。 逆のパターンから授業を組み立てることもある。「実社会にある課題を皆で考えることを通して、知識を習得する」構成だ。 例えば、実社会で遭遇しうるトラブルのロールプレイ。飲食店のアルバイトで、人手不足だからと高校生なのに無理やり深夜まで働かせたら。お皿を割ったからと給料を下げられたら。生徒たちは班ごとに、労働基準法の要点がまとめられたプリントを参考に、どう主張すれば泣き寝入りせずに店長を改心させられるか議論。そのやり取りを寸劇にして、アルバイト役と店長役に分かれて演じた。 そのうえで、次の授業で労働者の権利や労働問題を改めて学ぶ、という流れだ。 授業に取り組むそのプロセスのなかで、生徒に会得してもらおうとしているものもある。物事について思考・判断・表現するときに有効な型や手法だ。 「現代社会」の授業では、学習内容に関連する新聞記事もよく取り上げるのだが、その際に黒崎先生は、記事の見方・読み方から指南している。新聞を読んだことがない生徒も多いので、見出しとリードを読めば大まかな内容をつかめるという基本から入り、事実と意見を区別して読み取ることが大事である、ということまで。 また、グループワークや討論をするときは、ワークシートもうまく使って、「アイデアを出し合うときは他人の思いつきを批判しない」「意見を言うときはその主張に対する根拠も添える」などといった、話し合いのコツも伝えている。 「公的なことから私的なことまで、課題に取り組むときの思考力や判断力、表現力を育みたいんです。ただ、それを公民科の授業だけでやっていても効果は限定されると思っています。こうしたことは、各教科の授業をはじめ、どの教育活動でも目指せることのはず。ですので、今は教科横断的なカリキュラムで行うための仕組みづくりを進めています」アルバイトのトラブルによる寸劇では、店長役がバイト役に強気に出たり、懐柔策を用いたりと、いろいろなストーリー展開が。法律のからむシナリオづくりを生徒たちが楽しんでいた。模擬裁判。裁判官役の生徒たちが判決とその理由を述べたあとで、講師の弁護士がポイントを解説。生徒たちは自分たちの考えたことと照らし合わせながら興味津々で聴いていた。情報の読み取り方や話し合いの作法も学ぶ普通科/1978年創立生徒数(2018年度) 1058人(男子505人・女子553人)進路状況(2017年度実績)大学111人・短大31人・専門学校/各種学校141人就職18人・その他40人〒246-0004 横浜市瀬谷区中屋敷2-2-5 045-302-3535 http://www.seyanishi-h.pen-kanagawa.ed.jp/■ 模擬投票までの事前学習生徒が模擬政党を作り、学んできたことをもとに政治や経済の課題についてスローガンを掲げ、党首討論を行う。政治や選挙の仕組み、消費税や社会保障の問題、財政赤字の問題、憲法改正の問題など、現代社会の基本的な知識や概念を、教科書を通して学ぶ。1.基礎の学習2.模擬党首討論会3.実際の政党の比較4.模擬投票模擬党首討論の体験を踏まえて、選挙前に配布される選挙公報や新聞記事を使い、実際にある政党の主張を比較する。本物に近い環境で投票・開票。事後学習として実際の結果と比較する。校訓は「夢と希望の実現」。キャリア・シチズンシップ教育を軸にした教育で、規範意識や道徳性、社会性を持ち備え、真摯に努力する力」「自らが課題を発見し、課題を解決できる力」を育み、生徒の社会的自立を目指す。2016年度より新科目「公共」の教育課程開発校に。各教科の授業と総合学習を連携させたカリキュラムの構築や、全教員で一つの授業を参観し、授業中の生徒の学びを見とる授業研究会に取り組む。572018 MAY Vol.422

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