キャリアガイダンスVol.423
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と思い続けることが大事です。そうすると、できていないことに対して、あたりまえですが、「できていない」と認識することができる。そこからが、またスタートです。 高大接続改革について言えば、単なる入試改革ではなく、高校教育改革や大学教育改革を含む、一体的な教育改革として始まりました。高大接続システム改革会議の第1回目に、私は次のような発言をしました。「高校を卒業したら、生徒と高校との関係は切れるかもしれません。大学を卒業したら、大学と学生との関係も切れるかもしれません。しかし、彼らはそのままずっとこの社会で生きていくわけでありますし、その際に必要な力を、高校教育、大学教育で連続してつけていかなければならないはずです」 この思いは今でも変わりません。これからの社会を生きていくために、必要な力とは何かを考え、学校教育の責任として育んでいく。幼・小・中・高・大での学びを重ねて、社会へつないでいく。 改革の根底にある、こうした理念を忘れずに、できるところから取り組んでいく。それがだいじだと思っています。 そうした材料が大学入学者選抜に活用されるのも大いにけっこう。ポートフォリオの中から、生徒自身が必要な部分を抽出し、「活動報告書」などの形で表現し、大学に提出することで評価の対象になる。ややもすれば、担任の文章力に左右される推薦書ではなく、生徒自身の言葉が届くのなら、大学にとっては、入学後の指導への活用も含めて、重要な資料になるはずです。志望理由書を書かせてきっちりと見ているような大学は、既にその意義について、知っていると言えます。 先ほども述べたとおり、せっかく対話の大事な材料となるポートフォリオなどのツールも、教員に読み取る力がなければ、「ああ、そうですか」で終わってしまいます。「英検2級」と書いてあるのを見て、「すごいね」で済ますのではなく、「なぜ取ろうと思ったのか?」「そこまでに、どういう苦労や努力があったのか」などと教員が問いかけを重ねていくことで、生徒自身の自己理解を深めていくことになるでしょう。あるいは、生徒自身が気付いていないことを気付かせ、視野を広げるような指導にもつながるはずです。 冒頭、「生徒主体」という話をしましたが、それは、個々の存在に対して敬意をもって接するということでもあります。ポートフォリオに記録されていることについて、しっかり受け止め、教員自身の言葉や生徒とのやりとりを記録として残し、次回、「前はこんな事を言っていたよね。今はどう考えているの?」と問いかけ、生徒の成長にどうつなげていくかを考える。本来、評価とはそういうもの。だからとても時間がかかるのです。 「そこまでする余裕がない」という先生方の状況を知らない訳ではありません。ただ、評価以上に優先する仕事はないと私は思っています。成長を促すための過程の評価は教員の本務ですから。 もちろん、そのための時間の確保や教員の資質向上のための研修といった課題は、現場レベルだけではなく、国も自治体も、そのための条件整備を真剣に考えないといけません。 評価のあり方もそうですが、取り組みが一気に変わることは難しいかもしれません。けれど、理念を忘れない限り、少しずつ変わっていくとも思うのです。簡単に変わらないとしても、「こう変えていこう。変えていきたい」一人ひとりの生徒に対し、敬意を払うということすぐには変えられなくても、変えようと思うことが大事評価とは時間がかかるもの読み取る力がなくては意味がない学習者中心の評価とポートフォリオの役割荒瀬克己(大谷大学 教授)112018 JUL. Vol.423

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